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銀河戦記/波動編 第二部 第一章 Ⅴ 惑星上陸
第一章
Ⅴ 惑星上陸
エダの案内によって、船内を見て回るウォーズリー少佐とアーモンド中尉。
船の前方部には強力な火力を持つ粒子加速器と光子魚雷発射室、中心部には加速器に莫大な電力を供給する縮退炉、後方部にはインパルスエンジン(通常航法)とワープを可能とする亜空間フィールドエンジン。
いずれも自身が指揮する艦船とは桁外れの性能を持っていると思われる船内設備だった。
一通りの船内観覧を終えて、再び船橋に戻ってきた一行。
「これからいかが致しますか?」
エダが尋ねる。
「まずは、伯爵に爵位と領地の譲渡を進言しよう」
「伯爵様が納得なされますかね?」
「納得してもらわなくてはね。ともかく直接、伯爵と話し合う必要があります」
ウォーズリー少佐らは侯爵軍の指揮官なので、伯爵とは無関係なので口出しはできなかった。
「それでは、私どもは一旦艦に戻ります」
「伯爵と話がついたら、修理ドックの使用を許可します」
「感謝します」
こうして、一旦自分の艦に戻る二人だった。
船橋から正面スクリーンに投影される惑星サンジェルマンを見つめるアレックス。
「僕の誕生日祝いに、政権交代をお願いしよう。もう一度、伯爵に繋いでくれないか」
「かしこまりました」
エダが通信設備を操作して、伯爵邸に連絡を入れる。
伯爵邸に繋がり、通信用スクリーンにハルバート伯爵が出た。
「はじめまして、というべきですかね」
「王家の首飾りは盗まれたものだ。君が、王族であることも、私の息子であるということも証拠として不十分だ」
「まあ、ともかくも直接お会いして話し合いましょう。その時、DNA検査などなさればよいかと」
「いいだろう。待っている」
通信が切れた。
「よし、惑星に降下しよう。フォルミダビーレ号には軌道上で待機してもらって、船長とマルキオンニ白兵部隊長をこちらに呼んでくれ」
転送装置を使えば、すぐにでも伯爵の元へと飛べるのだが、不信感を抱いている者の元に直接出向くのは危険が伴う。
「わかりました」
数時間後、ゆっくりと軌道上から惑星地上へと降下してゆくアムレス号。大気圏に突入し、断熱圧縮による加熱で赤く輝く。
ハルバート伯爵邸の近くに、国政を司る宮殿、議事堂や放送局そして宇宙空港がある。
待ちゆく人々の上空に現れた巨大な宇宙船。
その異様な光景に、指さししながら見上げる人々。
「あれはなんだ?」
「どこの国の宇宙船?」
「伯爵の船じゃないよね」
などと口々に叫んでいる。
街頭テレビに映像が映し出される。
『私は、ハルバート伯爵の息子で、今は分裂してしまったアルデラーン公国の正統なる継承者である。それが証拠のロストシップと呼ばれるこの船に乗っている』
騒めく人々。
「宇宙空港へ向かっているぞ!」
「行ってみようぜ!」
船と、降りてくるだろう人物を見ようと、空港へと駆け出す人々。
報道機関のスタッフも撮影機材を抱えて移動を始めた。
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銀河戦記/波動編 第二部 第一章 Ⅳ 転送
第一章
Ⅳ 転送
侯爵の艦隊が停船しており、その旗艦にフォルミダビーレ号が横付けしている。
旗艦の乗船口から中へ入るアレックスだが、護衛としてアントニーノ・アッデージ船長とエルネスト・マルキオンニ白兵部隊長が従った。敵の懐に飛び込んでいくのは危険じゃないかと思われるが、自身に何かあればアムレス号の主砲が火を噴くと伝えてあった。万が一の場合は、転送装置を使うまでだ。
艦橋までくると、司令官が立って待ち受けていた。
「お待ちしておりました、殿下。マーティン・ウォーズリー少佐と申します」
「殿下と呼称されるのですか?」
「はい。王位継承の証のエメラルドもそうですが、かの伝説のロストシップにお乗りになられている。これはもう疑いのない事実です」
そばに控えていた副官も言った。
「私は、グレーム・アーモンド中尉と申します。この船の名は『エンディミオン』と言います。船乗りなら、ロストシップのことを知らない者はいません。旧トラピスト星系連合王国の正統なる王家の血筋であることを認めます」
どうやらアムレス号ことロストシップの威厳がこの二人の士官を納得させたようだ。
「どうです、一度私の船に来てみますか?」
「ロストシップにですか? ぜひお願いします」
ウォーズリー少佐は前のめりに乗り気だった。
「自分も同行させてください!」
副官も興味津々の表情で頼み込んだ。
「いいでしょう。転送装置を使います」
「転送装置? この艦には装置はありませんが?」
「大丈夫です。携帯端末がありますから」
と、腰にぶら下げていたホルスターから端末を取り出して見せる。
「この小さな端末が転送装置なのですか?」
「はい。そばに来て手を繋いでください」
指示されたようにアレックスと手を繋ぐ二人。
端末でアムレス号に指示を与えるアレックス。
『転送してくれ、三名だ』
『了解しました』
三人の身体が輝いた後、姿が消えて転送された。
ウォーズリー少佐が気が付くと、目の前には見たこともない計器類が並んだ船橋であった。
何より驚いたのは、乗員が女性とロボットがそれぞれ一人と一台しかいないことだった。
「乗員は、他にいないのですか?」
アーモンド中尉が尋ねると、
「はい。この船は、基本的に高性能のコンピューターが動かしています。補助的に人が操作して動かすこともできます」
エダが答えてくれた。
「逆なんですね。普通人が動かして機械が補助してくれるのですよね。さすがロストシップと呼ばれるだけありますね」
ウォーズリー少佐は目を丸くしていた。
「お名前を伺っていいですか?」
この船に似つかわしくない美しい女性を気にしたのか尋ねるアーモンド中尉。
「エダと申します。この船の管理人ですが、残念ながら人間ではありません。まあ、ヒューマノイドというところです」
「管理人? ヒューマノイド?」
惚れられたら後々面倒だと思ったのか、正直に正体を明かすエダだった。
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