敗血症?
2019.12.22
○月○日 敗血症?


 なおも検査は続いていた。
 明確な診断がまだつかないではいたが、いろいろなことが判明しつつあった。
 肝臓機能の低下、血小板などの減少とか……。
 やがて、疑わしき病名が浮かんできたらしかった。

 敗血症、(SIRS・全身性炎症反応症候群)。
 (症候==悪寒、全身の炎症を反映して著しい発熱、倦怠感、認識力の低下、血圧低下
が出現する。進行すれば錯乱などの意識障害をきたす。DICを合併すると血栓が生じるた
めに多臓器が障害(多臓器不全)され、また血小板が消費されて出血傾向となる。起炎菌が
大腸菌などのグラム陰性菌であると、菌の産生した内毒素(エンドトキシン)によってエ
ンドトキシンショックが引き起こされる。また代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシ
スの混合性酸塩基平衡異常をきたす。ショック症状を起こすと患者の25%は死亡する。)

 細菌によって多臓器不全を引き起こしているのではないか、腸閉塞もその症状の一つで
はないかということだった。
 なおも病名は確定せず、疑わしき状態ということだったが、ともかく細菌感染は確から
しいということで、抗生物質を投与しましょうということになった。
 治療方針を敗血症として、治療が開始された。
 抗生物質投与には患者の承諾書が必要で書類も作成した。
 栄養点滴に加えて、抗生物質の輸液が追加された。

 確認のために、太腿の付け根にある総腸骨動脈から血液を採取してみるということだっ
た。
 総腸骨動脈?
 太い動脈血管からの採血は、看護師の資格ではできないので、主治医が直接採血するこ
とになる。
 血液採取は通常、腕の肘裏の静脈からだが、動脈からはほとんどやらない。
 手順はこうだ。
 脚の付け根を丁寧に消毒し、骨盤の淵あたりから出ている総腸骨動脈に注射針をプス
リ!
 採取して針を抜いたら、針跡をガーゼで押さえて止血する。
 しかし太い動脈はそう簡単には止血できない。
 強く強く、ひたすら強く押さえ続ける。
 ちょっと緩めてガーゼを外してみるが、
「まだ、だめね」
 ということで、再び押さえ続ける。
 何とか血が止まって、動脈採血は終了。
 感覚的に十分くらい経っただろうか。
 やっと血が止まって採血作業が終了した。
 主治医さん、ご苦労様でした。

 生きていれば生理現象がある。
 消化器系の病気なので、出したものはすべてチェックする。
 お小水は、糖尿や蛋白尿かどうかを調べるのに必要だ。
 採尿はトイレに常設された、名前の記入された容器に毎回入れておく。
 さすがに大の方は取り置きしないが、何回したかとかのチェックシートに記入。

 ああ!悲しや絶飲食。

 数日おきの超音波診断を経て、再度の食事摂取が認められた。
 当然最初は、重湯とよばれる十倍粥から。
 久しぶりに口から入れる食べ物。
 消化の良いおかずもついた。ほぐした魚と豆腐の味噌汁。
 再び三分粥、五分粥、八分粥、そして一般食まで進んだ。
 抗生物質の効果はてき面だったということだ。

 ここまでの治療は、根本的治療ではなくて対症療法でしかなかった。
 正確な病名が確定しなかったからだ。
 敗血症というのも、あくまで推測の域でしかなかった。
 病名が確定しなければ、本格的な治療はできない。
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