銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅹ 挟み撃ち

第三章


Ⅹ 挟み撃ち


 公国艦隊旗艦デヴォンシャーの艦橋。
「状況は?」
 公王アレックスが尋ねる。
「敵艦隊総数八千隻に減数、こちらは二万二千隻です」
 司令官ランドルフ・タスカー大将が答える。
「だいぶ削れたな」
「まもなくオルコック少将の艦隊が配置につきます」
 オルコック少将の艦隊は、帝国レーダー手が捉えた、動きがあるとした後方の艦隊のことだった。
 デイミアン・オルコック少将は、惑星サンジェルマン士官学校出自の士官である。先王坐乗のアムレス号に乗りこんで戦っていた。
 惑星ケムニッツに向かうと見せかけて、帝国左舷艦隊の残骸空域を回り道して、帝国右舷艦隊の後方に回り込んでいた。
「配置についたら投降を呼びかけようか」
「御意のままに」

 三十分が経過した。
 デイミアン・オルコック少将の艦隊が、帝国艦隊の背後に取りついた。
「デヴォンシャーに連絡。作戦通り完遂!」
「了解」
 通信士ボビー・ハイアット少佐が応える。
 ややあって、
「国際通信回線を開いて、戦闘態勢のままで待機せよ」
 返電を答えた
「挟み撃ちでこちらが有利なはずですが、なぜ待機と?」
 電探手のライオネル・エムズリー先任少佐が不思議がる。
 リストレーションという艦名が、オルコック少将の坐乗艦である。
 機関長アルフィー・キャメロン、操舵手ジャレッド・モールディング、電探手ライオネル・エムズリー、魚雷長のボブ・ゴドウィン、いずれも士官学校出身の士官達が揃っており、全員少佐の階級に昇進している。
 先王の肝いりで、いつも一緒に異動し仲良く昇進してきた。
「国際通信が入りました」
「スクリーンに映せ! 全艦にもそのまま流せ」
「映します。全艦に流します」
 正面にあるスクリーンに公王アレックスの映像が現れた。
『私は、アルデラーン公国のアレクサンダー王である。帝国艦隊の司令官に告げる。貴官の艦隊はすでに前後を挟み撃ちされている。降伏を勧告する。さもなくば全滅するだろう。私は断言する、ケンタウロス帝国を滅ぼし、銀河を統一すると』

 通信を聞き、公王の本気に身震いする乗員達。
「銀河統一だとよ」
「俺達の王様はやる気だね」
「そもそもが王様自ら最前線に出て戦闘指揮しているんだから」
「最後までお付き合いしますよ」
 乗員達は、公王にたいして絶大なる信頼を寄せているようだった。



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銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅸ 決着

第三章


Ⅸ 決着


 帝国遠征艦隊の右翼に位置していた旗艦アルミニウス。
「左翼の艦隊はどうなっているか?」
 司令官ヴァルター・プラール中将が怒鳴った。
「無線が交錯して、はっきりしません」
「馬鹿野郎! 損害の艦艇数は? 生き残っている艦は?」
 中将自身も支離滅裂であった。
 副官のダニエル・ボンホフ中佐が意見具申した。
「司令、このままではこちら側もやられてしまいます。手を打ちませんと」
「手を打つ? どうすれば」
「我々も左舷艦隊を迂回するように、左回りで敵艦隊の正面に出て戦うのです」
「分かった。そうしよう」
「かしこまりました」
 アルミニウス艦隊が動き出した。
 右舷艦隊は、既にほぼ壊滅状態であり、戦闘能力は消えうせていた。
 味方の右舷艦隊を左に見ながら敵公国艦隊の正面に出ていく。
 だが、艦隊数は二万三千隻対一万四千隻と、圧倒的に相手側の方が多い。
 双方が近づくように進行しているので、遭遇は早かった。
「敵艦隊です」
 公国艦隊は左翼艦隊への攻撃のためにそちらの方を向いていて、こちらは側面攻撃を仕掛けられる? はずだった。がしかし、公国艦隊は回頭してこちら側を向いていた。こちらの動きを察知していたようだ。
「攻撃開始!」
 撃ち合いが始まった。

 戦力差において公国艦隊の方が有利であった。
 次第に艦艇数を削り取られる状況が続く。
「敵艦隊の後方に動きが!」
 レーダー手のオットマー・ゲーベルス中尉が報告する。
「動きだと?」
「どうやら、敵艦隊後方の部隊が惑星ケムニッツに向かったようです」
「まずいな。ケムニッツは無防備だ」
「しかし今の状況では、こちらが分艦隊を差し向ける余裕がありません」
「惑星には連絡だけを入れておけ」


 惑星ケムニッツ。
 アルミニウス艦隊からの通信で、非常警戒態勢に入っていた。
「敵艦隊がくるぞ!」
「まさか三万隻の艦艇が全滅寸前とは」
「対空ミサイルを解放しろ!」
「海上艦にも迎撃命令を出そう」
「空軍もだ!」
 大慌てで迎撃の準備をする惑星の地上基地であった。



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銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅷ 中央突破

第三章


Ⅷ 中央突破


 帝国艦隊の援軍が到着して、状況は混とんとしてきた。
 公国艦隊旗艦、戦艦デヴォンシャー艦橋。
「やっと現れたか」
 公王アレックスが笑みを浮かばせて呟いた。
「嬉しそうですね」
 艦隊参謀長のタスカー大将が尋ねる。
「まとめて敵艦隊を潰す好機だからな」
「なるほど、そういうことですか」
 タスカーは気づいていた。
 八千隻の艦隊など、いくら後退していようとも、本気で掛かれば撃滅できたはず。
 つまり双方の艦隊が帝国の援軍到着を待っていたということだ。
「敵艦隊の戦力は?」
 公王アレックスが尋ねる。
「およそ三万隻かと」
 レーダー手のグレゴリー・クロンプトン少佐が答える。
「よく搔き集めたな。相手に不足はない」
 直近惑星グロベンラーデにはワープゲートがあるので、帝国全域から集めることができる。とは行っても全艦隊を派遣することは不可能である。艦隊を動かすには金が掛かる、しかも中継基地とも言うべき惑星ケムニッツに大軍を送り込むことは無意味であろう。ワープゲートのある惑星ならともかくだ。
 しかしグロベンラーデも占領させる訳にはいかないから、援軍の第二陣が派遣されるのは必定だろう。
「いかがなされますか?」
 タスカー大将が尋ねる。
「中央突破で行こう。装甲の厚い戦艦で外側を固める」
「かしこまりました」
 タスカー大将が応えて、
「戦艦で囲むようにして紡錘陣形を取れ!」
 全艦に指令を伝えた。
 艦が動き出して、紡錘陣形へと隊列を変えてゆく。
「体制整いました」
 タスカー大将が報告する。
「よし、全艦突撃だ! 中央突破を図る」
「全艦突撃!」
 タスカー大将の復唱を受けて動き出す公国艦隊。
 帝国艦隊の中央に攻撃を集中させて穴を開けてゆく。
 拍子抜けするような勢いで、ザクザクと中央突破が進んでゆく。
「敵さん、なんだか脆いですね」
「そりゃそうだよ。寄せ集めだからな」
「なるほど。中央突破作戦を選んだのもそのためなんですね」
 援軍の帝国艦隊はあちこちからの寄せ集めである。なので各部隊の連携が悪い。作戦指揮に問題がありすぎて指揮系統がバラバラである。
 ただ数が多いだけの統一の取れていない艦隊など、恐れるに足りない。
「まもなく中央突破が完了します」
「よし、右方向に展開して側面攻撃を仕掛ける。包囲戦だ」
 これまでの戦闘で、右側の艦隊の戦闘能力が低いことが分かっている。弱い方から潰すのは理にかなった方法である。
 右側の艦艇数一万五千隻に対して、二万四千隻で戦うことで圧倒的有利となるわけだ。
 包囲戦となったことで、ウォーズリー少将の分艦隊と合流となった。
「ウォーズリー少将、よく頑張ってくれた」
『いえ、お役に立てて良かったです』
 分艦隊ともども激烈な攻撃が開始される。
 一万五千隻の艦隊がみるみるうちに数を減らしていく。

 左側にあった一万五千隻の艦隊は、味方が邪魔して攻撃できないでいた。
 やがて右側の艦隊が崩壊するにつけて、左側の艦隊にも攻撃が当たってくる。



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銀河戦記/波動編 第三部 第三章 Ⅶ 援軍来る!

第三章


Ⅶ 援軍来る!


 惑星ケムニッツに近づく漆黒の艦隊、その数二万八千隻。
 旗艦戦艦アルミニウスの艦橋。
「惑星ケムニッツです」
 副官のダニエル・ボンホフ中佐が、正面スクリーンに映し出されている惑星を指さして答えた。
「味方は出払っているのか?」
 司令官ヴァルター・プラール中将が尋ねる
「時間稼ぎのために出撃するとの連絡がありました」
「ああ、そうだったな。早速出迎えに行こうか。今の今、必死で戦っているだろうからな」
「そうですね。艦隊を先に進めます」
 惑星ケムニッツを通過して、戦場へと急ぐ艦隊だった。


 艦隊旗艦ヴェルテンベルク艦橋。
「今、何隻残っているか?」
 艦隊司令官ヘンドリック・ドゥーゼ中将が尋ねる。
「千隻を切りました」
 副官ヴィクトール・ラング少佐が答える。
「よく頑張ってくれている。全滅するかも知れないのに、一人一艦たりとも逃げ出さずにいてくれる」
 しかし現状は、旗艦ですら満身創痍で最悪の状態である。
「後方に艦影あり!」
 レーダー手のスヴェン・レッチュ少佐が叫んだ。
「後方? 援軍か?」
 と言いつつ通信士の方を見るドゥーゼ中将。
「お待ちください」
 通信士のカールハインツ・グラウプナー少佐が、機器を操作して援軍に繋げようと試みている。
「こちらヴェルテンベルク、応答してください」
 しばらく沈黙があった。
『こちらアルミニウス、ヴェルテンベルク応答せよ』
 相手から返答があった。
「司令! 繋がりました。アルミニウスです」
「アルミニウスということは、プラール中将だな。モニターに繋いで、プラール中将をだしてくれ」
「了解」
 数分後、通信用モニターにプラール中将が呼び出された。

「ワット待っていたよ」
『ヘンリー、待たせたな。無事で良かった』
 二人の中将は同期の親友だった。ワットはヴァルターの愛称、ヘンリーはヘンドリックの愛称だ。
 惑星ケムニッツが侵略されると聞いて、遠征軍司令官に立候補したのがプラールだった。

 やがて合流する両艦隊。
『君達は後方に下がって、修繕にかかってくれ』
「分かった。助かるよ」
 後方に下がるヴェルテンベルク艦隊。
 代わって前面に出て行ったのが、アルミニウス艦隊である。
「今度はこちらが攻勢に出る番だな。二万八千隻vs二万四千隻」
 両艦隊が対峙したが、その数は若干帝国軍優勢だった。
「全艦戦闘配備完了しました」
「よおし、攻撃開始だ!」
 放たれる強力なビームが、両艦隊の間を行き交う。
 そのエネルギー量は、中性子星から放たれるγ線の到達量にも匹敵する。

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