銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅴ アムレス号の最期
第一章
Ⅴ アムレス号の最期
惑星サンジェルマンを有する恒星アバディーン星系の一角。
空間が歪んでアムレス号が姿を現した。
「どうやら間に合ったようです」
エダが報告する。
「うん。どうせすぐに奴らも現れる、戦闘配備だ」
アムレス号の性能は、帝国艦隊よりも一足早くたどり着いたのだ。
『了解シマシタ。戦闘配備シマス』
アムレス号には現在、アレックスとエダしか乗っていない。
アルデラーン公国を再興して以降、富国強兵を目指しつつ、アムレス号に乗っていた者たちも、公国艦隊へとそれぞれ配置換えとなっていた。
コンピューター制御による全自動運転ができるので、他の乗員がいなくても大丈夫なのだ。
『前方ノ空間ニ重力異常! 無数ノ物体ガ、ワープアウトシテキマス』
ロビーが警告を発する。
「来たな」
前方の空間に次々と出現するケンタウロス帝国艦隊二千隻。
到着と同時に散開して、アムレス号を遠巻きに包むように進撃開始した。
紡錘陣形を取っていれば、アムレス号の荷電粒子砲一発で殲滅できるだろうが、散開する相手ではあまり効果がない。
前方少数と対峙している間に、回り込んだ艦隊が直接惑星サンジェルマンに攻め込むだろう。
「なるほど、やはりそう来ましたか」
アレックスの脳裏には、あらゆる事態を想定したシミュレーションがあった。
その中の一つを選びだした。
アムレス号の周囲にいるケンタウロス帝国艦隊二千隻を撃ち負かすにはこれしかなかった。
アレックスはエダを見つめて言った。
「エダ、縮退炉を解放・暴走させてもいいか?」
それはつまりアムレス号を自爆させるということだった。
驚くエダだったが、アムレス号の管理者である。
ゆえに艦の自爆の許可願いをだしたのだ。
しばし考え込むエダだったが、静かに答えた。
「かまいません。アレックス様の思うがままにどうぞ」
「ありがとう」
謝意を述べ、一息ついてから、
「縮退炉を解放してくれ」
「かしこまりました」
『縮退炉ヲ、解放シマス』
微かな震動と音を発生していた縮退炉エンジンが暴走を始めて、艦内が激しく震動しはじめた。
「例の通信カプセルを惑星サンジェルマンに向けて射出してくれ」
「かしこまりました」
例の物というものを、すぐに理解して作業に取り掛かるエダ。
カプセルは万が一のことが起きた時のために、事前に用意しておいたものである。
アムレス号から射出され、亜光速に加速する通信カプセル、帝国艦隊を追い越してサンジェルマンへと一直線に突き進む。
「射出成功しました。帝国艦隊の包囲網を突破しました」
「うん。これで公国は大丈夫だな」
「そうでございますね」
「エダ、ロビー、これまでありがとう」
感謝の意を表すアレックス。
「いいえ、どういたしまして」
『コチラコソ、アリガトウゴザイマシタ』
エダもロビーも人間のような感情がなく、死という概念もなかった。
そして帝国艦隊を巻き込んで大爆発を起こした。
まるで超新星爆発のような破壊力だった。

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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅳ 急げ!

第一章
Ⅳ 急げ!
アムレス号は、通常の戦艦の四倍以上の巨大さがあるので、基地内のドッグに入港できずに周辺に漂泊していた。
艦橋の転送システムから姿を現すアレックス。
「状況はどうなっている?」
緊急通信で至急帰還という、滅多に言わないエダの口調からも、すでに事態急迫しているのだろうと察知していたアレックスだった。
「帝国艦隊が惑星サンジェルマンに約四光年のところに迫っています」
「つまりワープ一回で、サンジェルマンに到達か」
この時代、戦艦が一回でワープできる距離は四から五光年となっている。一回ワープする毎に、ワープ装置へのエネルギー充填と点検を必要としていた。
「次のワープは四十分後と思われます」
「ゆっくりしていられないな。すぐにワープで追い越して、待ち受けるぞ」
「かしこまりました」
『スデニ、ワープ準備ハ完了シテオリマス』
ロビーが応える。
「ワープだ!」
『ワカリマシタ』
次の瞬間、姿を消すアムレス号。
アムレス号のワープ距離は一回につき最大一万光年、連続ワープも可能とされている。無尽蔵なエネルギーを生み出す縮退炉と、莫大なエネルギーを充填でき長距離を跳躍できる強靭なワープエンジンのお陰である。
海賊基地内通路で宇宙港へと急いでいるエドワード。
窓からは待機している二百隻の艦隊が浮かんでいるのが見える。
今から艦隊を動かして惑星サンジェルマンに向かっても、間に合わないのは目に見えているが、行かずにはおれないのだった。
十数分後、旗艦ロイヤル・サブリンに舞い戻ったエドワード。
「発進準備完了しています」
ウォーズリー少将が報告する。
「すぐに発進させてくれ!」
指揮官席に座ると同時に下令する。
「了解。全艦、微速前進!」
ゆっくりと動き出す旗艦艦隊。
アムレス号と違って、普通の戦艦はすぐにはワープできない。
エンジンを動かして発電して、ワープ装置にエネルギーを充填してからでないとワープできない。
「あの時、見かけた哨戒機を追わせるべきだったな」
反省するエドワード。
「おそらく、我が艦隊が海賊基地へと向かうのを監視していたのでしょう」
「そうかもしれない。それを確認して進撃を開始したのだな」
今となっては後の祭りと、後悔するエドワードだった。
「全艦、ワープ準備完了しました」
およそ三十分後、ワープ装置への電力充填が済んだ。
「よし、全艦ワープだ!」
「全艦、ワープせよ!」
アムレス号に続いてワープする旗艦艦隊だった。
アッカルド頭領の部屋にアーデッジ船長が訪れている。
「二人とも行ってしまいましたね」
船長が呟くように言うと、
「間に合わないだろうけどな」
と頭領がため息をつく。
「アレックス君が何とかしてくれますよ。伝説のロストシップでね」
「そうかな」
「たとえ二千隻の相手であっても足止めくらいはできるでしょう。そして追いついたエドワード君と連携すれば……」
「ふむ、二人の活躍を期待して祈ろうじゃないか」
「そうですね」
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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅲ 旧友との再会
第一章

Ⅲ 旧友との再会
海賊基地の頭領室。
アントニノ・ジョゼフ・アッカルドの前に立つエドワードがいる。
「久しぶりだな。父上はご健在かな」
親し気に尋ねるアッカルド頭領。
「はい。至極元気で活躍しております」
「うむ、それは良かった」
仲良く談話している二人が初めて出会ったのは、父アレックス公王がエドワードを連れて基地を表敬訪問した時に紹介された時だった。以来、何度となく訪れるうちに仲良くなり、孫のように可愛がってくれるようになっていった。
「ところで公国は統一できたが、公王は他国を支配下に入れたいとは思っていないのかな?」
アッカルド頭領が禁断ともべき言葉を吐いた。
「そうですね。ケンタウロス帝国に対抗するために軍備拡張と増強を図ってきましたから、片隅には思っていると思いますよ」
エドワードは素直に答える。
「君はどう思っているのかね?」
「そうですね。我が国を侵略してくる国がある以上、排除しなければならないのは必定でしょう」
「しかし、ここ最近はおとなしくしているようだが?」
「父上が『伝説のロストシップ』と呼ばれていたアムレス号を発掘し、強力な軍備拡張を始めたから恐れているのでしょう。でも負けじと着々と軍備増強を図っているようです。いずれ戦火を交えることは避けられないでしょう」
その頃、海賊基地に遅れて到着したアレックスは、アントニーノ・アッデージ船長とかつての仲間達と酒場で酌み交わしていた。
フィオレンツォ・リナルディ副長他のフォルミダビーレ号の乗組員達、そしてエヴァン・ケイン以下の旧友達の顔ぶれが揃っていた。
「まずは久しぶりの再会に乾杯だ!」
アーデッジ船長の祝杯の合図で杯を交わす一同。
テーブルの上には豪勢な料理が並んでいる。
相変わらず食いしん坊なジミー・フェネリーががぶついている。
「思えば出世したものだな。孤児院育ちの坊やが、今や一国の王だよ」
当時の少年達のお守り役だったモレノ・ジョルダーノ甲板長がしみじみといった口調で懐かしむ。
思い出花咲く団欒で、時間が過ぎるのも早かった。
やがてお開きという時、アレックスの端末が鳴った。
「どうした?」
端末を取って通信するアレックス。
『至急、アムレス号にお戻りください』
エダの声には緊急性を促す口調だった。
「分かった。転送してくれ」
理由も聞かずに命令するアレックス。
『かしこまりました』
次の瞬間、転送システムでもある携帯端末が、アレックスを瞬間移動させた。
エドワードの元にも緊急報告が届いていた。
戦艦ロイヤル・サブリンのマーティン・ウォーズリー少将からだった。
『惑星サンジェルマンに向かって、二千隻の帝国艦隊が進軍しています』
「今すぐ戻る。全艦、発進準備させておいてくれ」
『了解』
通信を終えて、アッカルド頭領に別れを述べるエドワード。
「短い時間でしたけど有意義な時間でした」
「どうやら、ここを襲った奴らは囮(おとり)だったようだな」
「そのようですね。我が艦隊をこちらにくぎ付けにしておいて、その間に密かにサンジェルマンへ本隊が向かったということでしょう」
「うむ。気をつけてな」
別れる二人だった。
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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅱ 会敵
第一章
Ⅱ 会敵
「前方四十二光秒に国際中立地帯!」
航海長ハリスン・メイクピース中佐が報告する。
「このまま前進する」
エドワードが下令すると、
「了解。全艦、人命救助のために中立地帯へ進行する」
ウォーズリー少将が復唱する。
軍艦が国際中立地帯に入ることは、国際条約違反となるが、人命救助などの行動をとる時に限って許されている。
命令に従って艦隊は国際中立地帯へと進入する。
突然警報が鳴り響くが、航海長は警報を止める。
「中立地帯に入りました。このまま進みます」
航海長が報告する。
六時間ほど進んだところ、
「右舷15度に感あり!」
電探手キャスリン・ウォード少佐が叫んだ。
「モニターに映してくれ」
「映します」
映し出されたのは、ケンタウロス帝国軍の三隻。
「哨戒艇ですね。既にこちらを発見したようです。引き返していきます」
「追いかけますか?」
「必要はない。どうせ海賊基地を囲んでいる艦隊に戻るだけだ」
高速で引き返す哨戒艇を無視して、海賊基地へと急ぐ艦隊。
海賊基地が目の前にあった。
その周囲を帝国艦隊が取り囲んでいた。
エドワード艦隊に気が付いたのか、一斉に回頭してこちらに向かってきた。
「全艦、戦闘配備!」
エドワードの命令が下る。
艦内を駆け回って、それぞれの担当部署に急ぐ兵士達。
「何とか間に合ったようだな」
ため息をつくエドワード。
「敵の戦力は?」
「戦艦二十隻、駆逐艦百二十隻かと」
「こちらの方が有利だな。落ち着いて当たれば負けはしない」
「戦闘配備完了しました」
「光子魚雷装填!」
魚雷室では、発射管に光子魚雷が装填されてゆく。
『装填完了!』
魚雷長が端末に向かって叫び艦橋に伝わる。
「照準合わせ!」
戦術コンピューターを働かせて照準を合わせる。
二百隻の艦艇が戦術コンピューターを連動させて、一隻に集中するなど無駄撃ちしないようになっている。
「照準合いました!」
「よし、発射!」
全艦から光子魚雷が一斉に発射される。
当然敵艦隊からも魚雷が発射され、中間地点で交差する。
磁気信管が作動して炸裂する魚雷群だが、無事に通過してこちらや敵艦に向かうものもあった。
「ファランクスで迎撃!」
高速で接近する魚雷に対しては、射撃指揮システムや火器管制レーダーに任せて自動で迎撃できるようになっている。
それでも迎撃を搔い潜って命中する魚雷もある。
「味方艦、七隻に被害! 損傷中破なるも航行可能です」
「被弾艦を後方に下がらせよ」
命令に従って後方に下がる被弾艦。
「敵艦隊の損害状況は?」
「確認できましたのは、撃沈3、大破2、中破4というところです」
「戦力差の違いが出たな」
やがて両艦隊は距離を縮めてゆくかと思われたのだが、
「敵艦隊が後退を始めました。撤退のもよう」
「深追いはよそう。まずは、基地内の確認が先だ。連絡を入れてくれ」
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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅰ 海賊基地のこと
第一章
Ⅰ 海賊基地のこと
漆黒の宇宙を突き進む二百隻の艦隊があった。
その旗艦である戦艦ロイヤル・サブリンの艦橋。
「惑星サンジェルマンまで六時間です」
航海長が報告する。
「爺に会うのは何年ぶりだったかな」
尋ね返すのは、アルデラーン公国第一公子のエドワード、後のアレクサンダー二世である。
「七年前、ハルバート伯爵さまの侯爵位授与式でお会いして以来ですね」
艦隊司令官マーティン・ウォーズリー少将が答える。
彼は、初めてアムレス号と戦うも散々な目に合わされて、結果鞍替えした指揮官だ。当時の階級は少佐である。
爺というのは、惑星サンジェルマンの領主ハルバート侯爵である。
アルデラーン公国が再興された後に伯爵位を返還され、さらに侯爵位を授与されたのだ。
恨みもしたが、自分の孫は可愛いかった。幼い孫が遊びに来るたびに、目の中に入れても痛くないほど溺愛するほどだった。
侯爵の娘レイチェルには男爵位を持つ婿養子がおり、三人の娘を産んでいた。男子がいないので、なおさらエドワードを愛おしく思う侯爵だった。
惑星サンジェルマンに近づいてゆく艦隊。
「殿下、本星より入電しました」
「繋いでくれ」
「繋ぎます」
通信用モニターに公王アレックスが映し出される。
「陛下。いかがなされましたか?」
『緊急だ。すぐさま国際中立地帯の海賊基地へ向かってくれ』
「海賊基地ですか?」
『そうだ。ケンタウロス帝国が奇襲を仕掛けてきたのだ。緊急通信が入った』
「これから向かって間に合いますか?」
『向こうも籠城戦で頑張っているようだ。開城される前に蹴散らしてくれ』
「わかりました」
『私もすぐにアムレス号で応援に向かう』
通信が途切れた。
一息ついてから、下令するエドワード。
「進路変更! 海賊基地へ向かう」
「進路変更、進路海賊基地!」
ゆっくりと転進を始める艦隊。
「間に合うといいんですけど」
ウォーズリー少将が心配する。
だがその言葉の裏には、戦いの経験の少ない将兵が多い自分の艦隊の心配でもあった。
このような日が必ずくると訓練は欠かさず行ってきたが、実戦となると思いもよらない事件はおこるものだ。最悪なのが敵前逃亡だ。命が掛かった戦いから逃げ出したくなるのは当然だから。
「アーデッジ船長がいるから大丈夫だと思う」
エドワードが幼少の頃、アムレス号に乗って海賊基地に遊びに行っていた。なので、頭領アッカルドやアーデッジ船長とも顔馴染みになっていた。海賊船フォルミダビーレ号にも乗せて貰ったこともある。
父アレックスがフォルミダビーレ号に乗り活躍していたことも知っている。海賊達は、常日頃から海賊行為において、戦いの連続を生き抜いてきているのだ。
ケンタウロス帝国艦隊とて、全員が戦闘馴れしているとは限らない。艦隊編成した時に戦闘未経験の艦もいると思われる。
そう簡単に負けるはずがない。
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