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2024.04.30 20:20 | pmlink.png 固定リンク | folder.png top_page | com.gif コメント (0)
銀河戦記/波動編 第六章 Ⅶ パッシブ・レーダー


第六章


Ⅶ パッシブ・レーダー


 ブラックホールを無事に乗り越えて、タルシエンの橋の末端出口にたどり着いたフォルミダビーレ号。
 目前は、オリオン腕に位置するケンタウルス帝国領である。
 出国時よりも入国時の方が難しいのは世の常である。

「タルシエンの橋を出ます」
 ウルデリコ・ジェネラーリ航海長が伝える。
「総員、警戒態勢!」
 帝国艦隊が、どこから出てくるか分からないので、警戒するに越したことはない。
「先進波パッシブ・レーダーを使う」
 敵艦隊の動きを探るために、電磁波などを発する通常のレーダーは逆にこちらの居場所を逆探知されるので、隠密行動の時用のパッシブ・レーダーを使う。 宇宙空間を飛び交っている電磁波が敵艦に当たって反射されて届いたものを探知して敵の居場所を探ることができる。
 惑星上にはどこにでも放送局があり、帝国全土に行き渡らせるために先進波通信(超光速通信)の放送が行われている。その放送局の先進波周波数を利用して、敵の位置を探るのだ。
「この辺りだと、惑星トゥールーズの国営放送局があります」
 通信士のレンツォ・ブランドが調べた。
「よし、そこの周波数にセットしろ」
「了解しました」

 惑星トゥールーズには、タルシエンの橋からの侵略者を撃退するための強大な軍事基地があった。当然、強力なレーダーがタルシエンの橋出口を監視している。
 しかしながら、広大な宇宙を航行するたった一隻の船を探知するのは難しい。仮にレーダーにその影が投影されたとしても、隕石などの漂流物である可能性があるからである。なので、艦隊などの多数の映像を捕らえない限り見過ごされることが多いのだ。
 惑星トゥールーズに近づかないように、迂回しながら航行を続けるフォルミダビーレ号。
「このまま無事に通過できればいいのだがな」
 ふと呟くアーデッジ船長。
 しかし、それは甘い考えだった。
「前方に感あり! 一隻がこちらに向かってきます」
 レーダー手が叫ぶ。
「見つかったか。総員戦闘配備!」
 戦闘配備に動き回る乗員達。
「たった一隻なのを見ると、船か漂流物かを確認するために近づいている可能性があります」
 リナルディ副長が考察する。
「戦っても逃げても、本国に連絡されて追撃捜査がはじまると思われます」
「戦って撃沈などしたら、復習戦だと血眼になって追撃してくるだろうな」
「そうですね。逃げた方が得策ではありますがね」
「敵艦のエンジン部に魚雷一発かまして動きを止めて、その隙に逃げるというのはどうだ?」
「いいですね。それで行きましょう」

 数時間後、両者は対峙した。
「敵艦発見!」
 目前に敵艦が姿を現した。
「コルベット級哨戒艇だな」
「火力はこちらの方が上ですが、速度はあちらが上です」
「相手側より通信が入っています」
「無視だ。魚雷攻撃で返事をしようか」
「了解。魚雷戦用意、目標敵艦後部エンジン部」
 次第に接近する両船。
「第二弾を、敵艦退避運動予測位置に設定」
「設定しました」
 さらに近づく。
「停船せよと言ってます」
「返信は、魚雷発射だ!」
「発射! 続いて十秒後に第二弾発射」
 船首から連続で発射される魚雷。
 第一弾は回避するも、第二弾に被弾炎上してしまう敵艦だった。
「魚雷命中!」
「敵艦、漂流を始めました」
「よし! 脇をすり抜けて戦線離脱する」
 速度を上げて逃走を始めるフォルミダビーレ号だった。



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銀河戦記/波動編 第六章 Ⅵ タルシエンの橋



第六章


Ⅵ タルシエンの橋


 フォルミダビーレ号とアーデッジ船長達は、行方不明となった仲間の消息を確認するために、アンツーク星に向かうべくトリスタニア共和国を航行していた。
 途中に出会う軍艦に対しては、その足の速さを活かして逃げまくり、商船・貨物船とみれば襲い掛かって物資を奪っていった。
 そして関門となるタルシエンの橋へとやってきた。
 タルシエンの橋は、銀河渦状腕『いて・りゅうこつ腕(トリスタニア共和国)』と『オリオン腕(ケンタウロス帝国)』の間を繋ぐ航行可能域のことである。
 だがタルシエンの橋の手前には、共和国軍最強の防衛軍事基地シャイニングがあった。その両脇を固めるように、クリーグ基地、カラカス基地がある。
 それらの基地を横目に通り過ぎるフォルミダビーレ号。
 基地側では、タルシエンの橋を通って侵略してくるケンタウロス帝国の動きを監視していたが、内国後方から接近する一隻の船には注意が疎かになっていたのである。
 何の抵抗もなくタルシエンの橋に突入するフォルミダビーレ号。
「後ろの艦隊は動いているか?」
「いいえ。微動だにしません」
「だろうな。防衛が主任務の基地だから、深追いはしないということだ」
「しかし、帝国側出口が問題です。手ぐすね引いて待ち構えていますよ」
「まあ、たった一隻だから気づかないで見逃してくれるのを祈るだけだ」

 タルシエンの橋を航行するにあたって、ワープ航法は短距離に限定されていた。何せ、両岸国家の戦略上の都合から、航海図が公開されていない上に、空間が安定しておらず、長距離ワープを行うととんでもない場所に飛ばされることもあるからである。
「ワープ完了」
 数度のワープを終えて、タルシエンの橋を五分の一ほど渡った時だった。
 突然、船が大きく震動した。
「どうした?」
 アーデッジ船長が、報告を求める。
「分かりません。確認します」
 リナルディ副長が返答する。
「船が強力な力で引っ張られて流されています」
 答えを出したのは、ウルデリコ・ジェネラーリ航海長だった。
「詳しく教えてくれ」
「重力加速度計によると、前方三万二千光秒に超強力な重力物質があります。光学レーダー観測できないので、おそらくブラックホールかと思われます」
「ブラックホールの重力に引きずられているのか?」
「距離的にはかなり距離が離れているのですが、何せブラックホールですので」
「重力圏から離脱する試案は?」
「只今、計算しているところです」
「早くしてくれよ」
 船がブラックホールに近づくにつれて速度が上昇してゆく。
「前方モニター投影してくれ」
 モニターを確認するアーデッジ船長。
 しかし、まばらに映る恒星の他には何も映ってはいなかった。
 それでも目を凝らして見つめると、宇宙空間の一角に星が全く映り込んでいない箇所があった。
「あそこにブラックホールがあるのか?」
 そこへ航海長がやってきた。
「計算が終了しました。ブラックホールの重力圏から離脱できます」
「よし、やってくれ」
「かしこまりました」
 ブラックホール脱出行が開始された。
「運航コンピューターに、計算されたルートを設定する」
 燃料消費を最低限に、最も船に影響の少ない、最も安全なコースを、最も早く駆け抜けられるルートである。もちろんブラックホールの影響下では、ワープは使えない。
「ルート設定完了!」



解説
 *タルシエンの橋=天の川銀河のいて腕とオリオン腕の間の領域、地球から約
6500光年の位置にある「こぎつね座OBアソシエーション」と呼ばれるフィラメ
ント構造の大質量星形成領域が発見された。

 2022年、大阪府立大学 藤田 真司 研究員、名古屋市科学館 河野 樹人 学芸員、
国立天文台野辺山宇宙電波観測所 西村 淳 特任准教授を中心とする研究グルー
プは、野辺山 45m 電波望遠鏡を用いて、天の川銀河の腕間に位置する大質量星
形成領域「こぎつね座OBアソシエーション」に対する大規模な分子ガス雲の観測
を行いました。
 観測の結果、この領域で長さ100光年にわたる巨大フィラメント状分子ガス雲
の存在を初めて明らかにしました。



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