銀河戦記/波動編 第三部 第二章 Ⅰ 惑星パウサニアース
第二章

ペルセウス腕+オリオン腕=ケンタウロス帝国
いて・りゅうこつ腕 =トリスタニア共和国
たて・けんたうるす腕 =アルデラーン公国
Ⅰ 惑星パウサニアース
あれから二十年ほどの年月が流れた。
二千隻もの艦艇を失ったケンタウロス帝国は、侵略行為を一時中断して艦艇の増産・再編成を余儀なくされた。
公国側も再侵略を未然に防ぐために、艦艇の増強を図っていた。
またトリスタニア共和国も同様に艦艇増産を忘れていない。
三か国の所有艦艇数は、帝国が四万二千隻、公国が二万八千隻、共和国が四万九千隻となっていた。
資源面で見ると、銀河系外縁部は若い星が多くて水素ヘリウム以外の重元素が少ない。中心部には古い星が多いせいでこれらの星が超新星爆発を繰り替えてきた結果、鉄、クロム、マンガンなどの重元素が多く生成・蓄積されていた。
オリオン腕から外縁部のペルセウス腕へと渡ったケンタウロス帝国は、慢性的な資源不足に陥っていた。
同じく中心部のいて・りゅうこつ腕に渡ったトリスタニア共和国には資源豊富で艦艇を増産することができた。その軍事力で『タルシエンの橋』の片側を押さえており、帝国の侵入を完全に阻止していた。
さらに内側のたて・ケンタウルス腕に渡ったアルデラーン公国は、資源は豊富にあったが建国の歴史が浅いので資源開発が遅れていた。帝国の侵入を抑えてきたのは、ひとえにアムレス号の存在によることが大きかった。
惑星サンジェルマン。
衛星軌道上に約一万隻の艦艇が待機していた。
その艦隊旗艦、戦艦ロイヤル・サブリン艦橋。
「艦隊編成完了しました。いつでも出撃できます」
艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が報告する
「うむ。微速前進!」
エドワード改め公王アレクサンダー二世が下令する。
*以降アレックスと略称する。
「了解。微速前進!」
静かに動き出す艦隊、その数七千隻。
残りの艦艇は惑星の防御に回る、惑星を空にするわけにはいかないからだ。二十年前の悲劇を繰り返すことはできない。
「惑星リモージュを経由して惑星パウサニアースに向かう。ワープゲートを是が非でも確保する」
惑星リモージュには国際宇宙ステーションがあり、三か国のハブ空港となっている。そして惑星パウサニアースは、帝国軍国境警備艦隊の基地であり、ラグランジュ点にはワープゲートが浮かんでいる。
惑星リモージュを通過して惑星パウサニアースに近づくと、国境警備艦隊が現れた。その数およそ二百隻。
『こちらパウサニアース警備隊である。そちらの所属と目的を述べよ』
相手艦から通信が入った。
「こちらはアルデラーン公国である。無駄な戦闘はしたくない。降伏して素直に惑星とワープゲートを明け渡して欲しい」
アレックスが降伏を進言するが、はいそうですか分かりました、とは言えないだろう。
「冗談は止めたまえ」
断固拒否する構えのようだ。
ある日突然やってきて降伏しろと言われても従える訳がない。
そして撃ってきた。
「仕方がない、反撃せよ!」
七千隻の艦隊が攻撃をはじめた。
二百隻対七千隻、圧倒的な戦力差で勝敗は決した。
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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅵ 公王死す
第一章
Ⅵ 公王死す
惑星サンジェルマン。
地上を歩く人々がいる。
「あれは何だ!」
誰かが空を指さして叫ぶ。
「なんだ、なんだ!」
と他の者も空を仰ぐ。
雲以外何もなかった空に、突如眩い輝きが広がり、恒星が一つ増えたような明るさだった。
そして十分ほどで輝きは弱まり、平常の空に戻った。
それらの異変はハルバート侯爵のもとに伝えられた。
「ケンタウロス帝国艦隊が迫っていると警告されていたが、関係あるのか?」
「公王さまがアムレス号で蹴散らしてくださったとか?」
「それはありうるが、おかしくないか?」
「なにがですか?」
「爆発は一回きりだった。いくらアムレス号でもまとめて敵艦隊を撃沈させることはできないだろう」
「つまり一隻ずつ段発的に爆発すると?」
「当然だろうが」
「確かアムレス号には自爆装置があると聞きましたが」
「自爆だと! まさか公王さまが自分の命を顧みずケンタウロス帝国艦隊を殲滅させたというのか?」
「たぶん……」
驚愕するハルバート侯爵。
そこへ一人の臣下がカプセル状のものを携えて入室した。
「大変です、侯爵様」
「どうしたのだ?」
つい先ほど、アムレス号からの通信カプセルが届きました。
「通信カプセルだと? 再生できるか?」
「はい。ただいま」
通信カプセルを端末にセットする臣下。
やがて正面スクリーンにアレックスの映像が映し出された。
「公王!」
一同が驚いている。
『公王である。このカプセルを手にしている時分には、私はこの世にいないだろう。自分の命及びアムレス号と引き換えに、ケンタウロス帝国艦隊を殲滅する。遺言として我が息子エドワードに公爵位と公王の地位を相続させる。公国に栄光あれ!』
通信内容が途切れた。
緊急通信のために手短に重要事項だけ記録したのだろう。
「公王は、公国を守るために自ら犠牲になったのか?」
三日後、エドワード率いる艦隊が戻ってきた。
正面スクリーンには惑星サンジェルマンが映し出されていた。
「帝国艦隊は? 探査しろ!」
「了解。探査します」
電探手のキャスリン・ウォード少佐が応える。
「見たところ、帝国艦隊の姿が見えませんが、すでに占領されたのでしょうか?」
マーティン・ウォーズリー少将が尋ねる。
「そうだとしても、守備や迎撃のための部隊ぐらいは待機してるだろう」
言われて口ごもる少将だった。
「陛下! 王宮のハルバート侯爵から通信が入っています」
通信士のジュリアナ・ワイズ少佐が報告する。
「繋いでくれ」
通信用パネルに侯爵の姿が映し出された。
『エドワード、悲しい報告をしなければならない』
「何事ですか?」
『公王がアムレス号と共に、帝国艦隊を巻き込んで戦死なされた』
「戦死ですと? 父上が亡くなられたということですか、何があったのですか?」
『通信で話す内容ではない。とにかくこちらに来てくれ、詳しく話す』
「分かりました。そちらに行きましょう」
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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅴ アムレス号の最期
第一章
Ⅴ アムレス号の最期
惑星サンジェルマンを有する恒星アバディーン星系の一角。
空間が歪んでアムレス号が姿を現した。
「どうやら間に合ったようです」
エダが報告する。
「うん。どうせすぐに奴らも現れる、戦闘配備だ」
アムレス号の性能は、帝国艦隊よりも一足早くたどり着いたのだ。
『了解シマシタ。戦闘配備シマス』
アムレス号には現在、アレックスとエダしか乗っていない。
アルデラーン公国を再興して以降、富国強兵を目指しつつ、アムレス号に乗っていた者たちも、公国艦隊へとそれぞれ配置換えとなっていた。
コンピューター制御による全自動運転ができるので、他の乗員がいなくても大丈夫なのだ。
『前方ノ空間ニ重力異常! 無数ノ物体ガ、ワープアウトシテキマス』
ロビーが警告を発する。
「来たな」
前方の空間に次々と出現するケンタウロス帝国艦隊二千隻。
到着と同時に散開して、アムレス号を遠巻きに包むように進撃開始した。
紡錘陣形を取っていれば、アムレス号の荷電粒子砲一発で殲滅できるだろうが、散開する相手ではあまり効果がない。
前方少数と対峙している間に、回り込んだ艦隊が直接惑星サンジェルマンに攻め込むだろう。
「なるほど、やはりそう来ましたか」
アレックスの脳裏には、あらゆる事態を想定したシミュレーションがあった。
その中の一つを選びだした。
アムレス号の周囲にいるケンタウロス帝国艦隊二千隻を撃ち負かすにはこれしかなかった。
アレックスはエダを見つめて言った。
「エダ、縮退炉を解放・暴走させてもいいか?」
それはつまりアムレス号を自爆させるということだった。
驚くエダだったが、アムレス号の管理者である。
ゆえに艦の自爆の許可願いをだしたのだ。
しばし考え込むエダだったが、静かに答えた。
「かまいません。アレックス様の思うがままにどうぞ」
「ありがとう」
謝意を述べ、一息ついてから、
「縮退炉を解放してくれ」
「かしこまりました」
『縮退炉ヲ、解放シマス』
微かな震動と音を発生していた縮退炉エンジンが暴走を始めて、艦内が激しく震動しはじめた。
「例の通信カプセルを惑星サンジェルマンに向けて射出してくれ」
「かしこまりました」
例の物というものを、すぐに理解して作業に取り掛かるエダ。
カプセルは万が一のことが起きた時のために、事前に用意しておいたものである。
アムレス号から射出され、亜光速に加速する通信カプセル、帝国艦隊を追い越してサンジェルマンへと一直線に突き進む。
「射出成功しました。帝国艦隊の包囲網を突破しました」
「うん。これで公国は大丈夫だな」
「そうでございますね」
「エダ、ロビー、これまでありがとう」
感謝の意を表すアレックス。
「いいえ、どういたしまして」
『コチラコソ、アリガトウゴザイマシタ』
エダもロビーも人間のような感情がなく、死という概念もなかった。
そして帝国艦隊を巻き込んで大爆発を起こした。
まるで超新星爆発のような破壊力だった。

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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅳ 急げ!

第一章
Ⅳ 急げ!
アムレス号は、通常の戦艦の四倍以上の巨大さがあるので、基地内のドッグに入港できずに周辺に漂泊していた。
艦橋の転送システムから姿を現すアレックス。
「状況はどうなっている?」
緊急通信で至急帰還という、滅多に言わないエダの口調からも、すでに事態急迫しているのだろうと察知していたアレックスだった。
「帝国艦隊が惑星サンジェルマンに約四光年のところに迫っています」
「つまりワープ一回で、サンジェルマンに到達か」
この時代、戦艦が一回でワープできる距離は四から五光年となっている。一回ワープする毎に、ワープ装置へのエネルギー充填と点検を必要としていた。
「次のワープは四十分後と思われます」
「ゆっくりしていられないな。すぐにワープで追い越して、待ち受けるぞ」
「かしこまりました」
『スデニ、ワープ準備ハ完了シテオリマス』
ロビーが応える。
「ワープだ!」
『ワカリマシタ』
次の瞬間、姿を消すアムレス号。
アムレス号のワープ距離は一回につき最大一万光年、連続ワープも可能とされている。無尽蔵なエネルギーを生み出す縮退炉と、莫大なエネルギーを充填でき長距離を跳躍できる強靭なワープエンジンのお陰である。
海賊基地内通路で宇宙港へと急いでいるエドワード。
窓からは待機している二百隻の艦隊が浮かんでいるのが見える。
今から艦隊を動かして惑星サンジェルマンに向かっても、間に合わないのは目に見えているが、行かずにはおれないのだった。
十数分後、旗艦ロイヤル・サブリンに舞い戻ったエドワード。
「発進準備完了しています」
ウォーズリー少将が報告する。
「すぐに発進させてくれ!」
指揮官席に座ると同時に下令する。
「了解。全艦、微速前進!」
ゆっくりと動き出す旗艦艦隊。
アムレス号と違って、普通の戦艦はすぐにはワープできない。
エンジンを動かして発電して、ワープ装置にエネルギーを充填してからでないとワープできない。
「あの時、見かけた哨戒機を追わせるべきだったな」
反省するエドワード。
「おそらく、我が艦隊が海賊基地へと向かうのを監視していたのでしょう」
「そうかもしれない。それを確認して進撃を開始したのだな」
今となっては後の祭りと、後悔するエドワードだった。
「全艦、ワープ準備完了しました」
およそ三十分後、ワープ装置への電力充填が済んだ。
「よし、全艦ワープだ!」
「全艦、ワープせよ!」
アムレス号に続いてワープする旗艦艦隊だった。
アッカルド頭領の部屋にアーデッジ船長が訪れている。
「二人とも行ってしまいましたね」
船長が呟くように言うと、
「間に合わないだろうけどな」
と頭領がため息をつく。
「アレックス君が何とかしてくれますよ。伝説のロストシップでね」
「そうかな」
「たとえ二千隻の相手であっても足止めくらいはできるでしょう。そして追いついたエドワード君と連携すれば……」
「ふむ、二人の活躍を期待して祈ろうじゃないか」
「そうですね」
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銀河戦記/波動編 第三部 第一章 Ⅲ 旧友との再会
第一章

Ⅲ 旧友との再会
海賊基地の頭領室。
アントニノ・ジョゼフ・アッカルドの前に立つエドワードがいる。
「久しぶりだな。父上はご健在かな」
親し気に尋ねるアッカルド頭領。
「はい。至極元気で活躍しております」
「うむ、それは良かった」
仲良く談話している二人が初めて出会ったのは、父アレックス公王がエドワードを連れて基地を表敬訪問した時に紹介された時だった。以来、何度となく訪れるうちに仲良くなり、孫のように可愛がってくれるようになっていった。
「ところで公国は統一できたが、公王は他国を支配下に入れたいとは思っていないのかな?」
アッカルド頭領が禁断ともべき言葉を吐いた。
「そうですね。ケンタウロス帝国に対抗するために軍備拡張と増強を図ってきましたから、片隅には思っていると思いますよ」
エドワードは素直に答える。
「君はどう思っているのかね?」
「そうですね。我が国を侵略してくる国がある以上、排除しなければならないのは必定でしょう」
「しかし、ここ最近はおとなしくしているようだが?」
「父上が『伝説のロストシップ』と呼ばれていたアムレス号を発掘し、強力な軍備拡張を始めたから恐れているのでしょう。でも負けじと着々と軍備増強を図っているようです。いずれ戦火を交えることは避けられないでしょう」
その頃、海賊基地に遅れて到着したアレックスは、アントニーノ・アッデージ船長とかつての仲間達と酒場で酌み交わしていた。
フィオレンツォ・リナルディ副長他のフォルミダビーレ号の乗組員達、そしてエヴァン・ケイン以下の旧友達の顔ぶれが揃っていた。
「まずは久しぶりの再会に乾杯だ!」
アーデッジ船長の祝杯の合図で杯を交わす一同。
テーブルの上には豪勢な料理が並んでいる。
相変わらず食いしん坊なジミー・フェネリーががぶついている。
「思えば出世したものだな。孤児院育ちの坊やが、今や一国の王だよ」
当時の少年達のお守り役だったモレノ・ジョルダーノ甲板長がしみじみといった口調で懐かしむ。
思い出花咲く団欒で、時間が過ぎるのも早かった。
やがてお開きという時、アレックスの端末が鳴った。
「どうした?」
端末を取って通信するアレックス。
『至急、アムレス号にお戻りください』
エダの声には緊急性を促す口調だった。
「分かった。転送してくれ」
理由も聞かずに命令するアレックス。
『かしこまりました』
次の瞬間、転送システムでもある携帯端末が、アレックスを瞬間移動させた。
エドワードの元にも緊急報告が届いていた。
戦艦ロイヤル・サブリンのマーティン・ウォーズリー少将からだった。
『惑星サンジェルマンに向かって、二千隻の帝国艦隊が進軍しています』
「今すぐ戻る。全艦、発進準備させておいてくれ」
『了解』
通信を終えて、アッカルド頭領に別れを述べるエドワード。
「短い時間でしたけど有意義な時間でした」
「どうやら、ここを襲った奴らは囮(おとり)だったようだな」
「そのようですね。我が艦隊をこちらにくぎ付けにしておいて、その間に密かにサンジェルマンへ本隊が向かったということでしょう」
「うむ。気をつけてな」
別れる二人だった。
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