銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅷ
2021.01.30
第十章 反乱
Ⅷ
ヘルハウンド艦橋。
「集中して機関部を狙え! 動きを止めるのだ! 撃沈してはならない」
アレックスが、次々と指令を出している。
「隊長機以外は相手にするな!」
同じ共和国同盟軍であり、元はアレックスの子飼いともいうべき部下だった者たちだ。
極力被害の少なくなるように、撃沈させずに行動力だけを削ぎ落す戦法を繰り広げていた。
たとえ戦艦が何万隻あろうとも、指揮統制が乱れていては、その戦力を十分に発揮できない。
隊長機だけを狙い撃ちにして、艦隊の混乱を誘い出す戦法である。
ちょこまかと動き回る小隊を、撃ち落とすのは困難だった。
下手に迎撃しようとすると、同士討ちになってしまう。
元祖伝家の宝刀ランドール戦法の真骨頂であった。
なすがままのウィンディーネ艦隊であった。
ウィンディーネ艦内では、あちらこちらで火災が発生していた。
その原因は、各ブロック隔壁扉の閉め忘れだった。戦闘中の基本の基本が守られていなかった。
戦えば連戦連勝で気が緩んでいたとしか言えない。
日頃の防火訓練などが疎かになっていたのだ。
一カ所で火の手が上がったのが、次々と別の区画へと飛び火し、連鎖的に火災が広がったのである。
「だめです! 消火が間に合いません!」
そしてついに、火薬庫に燃え移った。
激しく爆発を繰り返すウィンディーネ。
苦々しく発令するゴードン。
「総員退艦せよ!」
もはや、ウィンディーネを救う手立てはなかった。
次々と退艦する乗員達。
その姿を艦橋から見つめるゴードン。
「乗員の退艦はほぼ終了しました。閣下も退艦してください」
シェリー・バウマン大尉が進言するが、
「いや、俺はここにいるよ」
と退艦拒否の姿勢を見せる。
「何をおっしゃいますか! 閣下がいなければ、これまで従ってきた将兵達はどうなると思いますか?」
反乱を起こした将兵には、当然審問委員会に掛けられることとなる。
「責任を放棄なさるとおっしゃるのですか? 閣下には生き残って、その責任をとる義務があります」
「責任と義務か……」
「ランドール提督は聡明なお方です。どんな理由であれ、部下を見放したりはしないでしょう。ここは退艦して、捲土重来をおはかりください」
「捲土重来か……」
「どうしても残られるとおっしゃるなら、私もご一緒します」
「何を言うのか。君が責任を取る必要はない」
「いいえ!」
キッと睨め付けるようにゴードンを凝視するシェリーだった。
このまま梃子でも動かぬだろうと、困ったゴードンの方が折れた。
「分かったよ。退艦しよう」
「では、こちらに。艀を用意してあります」
シェリーの説得により、ゴードンも退艦して、無人となったウィンディーネ。
ついにその最期を迎えることとなった。
悲鳴を上げるように爆発炎上する。
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