銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第三章 狼達の挽歌 IX
2019.05.06



 機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌


 IX 一撃必殺!!

「ミサイル高速接近中!」
「ヒペリオンで迎撃せよ」
 フランソワが発令すると、副官のリチャード・ベンソン中尉が復唱して指令を艦内
に伝える。
「ヒペリオン、一斉掃射。ミサイルを迎撃せよ!」
 次々と飛来する誘導ミサイルをヒペリオン(レールガン)が迎撃していく。
「誘導ミサイルは、ヒペリオンで十分迎撃できますね」
「現時点で、ヒペリオンに勝るCIWS(近接防御武器システム)はないでしょう。
何せ初速19.2km/s、成層圏到達速度でも13.6km/sありますから、軌道上の宇宙戦艦さ
えも攻撃できる能力を持っていますからね」
「しかし炸薬がないので、船体に穴を開けることはできても撃沈させることはできま
せんよ。誘導ミサイルないし戦闘機の迎撃破壊が精一杯です。砲弾に炸薬を詰められ
れば良いのですが」
「それは不可能よ。あまりにも超高速で打ち出すので、炸薬なんかが詰まっていると
その加速Gの衝撃だけで自爆しちゃいますから」
「でしょうね……。誘導ミサイルはヒペリオンに任せるとしても、そろそろ敵艦のプ
ラズマ砲の射程内に入ります。撃ってきますよ」
「そうね……。スチームを全方位に散布してください」
「判りました」
 答えて、端末を操作するリチャード。
「超高圧ジェットスチーム弁全基解放! 艦の全方位に高温水蒸気噴出・散布せよ」
 艦のあちらこちらから高温の水蒸気が噴出し始めた。と同時に雲が発生してミネル
バを包み隠した。

 敵艦の方でも、その様子を窺っていたが、
「何だ、あれは?」
「敵艦のまわりに雲が発生した……て、感じですかね」
「馬鹿なことを言うな。あれは水蒸気だ。艦の周りに水蒸気を張り巡らしているの
だ」
「どういうことでしょうかね?」
「今に、判る」
 その言葉と同時に、オペレーターが報告する。
「ゴッドブラスター砲の射程内に入りました」
 コッドブラスター砲は、245mm2連装高エネルギーイオンプラズマ砲のことで、ザ
ンジバル級戦艦の艦首と艦尾にある格納式旋回砲塔に設置されており、大気圏内にお
ける実質的な主砲と言える。
「よし、ゴッドブラスター発射準備! 目標、敵戦艦」
 旋回砲塔がゆっくりと回って、ゴッドブラスター砲がミネルバを照準に捕らえた。
「ゴッドブラスター砲、照準よし。発射態勢に入りました」
 砲塔からプラズマの閃光がミネルバへと一直線に走る。

「ゴッドブラスター砲のエネルギー、敵艦の到達前に消失しました」
「消失だと?」
「誘導ミサイルも、あの雲の中で自爆しているもよう。敵戦艦は無傷です」
 思わず、ミネルバを注視する司令官。
「そうか……。あの水蒸気の雲がエネルギーをすべて吸収してしまったのだな」
「どうしますか?」
「ミサイルを誘導弾から通常弾に転換、引き続き撃ち続けろ。後、使えそうなのは
75mmバルカン砲だな……。気休めにしかならないだろうが、砲撃開始だ」

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