銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅴ
2021.01.09

第十章 反乱





 共和国同盟から独立宣言をしたアルサフリエニ共和国は、鉱物資源豊富なカルバキア共和国、重金属工業都市国家惑星トバ、そして防衛軍事基地のカラカスを拠点とする連合共和国である。
*参照 第二部 第五章 アルサフリエニ

 カラカス基地に軍令部総本部を置いたゴードン・オニール。
「こんな事になるなら、軌道衛星砲を外すべきじゃなかったな」
 司令室の窓から上空を見つめながら呟くゴードン。
「あの時は、カラカスは放棄する予定でもありましたからね」
 副官のシェリー・バウマン大尉が応える。
「タルシエン要塞のガデラ・カインズ准将から何度も会見の要請が出ております」
「会っても無駄だろう。見解の相違は変わるものでない」
 その表情は、かつて『皆殺しのウィンディーネ』と呼ばれ、バーナード星系連邦艦隊を追撃し、降伏すらも認めず皆殺しにしたあの頃の目をしていた。
 征服為政者に対するゴードンの思想は冷酷にして無情だった。
「タルシエン要塞より、銀河帝国政見放送の再放送が流されています」
「今更だな」
 ぶっきらぼうに答えるゴードン。
「一応視聴するだけも」
「勝手にするさ」
 アレクサンダー皇太子こと、アレックスの政権放送。
 やがて核心的な部分となった。
『共和国同盟は元の政体に戻すこととする。相当の準備期間を設けて、評議会議員選挙を執り行う。概ね2年程になると思われるが、その間は軍が暫定政権を敷くこととする』
 その場に居た参謀たちは、一様に耳を疑った。
「前回聴いたのと違っていますよ。確か以前は、
『共和国を帝国領に編入し貴族の所領とする』
とか言ってましたよね」
「どちらが本当の放送なのでしょうか?」
「今の放送は、ランドール提督が日頃から言っていた内容に近いです」
「しかし、権力を手にした途端に豹変して……ということは、過去の例を挙げるまでもないです」

「放送を消せ!」
 慌てて放送を消すオペレーター。
「我々は、共和国同盟から脱退して独立宣言したのだ。今更、尻尾を振って元の鞘に納まろうとするな」

 やがて、ランドール提督がタルシエン要塞に入港したという情報が入った。
「説得しにくるのでしょうか?」
「帝国艦隊併せて一万数千隻を引き連れてかね?説得するつもりなら、せめて旗艦艦隊だけでくるべきだろう」
 旗艦艦隊だけで行こうとしたアレックスであるが、マーガレット皇女などが大反対したからこその帝国艦隊引率なのであるが。
「何にせよ、せっかくの機会だ。一度、アレックスと一戦交えてみたいと思っていたのだよ」
 自分の願望のために、部下を巻き添えにしようというのも考え物だが。

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2021.01.09 15:37 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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