銀河戦記/脈動編 第六章・会敵 V
2022.03.05

第六章・会敵





 サラマンダー艦橋。
「パルスレーザー砲照射!」
 次々と襲い掛かる砲弾を撃ち落とす。
「原子レーザー砲発射準備!」
「原子レーザー砲への回路接続」
「レーザー発振制御超電導コイルに電力供給開始」
「BEC回路に燃料ペレット注入開始します」
「発射準備完了しました」
「撃て!」
 一条の閃光が走り、敵艦を捕える。
「命中しました」
「一隻撃沈を確認」
「どう出るかな……。再度、交信を試みてみろ」
「了解」
 通信士が試みるものの応答はなかった。
「だめです」
「敵艦、攻撃を続行中!」
「徹底抗戦か……。仕方あるまい、原子レーザー砲第二射準備だ!」
 交信を拒絶して、有無を言わさず攻撃を続ける相手。
 もはや遠慮は無用であろう。
 第二射が発射され、跡形もなく消し去った。
「敵艦消滅しました……」


「前回の遭遇と合わせて、近くに敵の基地があるのではないでしょうか?」
「うむ……ありうるな」
「好戦的な相手の基地を放っておいては、今後も遭遇会戦は避けられません」
「いっそのこと敵基地を奪取してしまいましょう」
「待て、早まるな! 相手が国家なら外交問題にもなる。本国に報告して支持を得る必要がある」
「外交ですか……。相手に聞く耳があればですけどね」
「ともかく惑星探索は一時中止だ!敵の残骸を集めたら、帰還するぞ!」
「了解しました」
 敵の存在の可能性を考慮して、探索を中止して基地へと帰ることにする。


 惑星イオリス評議会。
 敵がいるかも知れない宙域への探索についての議論を続けていた。
「敵がいるかもというだけで、探索を延期するのはどうかと思う」
「相手は交信を拒絶して問答無用で攻撃を仕掛けてくる輩、遠慮なく叩き潰してしまえば良いじゃないか。相手の基地や惑星を奪取すれば、零から開発する手間も省ける」
「侵略者になろうというのか?」
「侵略してきたのは奴らの方じゃないか」
「それは違うぞ。彼らは我々の星域には踏み込んでいない。我々の方が彼らの星域を侵したから排除しようと戦ってきたのだ」
「待て! このイオリスの先住者は、彼らによって滅ぼされたのではないのか? 既に彼らが侵略をしている証拠だ」
「宣戦布告なしに相手が攻撃を仕掛けてくるなら好都合じゃないか。反撃して相手の基地を攻略するのも可能じゃないか? これまでの戦闘で収集された戦艦の残骸から、戦艦の技術は遥かに我々の方が進んでいる」

「現実を考えてみようじゃないか。ニュー・トランターは未だ開拓途中だし、イオリスも居住限界に達しつつある。どうしても次なる居住惑星が必要なのだ。このタランチュラ星雲内には居住可能な惑星が少ない。だから星雲外に出て、惑星探しに出かけなければならないのだ」
「新たなる惑星探しは必要不可欠だ。相手が戦いを仕掛けてくるなら受けて立つだけだ」
 評議会は、好戦国と戦って領土を奪う、という意見が多数であった。
 天の川銀河にある時は、何万年にも渡って民族紛争を続け、食糧や領土を奪い奴隷制度を作った。今更体裁を述べても仕方がないだろう。
 主戦派と慎重派が議論を重ね続けて、最終的に侵攻すべきという結論を出した。



 評議会の決定を受けて、艦艇の増産が行われて、侵攻作戦部隊が編制された。
 イオリス軍参謀本部に呼び出されるトゥイガー少佐。
 メレディス中佐が待ち受けていた。
「評議会の決議のことは聞いているだろう?」
「はい。侵攻作戦が開始されると……」
「ああ。その作戦司令官に君が選ばれた」
「なるほど……。お引き受けします」
「評議会の連中は、技術力差から勝ち戦と高をくくっているようだが、技術力や艦艇数の多さだけで推し量れるものではないのだ」
「確かに。ランドール提督がどのようにして勝ち続けてきたかを考えれば、そんなに簡単なことじゃないです」
「そういうことだな……。しかし、評議会が決定したことには、軍としては逆らえない。君には、侵攻作戦部隊司令として、サラマンダーから指揮を執ってくれたまえ」
「最初に目指すは、会敵した宙域であるαω星団ですね」
「うむ。よろしく頼む」
「かしこまりました」
 敬礼をして部屋を出るトゥイガー少佐だった。



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