銀河戦記/鳴動編 第二部 第二章 ミスト艦隊 XIII
2019.04.27


第二章 ミスト艦隊


                XIII

 アレックスがフランドルに案内されながら現れた。
 一斉に敬礼して出迎える艦長達。
「出港準備完了しております」
「うん。ご苦労だった」
 振り返ってフランドルに別れの挨拶をするアレックス。
「おせわになりました」
「何もできませんが、せめて補給基地に立ち寄って補給を受けてください。二千隻すべ
てへの補給は無理でしょうが、行って帰ってこれる程度の備蓄はあります」
「よろしいのですか?」
「なあに、これくらいの礼はさせてもらわないと、罰が当たりますよ」
「そうですか……。それではご好意に甘えさせていただきます」
「ご武運を祈っています」
「ありがとう」
 握手をして別れ、アレックスはヘルハウンドに乗艦した。
「おめでとうございます。提督のご奮戦振りモニターしておりました」
 艦橋に入るやいなや、女性オペレーター達の熱烈な祝福を受ける。
「そうか……」
 指揮艦席に腰を降ろすアレックス。
 この席に座るのは実に久しぶりのことであった。
 懐かしそうに、機器を撫でている。
「ステーションより、補給基地のベクトル座標データが入電しております」
「よし、データを艦隊に送信し、先に補給しろと伝えろ」
「了解」
「提督。このベクトル座標データからすると、補給基地は中立地帯のすぐそばです」
 航海長が説明した。
 数字の羅列を読んだだけで、およその位置を言い当ててみせるのは、その頭の中に航
海図がまるごと入っているからだろう。
「補給基地の位置を五次元天球儀に投影してみろ」
「判りました」
 五次元天球儀は、透明球状体にレーザーを照射して、その内側に航路図を投影できる
ものである。ワープ中でも常に艦の位置を表示できる。敵艦隊や新築されたばかりの施
設などの更新されていないデータは表示されないので、構築物の所有者や国家は、国際
宇宙航路図協会への報告を厳重に義務付けられている。
 補給基地を示す青い光点が明滅し、そのすぐそばを銀河帝国領との境界にある中立地
帯が、淡いレッドゾーンとして表示されている。
「目と鼻の先だな」
「中立地帯近辺の警備における補給を担っているのでしょう」
「だろうな……」
 と頷いて、オペレーター達を見渡してから、
「出航する。機関出力五分の一、微速前進」
 命令を下した。
「了解。機関出力五分の一、微速前進」
 艦長が命令を復唱する。
「機関出力五分の一」
「微速前進」
 各オペレーター達が復唱しながら機器を操作している。

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