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2026.01.31 20:20 | pmlink.png 固定リンク | folder.png top_page | com.gif コメント (0)
銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅰ 帝国内部へ

第三章


Ⅰ 帝国内部へ


 五年ほど経過して、惑星パウサニアースに駐留する公国軍艦艇の数が三万隻に達した。公国内にある造船所において、次々と艦艇の増産が行われこの惑星へと送り込まれていた。
 アレックスは、この惑星の内政改革を行っていた。軍政から民政への移行として、議会を復興して議員選挙を行い、政治犯を釈放した。市民に対しては税率を下げ、殉職した軍人の家族への遺族年金も厚くした。それらが効して、惑星の治政も落ち着いていた。

 また本星アルデラーンも五万隻が配備されている。ロベスピエール侯爵家には地位を奪われたという恨みがあるので、いつ謀反を起こすかもしれないとの疑いがあるために、軍を外す訳にはいかない。その守備艦隊を治めるのは、アレックスの弟であるジェラルド侯爵である。
 本星の治政の担当は、三男弟のバーナード伯爵となっている。

 ケンタウロス帝国内部への進撃準備が完了していた。
 五千隻を残して、二万五千隻の遠征軍が編成されていた。
 アレックスが全艦に向けて訓示を垂れていた。
「ついに亡き先王の復讐をなす時がきた。これまで銀河の安寧を乱して侵略を続けていた奴らに鉄槌を下すのだ」
 アレックスの言葉を受けて、誰かが叫んだ。
「hip hip hooray!(万歳!)Long live the King!(王様万歳!」
 すると艦内に万歳三唱が繰り広げられた。
 やがて静まった時に、アレックスが下令する。
「全艦、帝国へ向けて進撃せよ!」
「全艦、微速前進! 進路、恒星系ヴィースバーデン!」
 艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が復唱する。
「微速前進!」
「進路、恒星系ヴィースバーデン!」
 静かに動き出す二万五千隻の艦船。
 これまで侵略に怯えてきたが、逆進行する時が来たのだ。
 かつて滅ぼされた我らが故郷の地、旧トリスタニア共和国をわが手に取り戻す時。


 ヴィースバーデンは、最寄りの帝国の軍事基地である惑星ケムニッツのある恒星系である。赤色矮星であり質量は太陽の12%程度、二つの惑星が公転しており、それぞれ十日と三十日であるが、恒星に近すぎるために潮汐固定されている。潮汐加熱で至る場所で火山が噴火しているが、噴火蒸気によって大気が形成され、ハビタブルゾーン範囲内であることから内側の惑星が居住可能となっている。帝国はここに軍事基地を建設して、惑星パウサニアースへの中継基地としている。
 惑星パウサニアースが侵略されたことを受けて、四方八方から艦艇が集結していた。
 惑星ケムニッツは、帝国中枢部へ向かうための通り道にある。次の目標がこの惑星であることが明白だからだ。迂回して先に進めば、挟み撃ちとなることは必定。
 さらに公国軍が進撃を開始したことから、ワープゲートのあるリューベック恒星系惑星グロベンラーデから援軍が向かってくる予定となっていた。
 援軍が到着するのが早いか、公国軍が到着するのが早いか。
 時間との競争となっていた。



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銀河戦記/波動編 第三部 第二章 Ⅳ ワープゲート

第二章


Ⅳ ワープゲート


 惑星パウサニアースの各家庭のテレビや街頭テレビ、ありとあらゆる映像機器がアレックスの政見放送を流していた。
『惑星パウサニアースの住民に告げる。本日をもって、この惑星は我々アルデラーン公国の支配下に入った。とは言っても、軍部関連を除いて一般住民には今まで通りである』
 市街地の大通りのビルの壁面に据えられた大型ビジョンを見つめる通行人達。軍人政治を国是として、軍人か軍属そしてその家族がほとんどであり、後は子供と引退した老人である。
 一般住民は今まで通りと聞いて、三々五々解散してゆく。
 惑星バウサニアースは、国際中立地帯に最も近い惑星でありワープゲートもある重要基地でもある。がしかし、公国への侵略行動を起こさない平常時には、ただの辺境地となる。一般住民にしては、誰が施政者になろうとも変わりはしないだろう、という思いが強くて関心も薄いようだ。
 軍部側にしても、二千隻を一瞬で失ったというトラウマが尾を引いており、公国への進出に二の足を踏んでいたのだ。
 その間にも公国側は、着々と軍備増強を進めてきたのだった。


 六時間後、ワープゲートによる最初のワープ実験が行われた。
 総参謀長室のモニターで、その様子を見つめるアレックス。
「まもなく始まります」
 艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が伝える。
「ウォーズリー准将より入電しました」
「繋いでくれ」
『こちらワープゲート、一回目のワープ試験まで五分です』
「分かった。上手くやってくれ」
「かしこまりました」
 ワープの時間となる。
『ワープ開始、一分前』
 通信で秒読みを伝えてくる。
 ワープゲートが輝きだした。
 ゲートに莫大なエネルギーが入力されているからだ。
『十秒前……五、四、三、二、一、ワープ!』
 ややあって、ワープゲート前面の空間が歪む。
 そして十隻の無人艦が姿を現した。
『成功しました。点検整備の後、二回目のワープに入ります』
 准将の声が弾んでいた。
 ワープゲートは、艦艇をより多く、かつ素早く送り込むことができる。
 敵国が艦隊を派遣してきたら、いつでも好きなだけの艦艇を送り込んで迎撃できることになる。
「よろしく頼む」
『はっ! お任せください』
 通信が途切れた。

 幹部士官を集めて会議が行われた。
 まず最初の議題が惑星リモージュについてだった。
 リモージュには国際宇宙ステーションがあり、三か国のハブ空港となっており、国際中立地帯の延長上にあった。
「もはや帝国とは戦争状態、自由な往来を許していたら、スパイによって重要機密も漏れる可能性があります」
「そうです。ステーションは我が国の占有とするべきです」
「トリスタニア共和国とは友好通商条約が締結されています。施設の利用を拒否することはできません」
「それは帝国側のみ制限すればよいだろう」
 協議一時間、帝国側のみ航路閉鎖ということで決着した。



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