銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 Ⅱ
2020.11.21
第九章 共和国と帝国
Ⅱ フィッツジェラルド家
軍事的にも政治的にも、着々と改革を推し進めていくアレックスであったが、どうあが
いてもままならぬ一面があった。
経済である。
そしてそれを一手に掌握するフィッツジラルド家とどう対面するかである。
「死の商人」
と揶揄される一族だった。
一般市民達は平和であることを望む。
しかし、武器商人達は平和であっては、飯の種がなくなってしまう。
次々と最新鋭戦艦を開発生産する大造船所と、死の商人達を傘下に擁する彼らにとって
は、太平天国の世界よりも戦乱動地の世界の方が、居心地がいいはずだ。いずれ彼らの手
によって戦乱の世に導かれていくのは目にみえている。
たとえばだが……。
地球日本史において、真珠湾攻撃と呼ばれる奇襲攻撃があったが、米国は事前に察知し
ていた?という陰謀論説がある。
大日本帝国海軍の真珠湾攻撃を、アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルト
が、「事前察知をしながらそれをわざと放置した」という説である
戦争になれば、戦闘機を製造するロッキード・マーチン社やマクドネル・ダグラス社、
、航空母艦ではニューポート・ニューズ造船所などが潤うのだ。
短期戦では日本に一時的にも追い込まれるだろうが、長期戦に持ち込めれば経済力で日
本に逆転できるとの判断がなされた。
そういった戦争を望む商人達が、大統領を裏で手を引いていたというのだ。
ちなみに、幕末に活躍した長崎のトーマス・グラバーも武器商人として来日していた。
数ある資産家の中でも、その名前を知らぬ者はいないといわれるフィッツジラルド家は、
全銀河の経済覇権を実質上握っていた。共和国同盟内はもちろんのこと、銀河帝国との通
商貿易の九十五パーセントを独占し、連邦側とも闇貿易で通じていると噂されていた。
戦時下においては、最も利益を生み出すのが武器の輸出である。そこに暗躍するのが死
の商人と呼ばれる武器輸出業者である。金さえ出してくれれば、敵であろうと誰であろう
と一切関知しない。必要なものを必要なだけ調達して、指定の場所へ運んでやる。
そしてそれらの死の商人達を影で操っているのが、フィッツジラルド家なのである。
かつて第二次銀河大戦が勃発し、統一銀河帝国からの分離独立のために立ち上がった、
トランター地方の豪族の中でも最大財閥として、当時の独立軍に対して率先して最新鋭戦
艦の開発援助を行っていたのがフィッツジェラルド家である。
その総資産は銀河帝国皇室財産をも遥かに凌ぐとも言われており、資本主義経済帝国の
帝王と揶揄されている。
ことあるごとにランドール提督を目の敵としていた、かのチャールズ・ニールセン中将
もまた彼らの庇護下にあったのだ。
政治や軍事には直接介入しないが、実力者を懐柔して裏から支配する。
そんなフィッツジェラルド家の当主が、アレックスに面会を求めてきた。
トリスタニア共和国は解放されたものの、銀河にはまだ平和は訪れていない。
バーナード星系連邦との戦争は継続中である。
そのためにも、軍備の増強も必要であろう。
あらたなる戦艦の建造は無論のこと、被弾した艦船の修理には彼らの協力を得なければ
ならないことは明白である。
武器商人との取引も避けては通れないのである。
「アンジェロ・フィッツジェラルドです」
と名乗った相手は、恰幅のよい体系の50代半ばの男性だった。
機動戦艦ミネルバを造った造船所を所有している。
トランターが連邦軍によって陥落された後には、何の躊躇いもなく総督軍に与して、ミ
ネルバ級2番・3番艦を建造して、メビウス部隊掃討の手助けをした。
その時々の権力者に媚びへつらって、財力を蓄えて経済面から支配するということだ。
「アレックス・ランドールです」
差し障りのない挨拶を返す。
「それにしても……。さすがですなあ。総督軍との戦いぶり、じっくりと鑑賞させていた
だきましたよ」
解放軍及び帝国軍混成艦隊と総督軍との戦いは、TV放映を許可していたから、当然共
和国でも視聴できたということだ。
それから、軍事や経済に関わる話題が交わされる。
二時間が経過した。
「どうも長らくお邪魔致しました。今後ともお付き合いよろしく御願いします」
共和国の軍部最高司令官と、経済界のドンとの会談は終わった。
何が話されたかは、想像に容易いことだと思われる。
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銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 Ⅰ
2020.11.21
第九章 共和国と帝国
I
トランターに君臨していたバーナード星系連邦軍は壊滅した。
ついにトランターは解放されたのだ。
取り急ぎ、臨時政府が置かれることとなり、暫定政権の首班として艦隊政務本部長のルーミス・コール大佐が就任することとなった。
首班としては、アレックスが推挙されていたのであるが、銀河帝国皇太子としての問題もあるので、事を荒げたくないとして辞退したのであった。
アレックスは、かつてマック・カーサー総督がそうしたように、枢密院議会議長席から同盟の解放が達成されたことを政権放送で全世界に流した。総督府を廃止して、臨時の暫定政府を置き、正規の政府が機能するまでの間、これを軍部が代行することを宣言した。
アレックスが銀河帝国皇太子ということで、同盟所領が帝国の属国となることを危惧する民衆に対してこれを断固として否定した。その一環として、追従してきた帝国自治領主達が、自分の領土権を主張したり略奪に走る気運があるのをとがめて、同盟所領には一切手を出さないように厳命するとともに、帝国へ強制的に引き返させた。
共和国同盟を連邦から解放したアレックス達が、まず成さねばならないのは、解放軍と総督軍を取りまとめ新生共和国同盟軍として再編成することであった。
まず連邦総督軍として再編成された時点において、特別昇進した将兵にたいしての勧告が出された。共和国同盟の規定によらない昇進のあったものはすべて、規定通りの階級に戻されることとなった。
ただし、将軍職にたいしては特別な処置がとられることになり、規定通りの階級に戻るか、将軍職のまま任意退役するかを選択できるようにされた。これは、将軍とそれ以下の階級では、退役後の恩給に格段の差があるためで、人情的な処置である。結局将軍職にあるものは全員退役の道を選び、共和国同盟の将軍はすべて解放軍からそのまま引き継がれることとなった。
また空位となった階級には、功績点で昇級点に達している上級大佐や将軍の中から順次上級の将軍へと昇進させた。
解放軍最高司令官であったアレックス・ランドールは実質的に共和国同盟軍の最高司令官となったのである。にしてもアレックスは中将でありその上の大将や元帥が空席のままなのを、いぶかしげに思うものもいたが、同盟では将軍職には定員があって、欠員が出ない限り昇進できないので、職をわざと開けておくことで、戦績さえ上げれば誰でも昇進できる余地を残し、将兵達の士気は大いに上がったのである。実情は恩給を出せる経済状態ではなかったというのが真相であったのだが。
先の総督軍総司令だったニコライ・クーパー中将は、元の官位が准将であり総督に取り入って現在の地位についたことと、戦略家としての知名度も低いために、正式な中将の官位にあり数多くの実績を持つアレックスの足元にも及ばなかったことから、結局彼も中将の官位のまま任意退役することとなった。
その一方で暫定政府を開いて政治と経済の復興を目指すことも必要であった。総督軍を破ったとはいえ、依然として連邦とは戦争状態にあり、一刻も早い復興を図るために軍部指導による政治改革を断行した。
まず最初に行ったのは、かつての全権区代表選挙による枢密院議員議会制度を廃止したことである。
全権区を選挙活動するにはあまりにも莫大な財力が必要であり、財力・権力のある実力者による事実上の世襲議員となり腐敗政治の温床となっていたからである。替わって全権区を三十六のブロックに分けた中選挙区代表による任期五年非解散の上院議員議会と、各星系ごとの小選挙区代表による任期四年有解散の下院議員議会との二院議会制度を発動させた。世論をよりよく反映させるために、解散総選挙のある下院議員に立法的先権を与えた。
両院議員の最初の選挙は、準備期間を考慮して四年後に行われることとなった。両院議員が選出され、議会政治が機能するまでの間、暫定政権として軍部が代行して執り行うこととした。
アレックスは、アルサフリエニ方面軍最高司令官の職はそのままに、トリスタニア共和国同盟軍最高司令官に就任した。
軍事的にも政治的にも、着々と改革を推し進めていくアレックスであったが、どうあがいてもままならぬ一面があった。
経済である。
そしてそれを一手に掌握するフィッツジラルド家とどう対面するかである。
「死の商人」
と揶揄される一族だった。
一般市民達は平和であることを望む。
しかし、武器商人達は平和であっては、飯の種がなくなってしまう。
次々と最新鋭戦艦を開発生産する大造船所と、死の商人達を傘下に擁する彼らにとっては、太平天国の世界よりも戦乱動地の世界の方が、居心地がいいはずだ。いずれ彼らの手によって戦乱の世に導かれていくのは目にみえている。
たとえばだが……。
地球日本史において、真珠湾攻撃と呼ばれる奇襲攻撃があったが、米国は事前に察知していた? という陰謀論説がある。
大日本帝国海軍の真珠湾攻撃を、アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルトが、「事前察知をしながらそれをわざと放置した」という説である
戦争になれば、戦闘機を製造するロッキード・マーチン社やマクドネル・ダグラス社、、航空母艦ではニューポート・ニューズ造船所などが潤うのだ。
短期戦では日本に一時的にも追い込まれるだろうが、長期戦に持ち込めれば経済力で日本に逆転できるとの判断がなされた。
そういった戦争を望む商人達が、大統領を裏で手を引いていたというのだ。
ちなみに、幕末に活躍した長崎のトーマス・グラバーも武器商人として来日していた。
数ある資産家の中でも、その名前を知らぬ者はいないといわれるフィッツジラルド家は、全銀河の経済覇権を実質上握っていた。共和国同盟内はもちろんのこと、銀河帝国との通商貿易の九十五パーセントを独占し、連邦側とも闇貿易で通じていると噂されていた。
戦時下においては、最も利益を生み出すのが武器の輸出である。そこに暗躍するのが死の商人と呼ばれる武器輸出業者である。金さえ出してくれれば、敵であろうと誰であろうと一切関知しない。必要なものを必要なだけ調達して、指定の場所へ運んでやる。
そしてそれらの死の商人達を影で操っているのが、フィッツジラルド家なのである。
かつて第二次銀河大戦が勃発し、統一銀河帝国からの分離独立のために立ち上がった、トランター地方の豪族の中でも最大財閥として、当時の独立軍に対して率先して最新鋭戦艦の開発援助を行っていたのがフィッツジェラルド家である。
その総資産は銀河帝国皇室財産をも遥かに凌ぐとも言われており、資本主義経済帝国の帝王と揶揄されている。
ことあるごとにランドール提督を目の敵としていた、かのチャールズ・ニールセン中将もまた彼らの庇護下にあったのだ。
政治や軍事には直接介入しないが、実力者を懐柔して裏から支配する。
そんなフィッツジェラルド家の当主が、アレックスに面会を求めてきた。
トリスタニア共和国は解放されたものの、銀河にはまだ平和は訪れていない。
バーナード星系連邦との戦争は継続中である。
そのためにも、軍備の増強も必要であろう。
あらたなる戦艦の建造は無論のこと、被弾した艦船の修理には彼らの協力を得なければならないことは明白である。
武器商人との取引も避けては通れないのである。
「アンジェロ・フィッツジェラルドです」
と名乗った相手は、恰幅のよい体系の50代半ばの男性だった。
機動戦艦ミネルバを造った造船所を所有している。
トランターが連邦軍によって陥落された後には、何の躊躇いもなく総督軍に与して、ミネルバ級2番・3番艦を建造して、メビウス部隊掃討の手助けをした。
その時々の権力者に媚びへつらって、財力を蓄えて経済面から支配するということだ。
「アレックス・ランドールです」
差し障りのない挨拶を返す。
「それにしても……。さすがですなあ。総督軍との戦いぶり、じっくりと鑑賞させていただきましたよ」
解放軍及び帝国軍混成艦隊と総督軍との戦いは、TV放映を許可していたから、当然共和国でも視聴できたということだ。
それから、軍事や経済に関わる話題が交わされる。
二時間が経過した。
「どうも長らくお邪魔致しました。今後ともお付き合いよろしく御願いします」
共和国の軍部最高司令官と、経済界のドンとの会談は終わった。
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2020.11.21 14:33
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