銀河戦記/脈動編 第二章・滅亡都市 Ⅱ
2021.10.24

第二章・滅亡都市





 銀河乱流は一定のコースを流れておらず、定期的に流域を変えることが判明した。
 最寄りの恒星にある惑星の衛星軌道に観測ステーションが建造されて、航行の安全を見守ることとなった。
 うっかり乱流に入り込んでしまった船を救助するための救助艇も接続されている。

 観測ステーション。
 展望&観測ルームで漆黒の宇宙空間を眺めている隊員。
 端末がコール音を立てはじめた。
「私だ。どうした? ……分かった、今すぐ行く」
 端末を切って、管制室へと向かう。
「どうした?」
「はい。乱流の向こう側で、銀河連邦でこれまで使われていない周波数の定期的な変調信号が送られてきています」
「使われていない周波数だと?」
「はい。もしかしたらこれまで出会っていない文明があるのではないでしょうか?」
「文明か……。本部に連絡して探索艇を出してもらおう」


 早速、発信源に向けて探索艇が派遣されることとなった。

 捜索隊の隊長 ウォーレス・トゥイガー大尉。(英♂)
 副長     ジェレミー・ジョンソン曹長。(英♂)
 船長     フリートヘルム・クラインミヒェル。(独♂)
 機関長    ヨーシフ・ペカルスキー。(露♂)
 航海士    ヴィクトル・ヤブロコフ(露♂)
 操舵手    ディオニシオ・カサルス(西♂)
 レーダー手  フェリシア・ヨハンソン。(瑞♀)
 通信士    フランカ・メインス。(蘭♀)
 生物学者   コレット・ゴベール(仏♀)
 医者     ゼバスティアン・ハニッシュ(独♂)
 言語学者   クリスティン・ラザフォード(英♀)

 ミーティングルームで部下に伝達するトゥイガー大尉。
「というわけで、謎の信号発信源の調査を命じられた」
「銀河連邦で使われていない周波数ということですが……」
「少なくとも知能を持った生命体の存在の可能性があるということかな」
「通信技術があるとしたら、科学も一定レベルはあるわけですよね」
「そうだな。宇宙戦艦とか艦隊をも持つ文明に発展していると厄介なことになるかもだ」
「戦争ですか? この銀河に来たばかりだというのに」
「出会ってみなければ分からないがな。平和的な相手ならいいんだが」
「そろそろ時間ですよ」
「分かった。出発しよう」


 電波の発信源の惑星近くへとやってきた。
「あの星が発信源か?」
「間違いありません」
「拡大投影してみろ」
 スクリーンに惑星が大写しにされる。
「うむ。なかなか美しい星だな。大気を分光解析してみろ」
「了解しました」
 レーダー手のフェリシアが、光学スペクトル分析装置で惑星の組成を調べ始めた。
「窒素79%、酸素18%、二酸化炭素0.1%他になります」
「ほとんど地球並みだな。元からなのか、テラフォーミングが大成功したのか?」
「テラフォーミング成功となれば地球人ということなのでしょうか?」
「地球型環境に住んでいるとなれば、地球人である可能性は高いが……。だとすると、少なくとも我々より百年以上前には移住してきたということになるだろう」
「我々が戦争に明け暮れている時に、難を逃れて移住してきたということでしょうか?」
「銀河間を渡って移住となれば、大規模なプロジェクトになる。話題に上らないはずがないぞ」

「よし。警戒しつつ接近しよう」
 さらに近づいた時だった。
「前方に高エネルギー反応!」
「攻撃か! 面舵全速、避けろ!」
 探索艇が急速転回したところを、ビームエネルギーが掠め通った。
「危ない危ない。ちょっと離れて様子をみよう」
 惑星から距離を取る探索艇。
「惑星軌道上に衛星砲があります。あれが撃ってきたようです」

「あれから撃ってきませんね」
「どうやら、自動攻撃タイプの衛星砲なのだろう。射程距離に入らない限り撃ってこない」
「でも、衛星砲を仕掛けるということは、侵略者の存在があって戦っているということですよね。護衛の宇宙戦艦とかも繰り出してきてもよさそうですが現れませんね」
「戦艦はともかく、一般の交易商船とかも見当たりませんよ。経済活動があるなら船の行き来があるはずですが」
「つまり死んだ星だというのか?」
「先ほどから惑星を見ていますけど、一隻の船も航行していません。何かの理由で人々が滅亡して、衛星砲だけが動き続けているのではないでしょうか?」
「なるほどな。そうかも知れない」

「ともかく滅亡したというのなら、その理由を調査する必要がある。でないと今後の移住計画に支障が出るかも知れないからな。それに交戦相手のことも気になる。惑星に降りて手がかりを探ろう」
「惑星に降りるには、衛星砲を何とかしませんと」
「しかしこの探索艇には武器は搭載されていませんけど」
「衛星砲は何基稼働している?」
「一基だけのようです。他にもあるのでしょうが稼働していないようです。燃料切れとかで機能不全になっているのかも」
「よし! それなら対応の仕方があるな」

 それから一時間ほど待機するが、惑星には何の動きも見られなかった。
「やはり惑星の人々はいないようだな」
「どうしますか?」
「ドローンを使おう。衛星砲がドローンに気を取られている隙に背後、つまり軌道の内側に回ろう。衛星砲は地上に向かっては撃てないようになっているはずだ。安全装置が働くだろうからな」
 ドローンの準備にかかると同時に、衛星砲の背後に回るコース設定を始める。
「ドローンを出すぞ。軌道を東回りに動かす」
 衛星砲がドローンに追従するように東を向いているうちに、西回りに軌道内に侵入する作戦だ。
「よし、今だ。突入する! 全速前進!」
 ドローンの隙を突いて、衛星軌道内に侵入する。
「ドローンの撃破を確認しました」
「上手くいった。ドローンを失ったのは辛いがな」
「一応、衛星砲を機能停止させておきましょう」
「そうだな。衛星砲の背後に付けろ」
 衛星砲に接舷して、ペカルスキー機関長が船外活動を行って電源カットすることに成功した。
「これで大丈夫だ。安心して惑星を調査できる」
 戻ってきて報告する機関長。
「ご苦労様でした」

「早速、惑星地上をカメラで撮影しつつ、状況を把握する」
「降下して調べないのですか?」
「見た目良好環境なのに人っ子一人いなくなった星だ。その原因を突き止めないうちに、不用意に降りるのは危険だ」
「なるほど」
 隊長の意見で、軌道上から地上のスキャンを始める。
 その間に、通信の内容を言語学者のクリスティンが解読を試みる。
「だめですね。今の状態では理解不能です。書物とか言語体系が分かるような資料が必要です」
「だよな」

 フェリシアが報告する。
「スキャンが終了しました」
「見てみよう」
 映像には、鉄道、飛行場、港湾など高度な文明を証明する建造物が立ち並んでいた。
 しかし住んでいるべき動いている人が一人もいなかった。
「やはり人っ子一人いませんよ」
「住民がいなくなった原因は何かな? 建物が焼けたり破壊されていないところをみると、戦争が原因ではないようだ」
「一番考えられるのは疫病ですかね? かつての地球で、ペストの大流行で世界住民の22%が亡くなったことがあります」
 ハニッシュ医師が答える。
「ここからでは原因追及ができません」
「だな……。仕方がない降りてみるか。電波の発信源のそばに艇を降ろそう」
 大気圏を突破して、電波の発信源と思われる建物のそばに着陸した。
「クリスティンも来てくれ」
 調査班として大尉の他、学者の三人と通信士、機関長が同行することにした。
「分かりました」
 一同は宇宙服を着込んで大地に降り立った。
「早速、電波源のこの建物に入ろう」

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