銀河戦記/波動編 第二章 Ⅱ 襲撃!

第二章



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Ⅱ 襲撃!


 商船に近づくバスタード号と海賊船。
 海賊船船橋。
「一応、停船命令を打電してみろ」
 レンツォ・ブランド通信士が、相手商船との交信を試みるが、
「応答なし!」
 相手は無言で逃げ続けていた。
「こちらから挨拶しているのに、無視するとは礼儀がなっていないな」
 アッデージ船長が呟くと、
「普通の交信なら、ですがね」
 リナルディ副長が返す。
「しようがねえな。一発お見舞いしてやるか」
 と副長に顎で合図を送ると、
「船首魚雷発射準備! 目標、商船の前方至近、当てるなよ」
 副長が下令する。
 二人は長い付き合い、以心伝心皆まで言わずとも分かる間柄である。
 海賊船から光子魚雷が発射されて、商船の目の前に到達して炸裂する。
 攻撃に怯えたのか、停船する商船。
「よっしゃあ! ぶんどりタイムだあ!」
 白兵部隊隊長のエルネスト・マルキオンニが気勢を上げる。
 控えていたバスタード号が急速接近して、乗船口から中へと海賊達が殺到してゆく。
「おまえは、ブリッジを押さえろ!」
 ドメニコ・ボノーニに指図する隊長。
「わかった。おい、お前らも来い!」
 手下を連れて船橋(ブリッジ)へ向かうボノーニ。
 隊長らは船倉へと急ぐ。

 船橋へとなだれ込むボノーニ達。
「おとなしくしろ!」
 ビームライフルを突き付けて身動きできないようにし、計器から離れさせて反対側の壁際に立たせた。
 仲間の一人が計器を調べている。
「あった! これだ!」
 彼が探していたのは「積み荷リスト」だった。
 たくさんの荷物をやみくもに探しても時間の浪費になる。
 金目のものだけを選びだすには、積み荷リストが必要だ。

 一方の船倉にたどり着いた海賊達。
 広大な船倉はただ広くて、どこから手を付けてたものかと思案する海賊達。
 隊長の携帯端末が鳴った。
「お、きたきた」
 端末を開くと積み荷リストが転送されていた。
「ようし、始めるぞ! まずは、B層の235番コンテナからだ」
 リストを見ながら、金目のものを次々と運び出す。
 再び隊長の端末が鳴る。
「本船が横付けした。搬入口を開け!」

 輸送船に海賊船が横付けしている。
 商船と海賊船それぞれの搬入口が蛇腹状の搭乗橋(ボーディング・ブリッジ)で繋がれている。

「よし、繋がった。積み荷を運べ!」
 搭乗橋にはベルトコンベアが設置されていて、荷物を置くと自動的に海賊船へと運んでゆく。
「食料はどうしますか?」
 いつも腹ペコなブルーノが、食料の入った箱を見つけて尋ねる。
 彼にとっては、金目のものよりも腹を満たしてくれる食べ物の方が大事なようだ。
「しようがねえな。持っていけ」
「はーい!」
 喜んで食料の入った箱を運び出してゆくブルーノだった。

 数時間後、
「ようし、これで十分だ。撤収するぞ!」
 隊長が指示を出す。
「了解!」
 最後の荷物をそれぞれ持ちながら、搬入口から撤収しはじめる海賊達。

 搭乗橋を引き戻しながら、商船から離れていく海賊船。

「商船の人達ですが、どうして抵抗しなかったのですか?」
 船に戻ったブルーノが疑問を尋ねた。
「それは、この船が『フォルミダビーレ号(for·mi·dà·bi·le)』アッデージ船長のものだと知っていたからだよ」
「フォルミダビーレ? 恐るべき船ですか?」
「言わなかったっけ? この船の名は『フォルミダビーレ』アッデージ船長の持ち船だ。この船は略奪はするが人殺しはしないからな。抵抗さえしなければ自身は安泰だし、積み荷は海運保険で補填できるから」
「そうなんだ……」
「まあ、抵抗する奴らもいるから銃は必要だ。船長も昔はかなりあくどいこともやって、銃も撃ち放題だったが、今では丸くなってきたよ」
「はあ……」
「どうした? 銃をぶっ放したかったか?」
 確かに銃を与えられてはりきっていたのは間違いないが、人を殺傷することは避けたいと思ってはいた。



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銀河戦記/波動編 第二章 Ⅰ 襲撃準備!

第二章



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Ⅰ 襲撃準備!


 国際中立地帯内にある恒星ノヴァーラを航行する海賊船。
 補助運航装置であるソーラーセイルを一杯に広げて、恒星から飛来する光子やイオンなどの放射圧を受けて帆走している。恒星放射圧は、彗星などが尾を引く現象の源でもある。
 セイルは、極超薄膜ながらも強靭な素材で出来ており、その表面には超薄膜太陽光発電体も貼り付けており、補助電源としても機能している。
 ほぼ真空の宇宙空間には、進行を妨げる空気などの障害がないので、帆を一杯に広げても大丈夫である。

 船橋には、正面に壁一面のスクリーンがあり、取り囲むように各種オペレーター達が配置されている。
 指揮官席に座るアッデージ船長と両脇に立つ副長と見習いのアレックス。
「基地帰還まで三十六時間です」
 言いながら航海日誌を差し出すリナルディ副長。
 それを一読してから、サインして返す船長。
 航海日誌には、アレックスら六人の少年を、正式に仲間入りさせたことも記述されている。
「基地より連絡あり」
 レンツォ・ブランド通信士が報告する。
「聞かせてくれ」
「惑星サンジェルマンからトリスタニア共和国へ向かう大型輸送船が、現在国際中立地帯を航行中とのことです。位置は我々の至近です。以上です」
「つまり、我々にその輸送船を襲えということか……」
 船長が呟いたと思うと、
「アレックス君、君ならどうするかね?」
 質問をした。
「正式な襲撃命令が下されたのですか? 軍艦なら命令に従うだけでしょうけれど」
 答えずに質問を返すアレックス。
「いや、我々は海賊だ。軍規というものはないので、好きにしてよい。しかし海賊組織の一員として上層部に上納金を納める義務がある」
 船長の返答に、副長が追加する。
「この船の燃料・食料やら基地の使用料、船の修理・点検整備にも金と人員が必要だからね。そのための必要経費は払わなくてはならないからね」
「商船を見過ごせばどうなりますか?」
「そりゃ、他の仲間の海賊船が代わりに襲撃するさ」
「その上納金とやらは足りているのですか?」
「うむ。少し不足している」
「でしたら、襲うしかないでしょう」
「わかった」
 船長が副長に合図を送ると、
「総員。襲撃準備!」
 戦闘配備を下令する副長だった。

「商船の位置は、ベクトル座標α1427・β座標0028・γ座標2738を航行中です!」
 通信士が、商船の位置座標を端末に入力して操舵手に託す。
「座標確認しました」
 操舵手のフィロメーノ・ルッソロが報告する。
 その隣の席には、操舵見習いとしてマイケル・オヴェットが座っている。
「進路転進、商船に向かえ」
 副長見習いのアレックスが下令する。
 巡航時には、概ねアレックスが航行の指揮を委ねられている。
 戦闘時には、正規の副長であるフィオレンツォ・リナルディが担当する。
「了解! 進路転進!」
「総員戦闘準備! 帆を畳め、戦闘速度で全速前進!」
 戦闘指揮をリナルディ副長が下令する。
 補助推進と発電を賄うソーラーセイルの損傷を防ぐために、戦闘時は折りたたむのが常道だった。

 甲板では、空戦隊長ロドリゴ・モンタナーリが戦闘機発進の準備を進めていた。
「おめえら、いつでも出撃できるように待機していろ!」
 次々と戦闘機に乗り込むパイロット達。
 マイケル・オヴェットも初乗り待機している。
 複座式の戦闘機で、空戦隊長が後部座席に陣取って指揮を執ることになっている。
「初陣だが、いけるな?」
「大丈夫です」
 自信たっぷりに答えるマイケル。
「いい子だ」

 ブルーノ・ホーケンは、商船への殴り込みのための武装をチェックしていた。
 与えられたビームライフルのカートリッジを取り付けたり外したりを繰り返していた。
「扱い方は分かったか?」
 筋骨隆々の白兵部隊長のエルネスト・マルキオンニが、ブルーノの肩に手を置いて確認した。
「なんとか……」
「まあ、実地で慣れてゆくんだな」
「はい」
「味方だけは撃つなよ」
 仲間の一人がチャチャを入れる。
「よせよ。初心者を怖がらせるんじゃねえよ」
 別の仲間が窘(たしな)める。
『突撃隊、乗船開始せよ』
 船内放送が鳴った。
「ようし、全員乗り込め!」
 体長が命令する。
 全員が飛行艇に乗り込んでゆく。

 船橋。
「商船、速度を上げました」
 船橋では紅一点のレーダ手ルイーザ・スティヴァレッティが報告する。
「気づいたか。こちらも速度を上げろ! バスタード号発進せよ」
 バスタード号とは、ブルーノ達が乗り込んだ飛行艇であり、「ろくでなし」という意味の高速艇である。
 アッデージ船長が下令し、
「全速前進!」
 ルッソロ操舵手が応じる。

 速度を上げる海賊船から発進する高速船バスタード号。
 目指すは商船に積まれた宝の略奪である。



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銀河戦記/波動編 第一章 Ⅷ 仲間入り

第一章


Ⅷ 仲間入り


 懲罰房入りから三日後、六人の少年は釈放された。
 その足で、船長室へと呼び出される。
 静かな口調で語り始めるアッデージ船長。
「まもなく我々の基地に帰還する」
「基地ですか?」
 アレックスが確認する。
「そうだ。その時に君たち全員の処遇が決められる」
「奴隷商人に売られたりとか?」
 エヴァン・ケビンが質問する。
「ああ、そうなるだろうな。最終決断は頭領が判断する」
「頭領とは?」
「我々海賊一党の親分だ」
 海賊の親分の姿を想像する少年達。
「さて、奴隷商人に売られなくする方法が一つある」
「一つ?」
「正式な仲間になることだよ」
 顔を見合わせる少年達。
「僕は入るよ」
 一番に同意したのは孤児院育ちのジミー・フェネリーだった。
 悲しむ家族もいないし、将来のあてもないので海賊でも構わないという心境だ。
「僕は、すでに海賊のつもりだよ」
 とは、空戦隊長のお気に入りのエヴァン・ケイン。
「飯がちゃんと食えるなら、海賊でもいいや」
 ブルーノ・ホーケンは、いつも腹ペコである。
 海賊船に来てから出された食事が結構ボリュームがあって満足していた。
「仲間になってもいいよ」
 機械好きで機関部要員となったフレッド・ハミルトンは、高性能エンジンを搭載した海賊船に興味がある。
 各人それぞれ思いは違うだろうが、海賊の仲間入りには同意の意向がうかがわれる。
「君はどうなのかね?」
 アッデージ船長は、まだ意思を表明していないアレックスに尋ねる。
 実際問題としては、本命の彼が賛同してくれなければ、少年達を誘拐してきた甲斐がないというものだ。
「君はどうするの?」
 という他の仲間の視線が集まる。
 孤児院での彼の志望は軍人となることで、養子縁組も断ってきたくらいだ。
 軍人となって、国境警備隊に配属されれば、当然海賊とも戦うことになっていただろう。
 それがこともあろうか、海賊の仲間にならないかと誘われている。
 筆舌に尽くしがたい、ともいうべき心境ではなかろうか。
「で、君はどうするんだ?」
 アーデッジ船長が念押ししてくる。
 一呼吸置いてから、答えるアレックス。
「就いていきましょう」
 仲間外れで、自分だけ逃げだすことはできないだろう。
 そういう意識も働いたかもしれない。
「よし、今日から全員仲間だ」
 そばに控えていたモレノ・ジョルダーノ甲板長が、書類を持ち出してきて机の上に置いた。
「その書類に署名して血判を押してくれ」
 目の前に差し出された書類を見て、
「血判状ですか?」
 アレックスが確認する。
「その通りだ」
 しばし、見つめる少年達だった。
「分かりました」
 と、一番に書類に署名を始めたのはアレックスだった。
 彼は慎重だが、決断すると行動は早い。
 ジョルダーノから手渡されたナイフで指に切り傷を付け、流れ出た血液で書類に拇印を押した。
 それを見て、他の少年も同じように署名と血判を押した。
「これでいい」
 書類をまとめて、棚にしまうアッデージ船長。
「祝いの乾杯をしよう」
 ジョルダーノがグラスと酒瓶を持ってくる。
「あの……僕たち、未成年です」
 ジミーが確認すると、
「海賊に成年も未成年もないさ」
 グラスに酒を酌み、少年達に手渡すジョルダーノ。
「各自に手渡ったようだな」
 グラスを持った手を掲げ上げて、
「乾杯!」
 と言うと、少年達も真似て、
「乾杯!」
 復唱した。
 少し躊躇する少年達だったが、グイッと一気にグラスを空けた。

 数時間後、酔いが回って部屋でぶっ倒れる少年達だった。



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銀河戦記/波動編 第一章 Ⅶ 出戻り

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第一章


Ⅶ 出戻り

 海賊船船橋。
「何だこの騒ぎは?」
 休憩から戻ってきたアッデージ船長が尋ねる。
「ガキが飛行艇を奪って脱走しました」
 リナルディ副長が報告する。
「全員か?」
「いえ、アレックスとかいう班の五人だけです」
「五人? 一人は捕まえたのか?」
「エヴァン・ケインです。エアロックを開けるために、一人だけ残ったようです」
「そうか」
「只今、飛行艇の軌跡を追っているところです」
「まあ、逃げられはしないがな。エヴァンを連れてきてくれ」
「分かりました」


 海賊船から脱出した飛行艇。
「最寄りの惑星ブラッドフォードにコース設定」
 マイケル・オヴェットが機器をセットした。
「大丈夫かな。このまま逃げられるかな?」
 ジミー・フェネリーは心配そうな顔をしている。
「分からない。間違いなく追いかけてきているはずだよ」
「全速前進」
 速度を上げる飛行艇。

 しばらく順調に逃避行は続いた。
「まもなく中立地帯を抜けるぞ」
 国家に属する軍艦や警備艇は、救援活動を覗いて中立地帯には入れない。
「救難信号発信するか?」
 ここまでは、救難信号を出したくても、位置を悟られるから中立地帯を抜け出るまでは無理なので、我慢していたのだった。
 少年誘拐事件を受けて、国境付近には警備艇が巡回していると思われるから、中立地帯さえ抜ければ助けられると思ったのだ。

 と、警報が鳴った。
「なに?」
「接近警報だ」
 船と船が異常接近をした事を知らせる警報器が鳴っている。
「船?」
「前だ!」
 目前に大型の船が現れた。
「海賊船だ!」
「追いつかれたのか?」
 海賊船から何かが発射された。
「魚雷だ!」
 身構える少年達。
 しかし、魚雷は逸れて右舷後方で炸裂した。
「警告射撃だったみたい……」

 ヴィジホンに映像音声が流れた。
『逃げても無駄だ。大人しく戻ってくるんだ』
 アッデージ船長だった。
「どうする?」
 顔を見合わせる少年達。
『心配するな。戻ってきさえすれば命の保障はする。待遇もそのままだ。だが、どうしても逃げるというのなら撃墜する。五分の猶予を与えるから、皆で意見をまとめるんだな』
 班長のアレックスに視線が集まる。
 どうやら逃げることは叶わないようだった。
「僕たちの命の保障はするのですね?」
 聞き返すアレックス。
『もちろんだ』
 念押しするように答える船長。
「分かりました。戻ります」
 決断を下すアレックス。
 他の少年達も不満を漏らさなかった。
 
『いい子だ。帰還を待っているぞ』
 通信が切れた。
 意気消沈する少年達。
 
 数時間後、海賊船に近づく飛行艇。
 エアロックがゆっくり開いて、中へと進入する飛行艇。
 そして甲板に静かに着船する。
 エアロックが閉じて、船内に空気が給気されてゆく。

 飛行艇内、操縦桿から手を離し、大きく深呼吸するマイケル。
「お疲れ様」
 と肩に手を置いて労うアレックス。
「僕たち、これからどうなるのかな」
 下船をためらうジミー。
「敵前逃亡なら銃殺刑というところだけど……」
「生命は保障すると言っていたじゃないか。心配ないよ、重労働はさせられるかもしれないけど」
 立ち上がって乗船口へと移動しながら、下船を促すアレックス。
「開けるよ」
 ブルーノが乗船口のハッチを開ける。
 少年達が甲板に降り立つと同時に、海賊達が集まってくる。
 緊張する少年達だったが、海賊達は意外な行動をしてみせた。
 拍手しながら近づいてきたのだ。
「おまえら、ようやったなあ。見直したぜ」
「脱走するなんて、度胸があるな」
「他人の船を略奪だ。これで正真正銘の海賊の仲間入りだ」
 口々に話しかける海賊達の口調も表情も、微塵の怒りの様子はなかった。
 モレノ甲板長が近づいてくる。
「おまえら、サボってないで仕事しろ!」
 一括されて解散する海賊達。
 少年達に向き直って、
「まあ。脱走は脱走、規律は規律。ということで、三日間の懲罰房入りだ。ついてこい」
 先に立って歩き出したモレノ甲板長についていく少年達。



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