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2024.05.31 20:20 | pmlink.png 固定リンク | folder.png top_page | com.gif コメント (0)
銀河戦記/波動編 第七章 Ⅱ アーデッジ船長を救え!


第七章


Ⅱ アーデッジ船長を救え!


 アレックス達の傷もほぼ癒えて、施設内を散策していた。
 ここがどこで、ここが何のための施設なのか? まだ説明されていなかった。
 ここにいるのは、一人の女性とロボットだけのようだった。
 生活するうえで不自由なことはなかった。
 食堂に行けば、自動食事給仕機によって、必要なカロリーと栄養が整った食事が食べられるし、TVも観られる。
 折りしも、惑星トランターからの放送が食堂のTVに流されていた。
『……海賊アントニーノ・アーデッジ、共和国にて海賊の限りを尽くして暴れまわった挙句に、帝国内に侵入したところを逮捕されました。軍事裁判にて死刑が決定し、公開処刑されるそうです』
 アーデッジの名前が出たことを驚く少年達。
「トニーが公開処刑!」
 声を出して一番驚いたのはルイーザだった。
 ギャングをして荒らしまわっていた少年時代からの付き合いだったからである。
 公開写真を食い入るように見つめるルイーザ。
 その横顔を見つめながらアレックスがエダに尋ねた。
「ここに船があると言ってましたよね」
「はい。あります」
「その船は動かせるのですか?」
「動かせます」
 動かせると聞いて、他の少年達が乗り出してくる。
「船を、僕達に使わせてください!」
 マイケル・オヴェットが名乗りを上げた。
「どうなさるのですか?」
「船長を助けに行きたいんです!」
 それを聞いて他の者も同調する。
「僕からもお願いします。船長は恩人です。助けたいんです」
 エヴァン・ケインが熱弁する。
 僕も、俺も、少年達がエダに言い寄る。
「ここの責任者はアレックス様です。彼の判断に委ねます」
 とのエダの言葉で、アレックスの方を振り向く一同だった。
「アレックス君、君の意見を聞いてもいいかな」
 ルイーザが代表質問する。
「決まっている。僕が、船の事を切り出したのも、そういうことだよ」
「結論は?」
「もちろん、船長を助けに行く」
「やったあ! いいぞ!」
 小躍りして喜ぶ少年達。
「分かりました。船を出しましょう」
 エダが了承する。
「でも、今まで船を見かけませんでしたが?」
 フレッド・ハミルトンが尋ねる。
「どんな探査電波でも探知できない地下深くに隠してありますから」
「どうりでロストシップとして何世紀にも渡って見つからなかったのですね」
「しかし、錆びたりして動かないということはないのですか?」
「ここの施設が不自由なく使用できているのを見れば理解できると思いますが」
「それはそうですね」
 一同は納得して、一刻も早く船に乗船したいと思っていた。

『コノ小惑星ニ近ヅク艦隊ガアリマス』
 ロビーが警報を鳴らした。
「モニターに映してください」
『モニター、ニ映シマス』
 モニターに投影された艦隊は、ケンタウロス帝国の紋章を艦体に描いたトランター駐留艦隊であった。
「帝国艦隊だ!」



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銀河戦記/波動編 第七章 Ⅰ 包囲

第七章


Ⅰ 包囲


 恒星TRAPPIST-1(トラピスト1)は、太陽系からみずがめ座の方角に約40.5光年の位置にある赤色矮星である。その第四惑星が、かつてのトリスタニア王国の首都星であるトランターである。
 軍事国家ケンタウルス帝国に侵略されて王国は滅び、帝国の直轄領となっていた。
 そんなトラピストにたどり着いたフォルミダビーレ号。
「流石に首都星に近づくのは無理だろうな。回り道してアンツーク星へ向かう」
 迂回してアンツーク星へと舵を切るフォルミダビーレ号。
 だが数時間後だった。
「前方に重力加速度探知しました。ワープアウトしてくる艦があります。その数……30!」
「なんだと!」
 やがて次々と姿を現す艦隊。
「後方にも……囲まれました」
 フォルミダビーレ号の周囲を、ケンタウロス帝国の艦隊が取り囲んでいた。
「敵艦隊より入電、停船せよ」
 レンツォ・ブランド通信士が報告する。
 アーデッジ船長を見つめるオペレーター達だった。
 自分達は、海賊である。
 国際法においては、海賊行為は死刑にあたる。
 ギルドの方針でケンタウロス帝国内では海賊行為を行ってこなかったが、言い訳にはならない。
 だからといって、戦うことも逃げることも不可能だった。
「敵艦より高エネルギー反応あり!」
 次の瞬間、一条のエネルギーが艦を掠め通った。
「ビーム兵器か、威嚇というわけだな」
 船内のオペレーター達に諦めの表情が浮かんでいた。
「しかたないな……停船だ」
 船長の命令で副長が応える。
「機関停止!」

「相手方より、ガスパロの名で通信が入っています」
「ガスパロだと!」
 オペレーター全員が振り向いてブランドを見る。
「繋いでくれ」
 モニターに海賊ギルド頭領のガスパロ・フォガッツィが現れた。
「よお、随分と遠くまで出向いたようだな。まさかそこまでたどり着けるとは思わなかったぜ」
「何が言いたい」
「ここへ来るまで、どれほどの海賊行為を働いた? 共和国側では手配書が出ているぞ。捕まった場合の処遇がどうなるか分かっているな」
「死刑ですな」
「分かっているじゃないか。あくまで共和国側においてだがな、犯罪者引き渡し条例には両国は加盟していないからな。しかし、犯罪は犯罪だ。責任を問われることになるだろう」
 無言のアーデッジ船長に、言葉を続けるガスパロ。
「例のアンツーク星には、今艦隊が派遣されており徹底捜査の上、基地などの形跡があった場合は地下まで及ぶ絨毯爆撃が開始されるそうだ」
「なんだと!」
「まあ、諦めることだな」
 通信は途切れた。

 やがてフォルミダビーレ号乗員は全員拘束され、船も直近の惑星トランターへと曳航された。
 軍事法廷に連れ出されて即決裁判が行われた。
 被告席に立たされているアーデッジ船長とリナルディ副長以下役職乗員達。
「アントニーノ・アッデージに死刑を言い渡す。その他の乗員は、流刑地にて終身労働の刑に処す」
 消沈する一同だった。
「なお、アントニーノ・アーデッジは国際放映による公開処刑とし、トリタニア宮殿前大広場にて執行されることとする」
 法廷内にどよめきが沸き起こった。

 アーデッジ船長以下フォルミダビーレ号の乗員は、ケンタウロス帝国の庇護下にある海賊ギルドに所属していた。
 ギルドを脱退したことは、帝国にも叛乱の意思ありと判断されたようだ。
 かつて、旧トラピスト星系連合王国が、ケンタウルス帝国に対して抵抗を続けていた。数百年経た現在においても反乱の根はくすぶっている。
 そのためにも、帝国に逆らうものは徹底排除の姿勢を見せつけるためにも公開処刑が行われるのだ。



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