銀河戦記/鳴動編 第二部 第十章 反乱 Ⅶ
2021.01.23
第十章 反乱
Ⅶ
ウィンディーネ艦橋。
正面スクリーンには、敵たるサラマンダー艦隊及び帝国艦隊の配置が示されている。
「敵艦隊の総数は、およそ一万二千隻!」
レーダー手が報告する。
「どうやら退く気配はありませんね」
副官のシェリー・バウマン大尉が意外な表情をしている。
「これだけの艦数差をもってしても前進してくるということは、何か策を練っているはずだ」
「ランドール戦法ですかね」
「それはこちら側も本望だ。どちらが上手か見せつけてやろう」
その自信はどこから来ているのだろうか?
これまでの戦いで、先鋒として敵陣に突撃して主に戦闘の要として戦ってきた歴史がある。
一方のアレックスは、旗艦サラマンダーにいて後陣にいることが多かった。
実際の戦歴では、ゴードンのウィンディーネの方がはるかに功績を立てていたのある。
一対一の艦と艦の戦いとなれば、アレックスのサラマンダーに勝ち目はないだろう。
「敵側より入電!ランドール提督が出ておられます」
「スクリーンに出せ!」
目の前に、敵側となったアレックスが映し出された。
「こうなってしまえば、双方とも言い訳は無用だろうな」
「その通り」
「ならば手加減なしで戦おうじゃないか」
「望むところだ」
「それでは」
アレックスが敬礼するのを見て、ゴードンも敬礼を返す。
そして通信が途切れて、星の海の映像に変わった。
アレックスもゴードンも、お互いの性格はよく分かっていた。
「全艦戦闘配備!」
ゴードンが指令を下す。
ついにかつての旧友同士が戦いの火蓋を切ることになったのだ。
「全艦戦闘配備!」
副官が復唱した時だった。
突然、艦が激しく振動した。
「何だ?今のは?」
「攻撃です!」
「艦尾損傷!」
「報告しろ!」
「只今、損傷状態を確認中です!」
やがて報告が返ってくる。
あたふたとしている艦橋の正面スクリーンに、見慣れた艦影が映り込んだ。
「あ、あれは!」
副官のバネッサが指さして叫んだ。
その艦は、艦体に火の精霊「サラマンダー」を配していた。
火の精霊を描いているのは、旗艦サラマンダーの他には、隠れたもう一つの旗艦である巡航艦『ヘルハウンド』しかない。
ランドール艦隊が、別名としての『サラマンダー艦隊』を称することとなった由来である、暗号名「サラマンダー」を冠していた。
ハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式が、アレックスの乗艦となり旗艦となる前の旗艦であり、今でも旗艦としての登録は抹消されていない。
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