あっと!ヴィーナス!!第四章 part-3
2019.12.18

あっと! ヴィーナス!!


第四章 part-3

 さて音楽と言えば、リコーダーと歌。
 リコーダーはまあいいとして、問題は歌だよね。
 自分の声を出さなければならないから恥ずかしいな。
 自分自身の声というものは、人の耳にどのように聞こえているか、自分では理解できる
ものではない。
 例えばテープレコーダーなどに録音した自分の声を聞いて、『この声、ほんとに自
分?』と、感じたことのある人は多いだろう。しかし他人がその録音を聞けば、間違いな
くその人の声だと言う。
 みんなは可愛い声だという。
 でも自分じゃ判らないんだよね。
 MDプレーヤーがあるから、今度録音して聞いてみようっと。

 ぞろぞろと女の子が連れ立って音楽室へ移動する。
 女の子というものは、何事にも仲良しグループで行動することが多い。
 そのメンバーは、双葉愛、西条明美、新川美奈、そして弘美の四人。
 これがヴィーナスの選んだ仲良しグループというところだろう。
 他愛のない話をしながら廊下を歩いて音楽室へ。

 でもって現われた音楽教師がこれまたヴィーナスだった。
 いい加減にしろよ。
 と言いたくなった。
 しかしながらもピアノ伴奏する腕前は、本物だった。
 意外だな……。
(神に不可能はないの)
 意識を操作してそう思わせてるだけじゃないか?
(ピアノは女神の必修科目なの)
 嘘付くなよ。幼稚園か小学校の教諭じゃあるまいし。
(いい加減にしなさいよ)
 はん!
「それでは相川弘美さん。歌っていただきましょうか」
 え?
「弘美がんばってね」
「弘美の素敵な声を聴かせてね」
 ちきしょう……横暴女神め。
 とはいえ、今は音楽の授業時間だ。個人として歌わせるのは教師の授業采配の一つだ。
歌わなければ授業成績に響くというものだ。
 ピアノ伴奏がはじまる。
「♪♪なじーかはしーらねーど……♪♪」
 みんな静かに歌を聴いている。
 うーん。自分の歌声がどんなものか……聴いてみたい気分。
 歌い終わったと同時に拍手喝采だった。
 あ、どもども。
 ちがーう。
「弘美さん。素敵な歌声をありがとう」
 へい、へい。
「それじゃあ、次は……」

 音楽の授業が終わった。
 ホームルームへ戻りながら愛ちゃん達がさっきの歌について誉めてくれた。
「弘美、相変わらず奇麗な声だったわよ」
「そうそう、ほんとうらやましいわ」
「顔も可愛いけど、声も可愛いのよね」
 そ、そうか……。
 て、てれちゃうなあ。
「そんなことないよ。愛ちゃんも可愛い声してたし……」
 そんなこんな話をしながら、廊下を歩いて行く。
 女の子同士、他愛のない話。
 それにしても女の子はどうしてグループを組みたがるのだろうかと思いながら……。


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