銀河戦記/鳴動編 第二部 第十二章 海賊討伐 Ⅲ
2021.05.08

第十二章 海賊討伐




 中立地帯を越えて、踏み込んではならない宙域へと立ち入るウィンディーネ艦隊。
「PーVX300より海賊基地の座標入電しました」
「よし。座標を設定しろ」
「了解。座標設定します」
「索敵機を下がらせてくれ」
「Pー300VXに連絡、後方に撤退を指示します」
 指示を受けて、ゆっくりと後方に下がる索敵機。
「そろそろ敵の索敵範囲に引っかかると思われます」
「よし、戦闘配備だ。ウィンディーネ艦隊の底力を見せつけてやれ!」
 声高らかに指令を出すゴードンの言葉に、副長も張り切って復唱する。
「了解! 全艦戦闘配備!」

「第六突撃強襲艦部隊に白兵戦を準備させろ!」
 任務は海賊を殲滅するだけでなく、候女の救出作戦をも担っている。
 ただ海賊基地を殲滅するだけではいけないのである。

 海賊基地中央コントロールルーム。
「レーダーに感あり! 接近するものがあります」
「接近だと!? まさか跡をつけられたのか?」
「艦数増大中! 二千、三千、さらに増大」
「この基地の位置がバレたというわけか?」
「迎撃を出しますか?」
「無論だ!」
 基地から迎撃の艦隊が出てくる。
「艦数五万隻を超えました!」
「こりゃ正規の艦隊のようだな。どこの艦隊は分かるか?」
「どうやら帝国の艦隊ではなさそうです」
「帝国じゃない? じゃあ、どこだ?」
「識別信号は……共和国同盟のものです!」
「ランドールか!」
 やがて前方で交戦が始まる。
「艦数七万隻!」
「交戦部隊より報告! 敵艦の中にハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式を視認とのことです」
「ハイドライド型だと!」
「旗艦と思しき艦体に、水の精霊ウィンディーネ! ウィンディーネ艦隊です!」
「馬鹿な! 情報ではオニール提督の反乱の際に、ランドールによって撃沈されたはずじゃないのか?」
「間違いありません。攻撃を仕掛けているのは、ウィンディーネ艦隊です」
「まさか修理して、出直してきたというわけじゃないだろうな」
 海賊基地には、ハイドライド型の六番艦が存在したことと、新生ウィンディーネ艦として配属された事は知れ渡っていなかったようだ。
「人質の候女がいるのを知らせて停戦させますか?」
「皆殺しのウィンディーネ艦隊だぞ! そんなもん通用するか!」
 皆殺しのウィンディーネ艦隊とは、アレックスが帝国宇宙艦隊司令長官と元帥号を授与され、アルサフリエニ方面で活躍していた時に名付けられた称号である。連邦によって暴行されて身ごもり自殺した実の妹、その復讐に煮えたぎっていた。
 しかし今は、改心して冷静さを取り戻したゴードンには、その名は似つかわしくないだろう。
 そこまでの新情報も伝わっていなかったらしい。
「とにかく相手がウィンディーネ艦隊、しかも七万隻となると勝ち目はない。逃げる準備をしろ。候女も連れてゆくのだ」

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2021.05.08 12:43 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
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