銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第五章 ターラント基地攻略戦 Ⅶ
2019.12.22

 機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦


                 Ⅶ

 湿地帯の中を突き進むオーガス曹長の班。
 足を取られながらも前進を続けていた。
「ようし、ここらでいいだろう。上陸するぞ」
 向きを変えて、湿地帯から上がろうとするオーガス班。
 およそ三分の一ほどが上陸した時だった。
 森林の奥からミサイルが飛んできて、一機に命中した。
 ペイント弾が破裂して、機体を真っ青に染め上げる。
『ガラン上級上等兵、命中です。行動不能に陥りました。隊より離脱して帰還してくだ
さい』
 通信機から指示が入った。
 戦闘シュミレーションによって、攻撃を受けた場合の損傷状態が計算され、戦闘不能
と判断されて帰還命令が出されたのである。
「りょ、了解。帰還します」
 隊を離脱して帰還の途につくガラン上級上等兵。
 奇襲攻撃にたじろぐ兵士たち。
「な、なんだ? どうしたんだ」
 オーガス曹長も例外ではなかった。
「奇襲です。森の奥から攻撃を受けています」
「森の奥からだと?」
 攻撃は続いていた。
 次々と撃破されて離脱する機体が続出していた。
「一時後退だ。湿地帯へ戻れ」
 湿地帯へと避難するオーガス班の機体。
 だが、違う方角からの攻撃が加わった。
「後方よりミサイル多数接近!」
「ミサイル?」
「対岸より発射されたもよう」
「対岸というと、サブリナ中尉か!」
「挟み撃ちです」
 進むもならず、退くもならず。
 進退窮まって全滅の道を急転直下のごとくに陥るオーガス班だった。

 全滅だった。

「こんなのありか……? 二班から同時攻撃を受けるなんて」
「おそらく共同戦線を張られたのかと思いますが」
「共同戦線だと?」
「はい。作戦概要の禁止条項を確認しましたところ、ルール違反にはならないようで
す」
「サブリナ中尉の策略か」
「そのようですね」
 通信機が鳴った。
『オーガス曹長の班は、総員帰還せよ』
 ミネルバからの連絡は、冷徹な響きとなってオーガスの耳に届いた。
「了解。帰還する」
 ペイントまみれの機体が続々と帰還をはじめた。

「オーガス班、全滅です。総員、帰還の途に着きました」
「ふふん。天狗になっているから、こういうことになるのさ」
「これから、どうしますか?」
「共同戦線はここまでだからな。この勢いに乗ってハイネの班へ殴り込みをかけたいと
ころだ」
「C班ですね」
「まあ、ハイネは個人としての戦闘能力はずば抜けて高いが、所詮はただの下士官だ。
作戦を立て、隊を指揮するなどという頭脳プレーは経験がない。ちょっとかき回してや
れば、隊は混乱に陥り、士気は乱れて自滅する」
「サブリナ中尉の指揮下にあってこそのものということですね」
「その通りだ。ハイネ上級曹長、恐れるに足りずだ」
 数時間後、ナイジェル中尉率いるB班と、ハイネ上級曹長率いるC班が、戦闘の火蓋
を切った。
 ナイジェル中尉の予想通り、ハイネ上級曹長率いるC班は、緒戦こそ善戦したが、ナ
イジェルが放った陽動作戦に見事に引っかかって、善戦むなしく敗退した。
 奮戦むなしく帰還するC班を見送るナイジェル中尉。
「ようし続いて、残るD班との決戦だ。その前に補給だ。しっかり燃料弾薬を積み込ん
でおけ」
 負け組みが帰還した後に残された陣地は、勝ち組が自由に使っていいことになってい
た。

11
コメント一覧
コメント投稿

名前

URL

メッセージ

- CafeLog -