銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 IV
2019.06.01


第三章 第三皇女


                 IV

 貴賓室に入室したアレックスとジュリエッタ皇女。
 応接椅子に対面して座った。その周囲を侍女及びネルソン提督が待機している。
「我が艦隊の危機を救って頂いたこと、全将兵に代わりまして、ここで改めてお礼を申
し上げます」
 言いながら軽く会釈する姿は愛らしく微笑ましかった。
「提督が中立地帯を越えて、我が領内に入ったことは、国際救助ということで問題はな
いと思いますので、お気遣いのないように。それはせておき、提督のご来訪の目的は他
にもあるかと思うのですが、いかがなものでしょうか」
 さすがに艦隊を指揮できる洞察力の深い皇女だと感心するアレックスだった。
「皇女のご推察の通りです。我が祖国のために戦い、現在解放戦線として戦い続けてい
る連邦軍が、次なる目標として銀河帝国を据えていることを、ご警戒申し上げるために
参上しました」
「連邦軍が我が艦隊を襲ったことを考えれば、十分ありうることでしょう」
「それともう一つ」
 と、一端言葉を止めてから、口調を改めて話し出すアレックス。
「単刀直入に申し上げますと、我が解放軍への援助と共同戦線の協定を結びたいと思っ
ております」
「援助と共同戦線ですか……」
 深い思慮に入る皇女に、ネルソン提督が何やら耳打ちしている。
「その件に関しましては、ここでは結論を出すことはできません。もし宜しければ、提
督には帝国首都星アルデランへご足労願いたいと思います」
「判りました。首都星へ参りましょう」
 皇女は軽く頷いて、側に控えているネルソン提督に合図を送った。
「それでは提督には、このインヴィンシブルで首都星へお送りいたします。ご配下の艦
隊には最寄の軍事ステーションにて、一時駐留をお願いいたします。ご納得いただけま
すか?」
 戦艦が中立地帯を越えただけでも一大事なのに、ましてや首都星まで連れていくわけ
にはいかないだろう。
「結構です。一人同行させたい者がいるのですが、よろしいですか?」
「いいでしょう。お連れくさい」
 アレックスが同行させたのは、パトリシア・ウィンザーだった。単身で乗り込むこと
となった自身の補佐役及び相談役として、彼女が最適任だと判断したのだ。
 首都星へと向かうインヴィンシブル艦内において、アレックスはパトリシアを皇女に
紹介した。
「我が解放軍の総参謀長を務めています、パトリシア・ウィンザー大佐です」
 すると目を丸くして皇女は聞きなおした。
「総参謀長? 女性の身で軍の重職をなさっていらっしゃるのですか?」
「その通りです。志願兵制度を敷いている共和国同盟には男女の区別がありません。能
力さえあれば、いくらでも上の階級へ上がれます。もっとも妊娠・出産・育児を担う女
性には宇宙環境は厳しく、実質上結婚を機に一時離職しますが、育児が終われば地上勤
務に復職します」
 パトリシアが共和国同盟の実情を説明した。
 その間にも、アレックスの側にピタリと寄り添って、仲睦まじい雰囲気が漂っていた。
 それが判るのか、ジュリエッタ皇女は問いただした。
「ところでお二人は、ずいぶんと親しい間柄のように伺えるのですが」

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