銀河戦記/波動編 第八章 Ⅲ 帝国艦隊

第八章


Ⅲ 帝国艦隊


 アムレス号船橋。
 指揮官席に座るアレックスと傍に控えて立つエダがいる。
 正面スクリーンに映る海賊ギルド基地とケンタウロス帝国艦隊を見つめている。
『フォルミダビーレ号、後方ニ下ガリマシタ』
 ロビーが報告する。
 帝国艦隊が少しずつ前進してくるのが見えた。
「荷電粒子砲を使えば、全艦を一掃できます」
 エダが進言する。
「いや、エネルギーが強力すぎて、この位置で撃てば後背の海賊基地まで損害を与えるから駄目だ」
 ガスパロ一族を除けば、基地にいる海賊仲間や一般人には罪はない。
 しかし帝国兵は、アンツーク星で自分達を銃殺するという暴挙に出た。
 そして、かつてのトラピスト星系連合王国を滅ぼした輩である。
 帝国兵に対しては慈悲を与える筋合いはない。
「短距離の小ワープは可能ですか? 敵艦隊のど真ん中にワープしたい」
 エダに尋ねるアレックス。
「可能です。いきますか?」
 答えるエダに、
「やってください」
 と、指示するアレックス。
「極超短距離ワープ用意して」
 エダがロビーに指示する。
『了解。極超短距離ワープ用意シマス。目標位置敵艦隊中心!』
「戦闘準備! 電磁レールガン用意」
 さらにアレックスは、冷静に下令する。
『戦闘準備! 電磁レールガン用意シマス』
 レールガンは、船体の舷側にずらりと並んでおり、その発射口蓋が開かれてゆく。
『ワープ準備完了シマシタ』
「ワープ!」
 宇宙空間から消失するアムレス号。
 次の瞬間、帝国艦隊の中心に姿を現す。
「レールガン発射!」
『発射シマス』
 発射されるレールガン弾頭が、次々と敵艦を撃破してゆく。
 帝国艦隊も、突如として懐に突入されて困惑しつつ、反撃しようにも同士討ちとなること必至なので、成す術がなかったようだ。
 数十分もしないうちに、基地外にいる帝国艦隊は一掃された。

 フォルミダビーレ号船橋。
「さすがロストシップだな。蟻を潰すように簡単に一捻りだったな」
 感心するアーデッジ。
「同感です」
 リナルディ副長も同意する。
「さてと、ガスパロに繋いでくれ」
 通信パネルにガスパロが出る。
『やってくれたな。これで帝国とは完全な敵対関係になったぞ』
「それは分かっている。で、ガスパロ。一対一の船同士の決闘を申し込む」
『決闘だと!』
「そうだ。俺が勝ったら親父を解放する。俺が負けたら、この船フォルミダビーレ号を明け渡す」
『フォルミダビーレ号をか?』
「はい。三十分待って上げますので、返答よろしくお願いいたします」
 通信を切るアーデッジだった。

 通信を終えて、
「決闘はいいですが、このフォルミダビーレ号を賭けていいのですか?」
 リナルディ副長が心配そうに言った。
「いいんだ。この船は元々親父のものだったんだ。親父を解放できるなら、くれてやってもいいさ」
「そうですか……船長がそう仰るのでしたら従います」
「問題は、奴が決闘に応じるかだな」
「どうでしょうねえ。何とか決闘に応じるしかないように仕向けるしかないですね」
「ふむ。その時は、アレックス君にも手伝ってもらうかな」

 三十分が過ぎ去った。
「奴からは連絡がありません」
「仕方がないな……アレックス君に連絡してくれ」



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