銀河戦記/波動編 第八章 Ⅳ アンダー・ボス
第八章
Ⅳ アンダー・ボス
海賊ギルド基地ガベロット、ガスパロのいる頭領部屋。
ギルドのアンダー・ボスであるミケーレ・ナヴァーラが来訪していた。
ナヴァーラにとって、ガスパロは部下であったのだが、反乱後には地位が逆転して、ガスパロの下に置かれていた。
「トニーが決闘を申し込んできたようだな。どうするつもりだ?」
ナヴァーラが、ガスパロに話しかける。
「なぜに決闘しなくちゃならんのだ」
「そうか……。しかし、部下たちは黙っていないぞ」
意外なことを話すナヴァーラに質問するガスパロだった。
「どういうことだ?」
「管内モニターを見てみろよ」
促されてモニターの電源を入れると、管内で騒ぎが起こっていた。
管内に常駐している帝国兵に襲い掛かる海賊達。
銃を奪われ、ボコボコにされる帝国兵士。
「叛乱か?」
「外の帝国連中が殲滅されたからな、好機を逃すなと実力行使に出たんだろうな」
海賊達は、さらに基地に駐留している帝国艦にも乗り込み始めた。
やがて兵士が艦の外に引きずり出されて銃殺された。
「よおし! ガスパロも引きずり降ろそうぜ!」
モニターを指し示めながら、
「基地内のすべてのTVモニターに、ロストシップと帝国艦隊の戦闘が流されていたよ。そして決闘申し込みの通信もな」
ナヴァーラが伝える。
「それを見て反乱を起こしたのか?」
「帝国の権威が失われて、君の威厳も失われたようだな。いずれここにもやってくるぞ」
モニターを消すナヴァーラ。
「構っていられるか」
言いながら、頭領室を出るガスパロ。
向かった先は、自分の船だった。
仲間達が向かっているだろうルートから、人通りの少ない裏道を通って船着き場へと急ぐ。
途中出会った仲間を無慈悲にも撃ち倒していく。
「ガスパロがいたぞ!」
あと少しで自分の船という直前で、船着き場にいた仲間に発見されるガスパロ。
仲間がガスパロに殺到してくるが、自分の船にいた部下が加勢して近づく仲間達に対して援護射撃し始めた。
船に搭乗してすぐさま、
「発進させろ!」
と、怒鳴るガスパロ。
ゆっくりとドックベイを離岸するガスパロ船。
「前方エアロックが閉じています」
「管理棟に言え!『エアロックを開けろ、さもなくば破壊する』とな」
数分後、静かに開いてゆくエアロック。
エアロックを破壊されると、船の出入港ができなくなるので、致し方なく指示に従ったのだろう。
船が宇宙空間に出たところで、目の前にフォルミダビーレ号が待ち受けていた。
「フォルミダビーレ号から入電!」
「繋げ」
通信用パネルにアーデッジ船長が映りだされる。
『これはこれは、決闘をお受けなさったのですか?』
「馬鹿言え!」
『ほう。ですが、基地内では十数隻の船が、あなたの船を追撃すべく出航をはじめたようですよ。振り切れますかね』
その時、割り込み通信が入った。
相手は、ミケーレ・ナヴァーラだった。
『ガスパロよ。決闘を受けたまえ。さすれば勝敗に関係なく、自由を与える』
『自由だと?』
ガスパロが聞き返すと、
『身分をソルジャーに格下げはするが、基地での生活を保障する。さらには外宇宙での航行も自由とする』
アンダー・ボスとしての裁量を見せつけるナヴァーラだった。
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銀河戦記/波動編 第八章 Ⅲ 帝国艦隊
第八章
Ⅲ 帝国艦隊
アムレス号船橋。
指揮官席に座るアレックスと傍に控えて立つエダがいる。
正面スクリーンに映る海賊ギルド基地とケンタウロス帝国艦隊を見つめている。
『フォルミダビーレ号、後方ニ下ガリマシタ』
ロビーが報告する。
帝国艦隊が少しずつ前進してくるのが見えた。
「荷電粒子砲を使えば、全艦を一掃できます」
エダが進言する。
「いや、エネルギーが強力すぎて、この位置で撃てば後背の海賊基地まで損害を与えるから駄目だ」
ガスパロ一族を除けば、基地にいる海賊仲間や一般人には罪はない。
しかし帝国兵は、アンツーク星で自分達を銃殺するという暴挙に出た。
そして、かつてのトラピスト星系連合王国を滅ぼした輩である。
帝国兵に対しては慈悲を与える筋合いはない。
「短距離の小ワープは可能ですか? 敵艦隊のど真ん中にワープしたい」
エダに尋ねるアレックス。
「可能です。いきますか?」
答えるエダに、
「やってください」
と、指示するアレックス。
「極超短距離ワープ用意して」
エダがロビーに指示する。
『了解。極超短距離ワープ用意シマス。目標位置敵艦隊中心!』
「戦闘準備! 電磁レールガン用意」
さらにアレックスは、冷静に下令する。
『戦闘準備! 電磁レールガン用意シマス』
レールガンは、船体の舷側にずらりと並んでおり、その発射口蓋が開かれてゆく。
『ワープ準備完了シマシタ』
「ワープ!」
宇宙空間から消失するアムレス号。
次の瞬間、帝国艦隊の中心に姿を現す。
「レールガン発射!」
『発射シマス』
発射されるレールガン弾頭が、次々と敵艦を撃破してゆく。
帝国艦隊も、突如として懐に突入されて困惑しつつ、反撃しようにも同士討ちとなること必至なので、成す術がなかったようだ。
数十分もしないうちに、基地外にいる帝国艦隊は一掃された。
フォルミダビーレ号船橋。
「さすがロストシップだな。蟻を潰すように簡単に一捻りだったな」
感心するアーデッジ。
「同感です」
リナルディ副長も同意する。
「さてと、ガスパロに繋いでくれ」
通信パネルにガスパロが出る。
『やってくれたな。これで帝国とは完全な敵対関係になったぞ』
「それは分かっている。で、ガスパロ。一対一の船同士の決闘を申し込む」
『決闘だと!』
「そうだ。俺が勝ったら親父を解放する。俺が負けたら、この船フォルミダビーレ号を明け渡す」
『フォルミダビーレ号をか?』
「はい。三十分待って上げますので、返答よろしくお願いいたします」
通信を切るアーデッジだった。
通信を終えて、
「決闘はいいですが、このフォルミダビーレ号を賭けていいのですか?」
リナルディ副長が心配そうに言った。
「いいんだ。この船は元々親父のものだったんだ。親父を解放できるなら、くれてやってもいいさ」
「そうですか……船長がそう仰るのでしたら従います」
「問題は、奴が決闘に応じるかだな」
「どうでしょうねえ。何とか決闘に応じるしかないように仕向けるしかないですね」
「ふむ。その時は、アレックス君にも手伝ってもらうかな」
三十分が過ぎ去った。
「奴からは連絡がありません」
「仕方がないな……アレックス君に連絡してくれ」
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銀河戦記/波動編 第八章 Ⅱ ガスパロ再び
第八章
Ⅱ ガスパロ再び
再び海賊ギルドの基地に舞い戻ってきたフォルミダビーレ号とアムレス号。
フォルミダビーレ号の来訪を事前に察知していたのか、基地の周囲には数多く
のケンタウリ帝国艦隊がひしめき合っていた。
「ガスパロから通信が入っています」
と、レンツォ・ブランド通信士。
「繋いでくれ」
通信用パネルにガスパロが移りだされた。
『おまえ処刑されたんじゃないのか?』
「しぶとく生きてますよ。少年達に助けられましてね」
『少年? 子供達も?』
「ええ、生きていますよ。彼らに助けられたのです」
「そうか……。で、例のロストシップは見つかったのか?」
「見つかりましたよ。見てのとおりです」
並走する船を指し示すアーデッジだった。
その映像を見つめている風のガスパロ。
やがて、
『隣に並んでいる船は例のヤツだな?』
核心を突くガスパロ。
「そういうことだな」
否定することなく答えるアーデッジ。
しばし考えてから、
『そのロストシップをこちらに渡せば、これまでの反乱行為を無しにして、再び
仲間に戻して上げてもいいのだぞ』
交渉を出してくる。
「断る!」
断固として拒否するアーデッジ。
当然だろう少年達が命を賭して見つけた船を、軽々しく渡せるはずがないだろ
う。言ってみればロストシップは、少年達の所有とみなすことができるからだ。
『ならば、何故に舞い戻ってきた? こうなることは分かっていただろう』
「預けているものは返してもらわなくてはな」
『預けている? まさか親父のことじゃないだろうな?』
「分かっているじゃないか」
海賊ギルドの元頭領アントニノ・ジョゼフ・アッカルドは幽閉されていた。
ギルドと要塞を作り上げた人物であり、海賊達の信奉も厚かったから、処断す
ることができなかったのだ。もし処断していたら、海賊達の不平不満を抑えるこ
とは不可能だっただろう。
幹部の中には、アッカルド頭領に恩義を抱いている者も多いので、彼らが反乱
を起こさないためにも処断することができなかったのだ。
『それでどうするつもりだ!』
「一対一の決闘を申し込む。俺が勝てば頭領を解放しろ!」
『おまえが負けたら?』
「俺の船と俺の首を差し出す」
『いいのか? お前の首がどうでもいいが、その船は最新鋭だろ』
「かまわない。受けるのか? 受けないのか?」
『馬鹿か! 受けるわけねえだろ! その前に、目の前の艦隊をどうにかするん
だな』
通信が強制的に切られたかと思うと、帝国艦隊が動き出した。
「帝国艦隊が戦闘態勢に入ったようです。如何いたしますか?」
リナルディ副長が尋ねる。
「そうだな……同じ海賊船なら同士討ちだが、帝国艦隊なら気兼ねなくやれる。
戦闘配備だ!」
「了解。戦闘配備!」
リナルディーが復唱した時に通信が入った。
「アムレス号より入電あり」
と、レンツォ・ブランド通信士。
「繋いでくれ」
スクリーンにアレックスが出る。
『帝国艦隊は僕に任せてください。流れ弾が当たらないように後方に下がってお
いてください』
「分かった」
フォルミダビーレ号を後方へと移動させるアーデッジ。
ロストシップの性能を知りたいのと、戦術級におけるアレックスの才能如何を
この目で見たいとの思いがあった。
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銀河戦記/波動編 第八章 Ⅰ 海賊ギルド基地へ
第八章
Ⅰ 海賊ギルド基地へ
宇宙空間に出現するアムレス号と並走するフォルミダビーレ号。
『ワープアウト、完了シマシタ。フォルミダビーレ号モ一緒デス。追跡艦ノ反応ハ、アリマセン』
「フォルミダビーレ号に行く。待機していてくれ」
「かしこまりました」
エダが答える。
転送用端末を腰に差して、転送室に入るアレックス。
数時間後、フォルミダビーレ号の会議室に集まった仲間達。
ロストシップという手土産を持参したアレックスが議長を任されていた。
まずはロストシップに関する話題から始まった。
少年達がアンツーク星にたどり着いてから、銃殺事件を経てエダに救出されるまで。
続いて、ガスパロの裏切りでフォルミダビーレ号と乗員達が、帝国艦隊によって捕縛され、アンツーク星にも破壊命令を受けて艦隊が派遣された。
帝国艦隊の破壊攻撃を受けて、脱出用に発進したのがロストシップことアムレス号だった。誰もが探し求めていたロストシップが数百年ぶりに発見されたということだ。
少年達の解説に聞き耳を立てるアーデッジら船員達。
その後に続いて、フォルミダビーレ号と乗員に起こった出来事を話すアーデッジ。
「フォルミダビーレ号の乗員を代表して、命を救ってくれたことを感謝するよ」
「それでは、今後の方針について意見のある方はいらっしゃいますか?」
議事進行させるアレックス。
「いいかな」
アーデッジ船長が手を挙げる。
「どうぞ」
「個人的な恨みかも知れないが、俺はガスパロの野郎が許せない、一泡吹かせてやりたい」
アーデッジ船長が言うと、
「俺も復讐したいぜ」
「生かしてはおかない!」
「賛成します」
などと、口々に賛同する仲間達。
「分かりました。ギルド基地へ向かいましょう。到着までに作戦を考えます」
「いいだろう。みんな配置に着いてくれ! アッカルド頭領も救出するぞ」
「了解!」
船長の指示で一斉に会議室を飛び出して、各自それぞれの持ち場へと駆け出した。
一人残されたアレックスだったが、
「エダ、転送してくれ」
『かしこまりました』
アムレス号へと転送されていった。
フォルミダビーレ号の船橋。
「やはりこの席は落ち着くな」
と言いながら、船長席の肘掛けを撫でまわしていた。
それを見てクスクスと微笑むルイーザ。
「こほん」
と軽く咳払いしてから、
「これよりギルド基地に向かう。総員、出航準備!」
下令する。
「出航準備!」
リナルディ副長が復唱する。
「自動航行システムを、ロストシップに同調してくれ」
「了解しました。ロストシップに同調させます」
マイケル・オヴェットが応える。
一方アムレス号では、
『フォルミダビーレ号ノ自動航行システム同調完了シマシタ』
「行き先を、国際中立地帯の海賊ギルド基地に設定」
『海賊ギルド基地ニ設定シマシタ』
「よろしい、発進せよ!」
『発進シマス』
並んで航行していたアムレス号とフォルミダビーレ号。
速度を上げたかと思うと同時にワープして消えた。
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