銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅳ 対峙

第三章


Ⅳ 対峙


 一方公国艦隊もX地点へと近づいていた。
 旗艦戦艦デヴォンシャー艦橋。
「まもなく会敵予想地点です」
 航海長のハリスン・メイクピース中佐が報告する。
「うむ。付近の星図を出してくれ」
「了解しました」
 正面スクリーンに星図が映し出される。
 恒星の等級に応じた恒星のうち、飛びぬけて明るい星があった。
「あの明るい星は?」
 アレックスが指さす恒星について航海長が答える。
「中性子星マクデブルクです。二つの惑星が周回しています」
「惑星の影に敵艦隊が隠れることは可能か?」
「惑星の影に沿って進行すれば、γ線を直接浴びなくて済みますから、可能といえば可能です」
 中性子星は、太陽の8倍以上の質量を持つ星が超新星爆発した残骸の中心核である。その密度は角砂糖一個分が三億から十億トンとなるほどの超高密度となっている。高速回転しながらγ線などを放出する。
「ならこちらも、もう一つの惑星に伏兵を潜ませるとするか。丁度こちら側にあるからな」
「では、千隻ほどの部隊を回しましょう。ウォーズリー少将が良いでしょう」
 艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が提案した。
「そうしてくれ」
「かしこまりました」
 本隊から離脱していくウォーズリー少将の第二部隊。

 
 第二部隊旗艦、戦艦ロイヤル・サブリンの艦橋。
「敵の方は、とっくに惑星の影に到達してますよね」
 副官のグレーム・アーモンド少佐が発言する。
「ああ、たぶんな。だが、別に到達してなくても良いんだ。奴らが出てきた時に、出張っていけばいいんだ」
 司令官ウォーズリー少将が答える。
「なるほど」
 納得する副官だった。
「旗艦より入電! 我、戦闘に入れり!」
 通信士のジュリアナ・ワイズ少佐が報告した。
「来たか! 戦闘配備だ」
「戦闘配備!」
 艦内に警報が鳴り響き、乗員が駆け回っている。
 数分後。
「戦闘配備完了しました」
「よし。後は入電を待つ」
 分艦隊同士、それぞれ惑星の影に入っているので、動きが分からない。
 相手側が攻撃を開始すれば、本隊から入電が入ることになっている。


 本隊旗艦、戦艦デヴォンシャー、それを守るように二万四千隻が取り囲んでいる。
 デヴォンシャー艦橋。
「前方に敵艦隊!」
 電探手のグレゴリー・クロンプトン少佐が叫ぶ。
「戦力分析!」
「戦艦千隻、巡航艦二千隻、残り駆逐艦千隻です」
 クロンプトン電探手が答える。
「敵艦隊の総数が、情報よりも千隻少ないな」
「やはり惑星の影に千隻の分艦隊を隠しているようですね」
「惑星に動きがあれば知らせてくれ」
「逃しはしませんよ。任せてください」
 クロンプトンが胸を叩いた。
「任せたよ」
 電探手の肩を叩いて鼓舞した。
「戦闘配備!」
 下令するアレックス。
「戦闘配備!」
 副官が復唱する。

 宇宙空間、双方の艦隊が対峙している。
 接近しつつある両者。

「攻撃開始!」
「攻撃開始!」

 両艦隊の火ぶたが切られた。

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銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅲ 分艦隊

第三章


Ⅲ 分艦隊


 惑星ケムニッツの軌道上で分艦隊の編成を行っている。
 分艦隊旗艦クローンプリンツ艦橋。
「中佐、編成が終わりました」
 副官のアルフォンス・エーベルヴァイン少尉が報告する。
「分かった。ドゥーゼ中将を呼び出してくれ」
 通信士が旗艦ヴェルテンベルクの司令官に繋ぐ。
『おお、準備は済んだのか?』
「はい。いつでも出発できます」
『では、すぐさま出発してくれ』
「かしこまりました。中将には作戦通り……」
『分かっておるわ』
「それではよろしくお願いいたします」
 通信が途切れた。
「よし行くぞ! 微速前進!」
「全艦、微速前進!」
 エーベルヴァイン少尉が復唱する。
 ゆっくりと動き出す分艦隊。
 それと同時に、本隊も前進を始めた。

 艦隊旗艦ヴェルテンベルク艦橋内。
 正面スクリーンには、別れてゆく分艦隊が映し出されていた。
「よおし、俺達も行くぞ! X地点に予定時間通り遅れるな」
 艦隊司令官ヘンドリック・ドゥーゼ中将が指示する。
「了解。全艦、微速前進! 目標X地点へ」
 副官ヴィクトール・ラング少佐が復唱する。
 本隊も動き出した。
「よかったんですかね」
 副官が呟く。
「何がだ?」
「ただでさえ、艦隊数が少ないのに分艦隊を作るなんて」
「だったら作戦会議の時に、誰も意見具申しなかったんだ?」
「そ、それは……」
「約三倍強の艦隊数に怯えてるだけで、口をつむぐだけとは情けない。中佐は熟慮して意見した、それだけでも信用に足ると思わんか?」
「はあ……」
「せっかく意見具申してくれた中佐のためにも、作戦通りに行動する。いけないか?」
「いえ。ごもっともな作戦でした」


 中性子星マクデブルク、惑星フェッデリンゲンに到着した分艦隊。
「到着しました。全艦異常なし」
 副官のアルフォンス・エーベルヴァイン少尉が報告する。
 千隻の艦艇が、中性子星からのγ線を浴びないように、惑星の影の部分に隠れていた。
「機関停止! 但しいつでも始動できるように予熱はしておけ」
「了解!」
 エンジンを停止したのは、敵に察知されることを懸念したのである。
「お聞きしてもよろしいですか?」
 副官が尋ねる。
「なんだ」
「敵の進撃ルートをどうやって割り出したのですか?」
「簡単だよ。最短ルートだからだよ」
「それだけですか?」
「情報によると、奴らは補給艦を同行させていない。寄り道している余裕はない。進撃を阻止されて撤退ということになれば、少なくとも帰り道の燃料は残しておく必要があるからな」
「なるほど」
 頷く副官。
「それにしても本隊は予定通りにX地点に付きましたかね」
「分からんが、信じて行動するしかない」
「無線封鎖は痛いですね。味方の行動が分かりませんから」
 本隊はともかく、分艦隊がいることを知られないように隠密行動をする以上、位置を知られないよう無線封鎖するのは当然だ。
「敵艦隊がX地点到達まで約三十二分」
 航海長のルーペルト・シュリューター大尉が伝える。
「総員、戦闘配備につけ!」



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銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅱ 惑星ケムニッツ

第三章


Ⅱ 惑星ケムニッツ


 ヴィースバーデン恒星系惑星ケムニッツ。
 取り囲むようにケンタウロス帝国艦隊が展開している。
 艦隊旗艦ヴェルテンベルク艦橋。
 艦隊司令官ヘンドリック・ドゥーゼ中将が苛立っている。
「援軍の艦隊がここへ到達するのは何時間後だ?」
「八時間後と思われます」
 副官のヴィクトール・ラング少佐が答える。
「遅い! 敵艦隊は六時間後にやってくるのだぞ」
「時間差二時間です」
「現有八千隻で、敵は二万五千隻。約三倍の敵艦隊に勝ち目はない!」
「いかがなされますか?」
 艦隊参謀のマンフレート・シュタイン中佐が尋ねる。
「馬鹿もん! それを考えるのが参謀の役目だろうが!」
「申し訳ありません!」
 恐縮する参謀だった。
「誰か良い作戦はないか?」
 見回す司令官だったが、誰も上げなかった。
「どいつもこいつも役に立たないのか!」
 いきり立つ司令官。
 誰も声を上げない、沈黙の時間が訪れた。
「自分に任せていただけますか?」
 一人の士官が名乗り出た。
「君は? 新任の……」
「ヴァルター・シュパールヴァッサー中佐です」
 彼は、かつて惑星パウサニアースの警備艦隊の指揮官だった男だ。
 惑星リモージュの国際宇宙ステーションからワープゲートを利用する民間船舶の乗客の検札を行っていた。
 その後、異動で惑星ケムニッツ配属となっていた。
「どんな作戦だ? 言ってみろ」
 疑心暗鬼になりながらも尋ねるドゥーゼ中将。
「端末お借りします」
 そう言って、端末を操作するシュバールヴァッサー中佐。
 正面スクリーンに、惑星バウサニアースから惑星ケムニッツに至る星図が映し出された。
「敵艦隊の予想進撃ルートを表示します」
 バウサニアースから赤いマークが動き出し、ケムニッツ付近には帝国艦隊を示す青いマークが点滅している。
「赤いマークが公国艦隊の予想進撃ルートです」
 赤いマークはゆっくりとケムニッツに向かって動いている。
「二万五千隻の公国艦隊です。こちらは現況八千隻、まともに戦っては勝てません」
「それくらいは誰にでも分かるぞ」
 誰かが茶々を入れた。
「今回の作戦は、敵艦隊の進撃速度を遅らせることにあります。そして援軍の艦隊が到着するのを間に合わせるのです」
「できるのか?」
「他に案があるとでも?」
 話の腰を折られて、ムッとした表情を見せる中佐。
「分かった。続けてくれ」
「続けます。まず艦隊から千隻ほどの高速艦艇からなる分艦隊を作ります」
「分艦隊?」
 只でさえ、敵よりも艦艇の数が少ないのに、分けてどうするのだ?
 口には出さないが、訝し気に話を聞いている。
「敵艦隊の進撃ルートのほぼ中間点に中性子星マクデブルクがあり、惑星フェッデリンゲンが周回しています。分艦隊はこの惑星の影に隠れます」
「大丈夫なのか? 中性子星と言えば強力なガンマ線を出すんじゃなかったか?」
「フェッデリンゲンの影に隠れますので、直接の影響はありません」
「分かった。その分艦隊の指揮は君がやりたまえ」
「自分が……ですか?」
「言い出しっぺがやるのが常識だろ」
「分かりました。分艦隊の指揮を執ります」
 こうしてシュバールヴァッサー中佐は、分艦隊の指揮を執ることになったのだっ

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銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅰ 帝国内部へ

第三章


Ⅰ 帝国内部へ


 五年ほど経過して、惑星パウサニアースに駐留する公国軍艦艇の数が三万隻に達した。公国内にある造船所において、次々と艦艇の増産が行われこの惑星へと送り込まれていた。
 アレックスは、この惑星の内政改革を行っていた。軍政から民政への移行として、議会を復興して議員選挙を行い、政治犯を釈放した。市民に対しては税率を下げ、殉職した軍人の家族への遺族年金も厚くした。それらが効して、惑星の治政も落ち着いていた。

 また本星アルデラーンも五万隻が配備されている。ロベスピエール侯爵家には地位を奪われたという恨みがあるので、いつ謀反を起こすかもしれないとの疑いがあるために、軍を外す訳にはいかない。その守備艦隊を治めるのは、アレックスの弟であるジェラルド侯爵である。
 本星の治政の担当は、三男弟のバーナード伯爵となっている。

 ケンタウロス帝国内部への進撃準備が完了していた。
 五千隻を残して、二万五千隻の遠征軍が編成されていた。
 アレックスが全艦に向けて訓示を垂れていた。
「ついに亡き先王の復讐をなす時がきた。これまで銀河の安寧を乱して侵略を続けていた奴らに鉄槌を下すのだ」
 アレックスの言葉を受けて、誰かが叫んだ。
「hip hip hooray!(万歳!)Long live the King!(王様万歳!」
 すると艦内に万歳三唱が繰り広げられた。
 やがて静まった時に、アレックスが下令する。
「全艦、帝国へ向けて進撃せよ!」
「全艦、微速前進! 進路、恒星系ヴィースバーデン!」
 艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が復唱する。
「微速前進!」
「進路、恒星系ヴィースバーデン!」
 静かに動き出す二万五千隻の艦船。
 これまで侵略に怯えてきたが、逆進行する時が来たのだ。
 かつて滅ぼされた我らが故郷の地、旧トリスタニア共和国をわが手に取り戻す時。


 ヴィースバーデンは、最寄りの帝国の軍事基地である惑星ケムニッツのある恒星系である。赤色矮星であり質量は太陽の12%程度、二つの惑星が公転しており、それぞれ十日と三十日であるが、恒星に近すぎるために潮汐固定されている。潮汐加熱で至る場所で火山が噴火しているが、噴火蒸気によって大気が形成され、ハビタブルゾーン範囲内であることから内側の惑星が居住可能となっている。帝国はここに軍事基地を建設して、惑星パウサニアースへの中継基地としている。
 惑星パウサニアースが侵略されたことを受けて、四方八方から艦艇が集結していた。
 惑星ケムニッツは、帝国中枢部へ向かうための通り道にある。次の目標がこの惑星であることが明白だからだ。迂回して先に進めば、挟み撃ちとなることは必定。
 さらに公国軍が進撃を開始したことから、ワープゲートのあるリューベック恒星系惑星グロベンラーデから援軍が向かってくる予定となっていた。
 援軍が到着するのが早いか、公国軍が到着するのが早いか。
 時間との競争となっていた。



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銀河戦記/波動編 第三部 第二章 Ⅳ ワープゲート

第二章


Ⅳ ワープゲート


 惑星パウサニアースの各家庭のテレビや街頭テレビ、ありとあらゆる映像機器がアレックスの政見放送を流していた。
『惑星パウサニアースの住民に告げる。本日をもって、この惑星は我々アルデラーン公国の支配下に入った。とは言っても、軍部関連を除いて一般住民には今まで通りである』
 市街地の大通りのビルの壁面に据えられた大型ビジョンを見つめる通行人達。軍人政治を国是として、軍人か軍属そしてその家族がほとんどであり、後は子供と引退した老人である。
 一般住民は今まで通りと聞いて、三々五々解散してゆく。
 惑星バウサニアースは、国際中立地帯に最も近い惑星でありワープゲートもある重要基地でもある。がしかし、公国への侵略行動を起こさない平常時には、ただの辺境地となる。一般住民にしては、誰が施政者になろうとも変わりはしないだろう、という思いが強くて関心も薄いようだ。
 軍部側にしても、二千隻を一瞬で失ったというトラウマが尾を引いており、公国への進出に二の足を踏んでいたのだ。
 その間にも公国側は、着々と軍備増強を進めてきたのだった。


 六時間後、ワープゲートによる最初のワープ実験が行われた。
 総参謀長室のモニターで、その様子を見つめるアレックス。
「まもなく始まります」
 艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が伝える。
「ウォーズリー准将より入電しました」
「繋いでくれ」
『こちらワープゲート、一回目のワープ試験まで五分です』
「分かった。上手くやってくれ」
「かしこまりました」
 ワープの時間となる。
『ワープ開始、一分前』
 通信で秒読みを伝えてくる。
 ワープゲートが輝きだした。
 ゲートに莫大なエネルギーが入力されているからだ。
『十秒前……五、四、三、二、一、ワープ!』
 ややあって、ワープゲート前面の空間が歪む。
 そして十隻の無人艦が姿を現した。
『成功しました。点検整備の後、二回目のワープに入ります』
 准将の声が弾んでいた。
 ワープゲートは、艦艇をより多く、かつ素早く送り込むことができる。
 敵国が艦隊を派遣してきたら、いつでも好きなだけの艦艇を送り込んで迎撃できることになる。
「よろしく頼む」
『はっ! お任せください』
 通信が途切れた。

 幹部士官を集めて会議が行われた。
 まず最初の議題が惑星リモージュについてだった。
 リモージュには国際宇宙ステーションがあり、三か国のハブ空港となっており、国際中立地帯の延長上にあった。
「もはや帝国とは戦争状態、自由な往来を許していたら、スパイによって重要機密も漏れる可能性があります」
「そうです。ステーションは我が国の占有とするべきです」
「トリスタニア共和国とは友好通商条約が締結されています。施設の利用を拒否することはできません」
「それは帝国側のみ制限すればよいだろう」
 協議一時間、帝国側のみ航路閉鎖ということで決着した。



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