銀河戦記/脈動編 第二章・滅亡都市 Ⅲ
2021.10.30

第二章・滅亡都市




 捜索隊の隊長 ウォーレス・トゥイガー大尉。(英♂)
 副長     ジェレミー・ジョンソン曹長。(英♂)
 船長     フリートヘルム・クラインミヒェル。(独♂)
 機関長    ヨーシフ・ペカルスキー。(露♂)
 航海士    ヴィクトル・ヤブロコフ(露♂)
 操舵手    ディオニシオ・カサルス(西♂)
 レーダー手  フェリシア・ヨハンソン。(瑞♀)
 通信士    フランカ・メインス。(蘭♀)
 生物学者   コレット・ゴベール(仏♀)
 医者     ゼバスティアン・ハニッシュ(独♂)
 言語学者   クリスティン・ラザフォード(英♀)


 電波発信源の建物の前に立つが、玄関に続く階段の中ほどに背丈ほどの低木が生えていた。
「なんで階段に木が?」
 不可思議な場所に木。
 それは建物の中に入っても存在していた。
 ロビーの至る所にも低木が生えているのだった。
「何で建物の中に木があるんだ?」
 ここは生物学者のコレットの出番だ。
「ちょっと調べてみます」
 コレットは、建物の中に生えた低木を調べ始めた。
 低木の状態、根っ子から茎や葉など、さらに他の木々も。
「シダ植物に近い種だと思われますが……おかしいですね」
「何が?」
「根の辺りを見て下さい」
 と根元を指さす。
 一同が差された根元を注視する。
 根の周りが幹に比べて異様に太かったのだ。
 まるで根が何かを覆い隠すように。
「ちょっと、木を倒してみてください」
「倒すのか?」
「お願いします」
「分かった。やってみるよ」
 力自慢の機関長が、低木に手を掛けて思いっきり押し倒した。
 メリメリと床から根っ子が剥がれてゆくと、そこに現れたのは……。
「これは? 人間の?」
 驚く一同の目に映ったのは、木の根が絡みまくった人間の骸骨だった。
「この状態からみるに、この木は『冬虫夏草』の一種かと思われます」
「冬虫夏草? 昆虫の体内に寄生して、その体液を吸い取って成長し、やがて体を突き破って胞子体を伸ばすという奴か?」
「その通りです。冬虫夏草は子囊菌類で土壌生活をする昆虫に寄生する物が多いですが、ここのものはシダ植物に近い種で、動物や人間にも寄生するようです」
「人間は土の中には潜らないよな?」
「おそらく空気感染だと思います。空気中に漂う胞子を吸い込んだ人間の肺胞の中で発芽して成長しつつ身体全体を侵してゆき、やがて皮膚を破って木に成長して、また胞子を放出する。そんなライフサイクルを繰り返しているのでしょう」
「うわーっ! 宇宙服着てなかったら私達も?」
 一同が驚愕して、腰が引けてしまうフェリシアだった。
「ちょっと待てよ。ここの住民たちは、この冬虫夏草によって滅ぼされたということか?」
「たぶんそういうことでしょう」
「ここまで文明が発達しているということは、この植物は土着ではなく侵略外来種ということだろうな。何らかの方法で持ち込まれてしまった?」
「衛星砲があって戦争状態ということは、交戦国の生物兵器の可能性があります」
「生物兵器? 銀河連邦では使用どころか開発も禁止になっている」
「ここは銀河連邦ではありませんから」

「いずれその交戦国とも出会うことになるな。状況を鑑みるにかなり好戦的な国家みたいだ。戦いを仕掛けられて我らの星に生物兵器を使われるかもしれない」
「この生物に対するワクチンとか駆除薬などの防疫体制を開発しておく必要があります。胞子を採集して研究しなければ」
「それはまあ当然だろうが、厳重管理しなくてはいかんな」
「まかせて下さい。アメーバーの時のような失態は犯しません」
「頼みますよ」
 植物から胞子を採集して、保存容器に収めるコレット。
 ハニッシュ医師は、DNA検査用に遺体の組織の一部を採集した。
「胞子さえなければ素晴らしい環境の星なんだが……。何とかならないか? ニュー・トランターのシアン化水素の無毒化のように」
「無理でしょう。カビと同じで空気中に浮遊している胞子を除去するのは不可能です。栄養環境があればどんどん増殖しますから。この星を丸ごと焼却しない限りは」


「さて、本題の調査に入ろうかな」
 そもそもこの星に降り立ったのは、電波発信源の調査である。
「あまりのショッキングで忘れるところでしたよ」
 二手に分かれて、館内の捜索を始める一行。
 隊長と通信士は、通信機のある部屋の捜索。。
 副長と言語学者は、この世界の言語体系を調べるために、文法などが良く分かる書物の保存場所を探った。

 隊長以下の班が通信設備のある部屋に到達した。
「フランカ、通信機器を調べてくれ」
「了解しました。どうやら定型文を連続自動送信しているようです」
「使えそうですか?」
「今のところ、何とも言えませんね。まず、通信言語が分かりませんから」
「言語? クリスティンが必要か?」
「彼女は、プログラム言語の事にも精通しています」

「この通信機を使って、この惑星にいた住民の本国との交信、そして外交交渉ができれば良いのだが」
「逆に我々の存在を知って、襲い掛かってくるということもありませんか?」
「当面の間は、傍受するだけにした方が良いのでは?」
「この先彼らと出会うまでは、我々の方は惑星開発や軍事力増強を優先して、対等に渡り合えるようにしましょうよ」
「まあそれが一番良いのかも知れないな。結論は本部に任せよう」

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