銀河戦記/波動編 第七章 Ⅳ アムレス号発進!



第七章


Ⅳ アムレス号発進!


 少年達がそれぞれ配置についた。
「で、これからどうしますか?」
 マイケルが尋ねる。
 宇宙船の中らしいことは明白だが、地の底ということも分る。
 宇宙に出ようと地表に出れば、待ってましたとばかりに、帝国艦隊からの集中攻撃を受けるだろう。
 無重力状態であることを鑑みても、小惑星の中心核付近で重力の及ばない地点でもあることも分る。だが宇宙船の外郭には相当の圧力がのしかかっているはずだ。

 船が動くためには、小惑星の岩盤をどうにかしなければならないだろう。
「それでは、出航致しましょう」
『了解。岩盤爆破シマス』
 エダの合図を受けて、小惑星の自爆装置の釦を押すロビー。


 小惑星軌道上に展開する帝国艦隊の旗艦艦橋。
「小惑星に熱エネルギー反応!」
 オペレーターが叫ぶ。
「何だと? 全艦、小惑星から全速で離れよ!」
 危機を察知した指令が離脱を下令する。
 数分後、小惑星が大爆発を起こして、膨大な岩石が艦隊に襲い掛かる。
 あたふたと四散する帝国艦隊。
 中には接触事故を起こす艦もあった。
「何をしているか! 落ち着いて操船せよ!」
 イラつきながら不甲斐ない部下の操船に叱咤する司令だった。

 そんな中、爆発の最中の小惑星の中心から、一隻の宇宙船が飛び出してきた。散り散りになる帝国艦隊を尻目に、全速力で離脱してゆく。
『安全域ニ到達シマシタ。追ッテクル帝国艦隊ハアリマセン』
 ロビーが報告すると、
「やったぜ!」
 歓声を上げる少年達であった。
 船内正面にあるパネルスクリーンには、遠ざかるアンツーク星が投影されている。
「ええと、この船の名前は何というんですか?」
「アムレス号です」
「今更聞くんだけど。この船をどうやって惑星の中心核に閉じ込めたんですか?」
「それは簡単です。粒子砲で小惑星の中核を貫いて、開いた穴に船を突入させれば、やがて重力崩壊で穴は閉じます」
「なるほど。それにしても、よほどの耐圧殻を持った船体なんですね。小惑星とはいえ、中心核には相当の岩盤圧力がかかっていますよ」
「それは関係ありません。この船は無尽蔵の電力を発生できますので、耐圧力バリアーを常時全周展開しています」
「無尽蔵の電力?」
「ミニブラックホールを使った縮退炉を搭載しています」
「ブラックホール? 大丈夫なのですか?」
「心配ありません」
 少年達が次々に問いかけて、エダが親切に解説する。
 その説明を耳を澄まして聞く少年達。
『ドチラヘ向カイマスカ?』
 ロビーが行き先を確認する。
「トラピスト首都星トランターだ」
『了解。トランターヘ向カイマス』
 アムレス号は、速度を上げてワープして亜空間に消え去った。


 その頃、帝国艦隊は態勢を整えて追撃を始めた。
「星の爆発とほぼ同時に一隻の船が離脱したことが判明しました」
「やはり隠れていたか。追跡するぞ!」
「どちらへ?」
「奴らは海賊アーデッジの仲間と判明している。当然、船長を助けるために向かうはずだ。トランターだ!」
「了解。進路、トランター!」
 トランターへ転進する帝国艦隊だった。



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銀河戦記/波動編 第七章 Ⅲ 破壊命令

第七章


Ⅲ 破壊命令


 宇宙空間をアンツーク星へと向かっているケンタウリ帝国艦隊。
 旗艦アソシアシオン号艦橋。
「このアンツーク星で七名が消息不明となっている。しかも、海賊ギルドのガスパロによればロストシップを捜していたらしい。海賊アッデージ船長もここへ向かっていたらしい。何かあるとは思わないか?」
 ダミアン・ヴァランタン司令がアルベール・タサン副官に尋ねた。
「艦隊記録によれば、アンツーク星に降りた七名はレジスタントとして銃殺したとあります」
「銃殺か……」
「しかし、その後の調査で遺体が一体も見つからないそうです」
「何者かが引き取ったということだな。おそらく、その星のどこかに隠れていたのだろう」
「それはないと思います。数百年前のトラピスト叛乱時にも反乱軍の基地だとかで破壊つくされたはずです」
「また密かに再建されたのだろう。ことわざにもある、『雷が落ちた場所には二度と落ちない』とか、『一度捜査の入った場所は穴場だ』とか言うだろ。基地を再建するには都合がいいんじゃないか」
「で、再度破壊命令が出たというわけですね」
「そういうことだな」
 モニターに映るアンツーク星を見つめる司令。
 やがて星を取り囲むように展開する。
「一応地上をくまなく探査してみろ」
「了解。探査機を降ろします」
 数時間後探査機の調査報告が上がってくる。
「確かに金属反応や空洞の存在が認められます。やはり基地が再建されたようですね。そして空洞内を動き回る物体もあります」
「よし、地下施設破壊用の地中貫通核爆弾を用意しろ」
「了解。核式バンカーバスター用意!」
「地上からの反撃に注意しろよ」


 アレックス達のいる施設内。
『帝国艦隊ハ、軌道上ニ展開シテ攻撃態勢ニ入ッタモヨウデス』
 ロビーが逐一報告していた。
「反撃することはできないのですか?」
 ブルーノ・ホーケンが尋ねる。
「その必要はありません。全員、霊安室へ走って!」
 エダが叫ぶ。
「霊安室? どこですか?」
 ジミー・フェネリーの質問に、
「こっちだ。ついてきてくれ」
 アレックスが答えて、先に走り出した。
「待ってくれ!」
 遅れまいと、他の少年達もアレックスの後に続いた。
 アレックスの先祖の眠る霊安室へと急ぐ一行。

 惑星軌道上の艦隊旗艦。
「攻撃開始!」
 艦船から次々と発射される核爆弾。
 そして地中に入射すると同時に炸裂する。
「下からの反応はないか?」
「ありません。外れでしたか」
「ふむ……逃げられないとみて、諦めたのかな」

 地下施設、爆音と激しい震動の中、霊安室に何とかたどり着いた一行。
「ここが霊安室?」
 何も知らないマイケルが尋ねる。
 目の前には、冷凍睡眠カプセルに横たわる二体の遺体が安置されている。
「全員揃っていますね」
 エダが確認して、ロビーに指示する。
「昇降機を下げて」
『了解シマシタ』
 ガクンと揺れて、部屋ごと下へと降下を始めたようだ。
 と同時に、ふわりと身体が浮かび始める。
 慌てて近くの物に掴まる少年達。
「どこまで落ちるんだ?」
 少年達が疑問に思った通り、どうやら自由落下運動に近い速度で降下し、無重力状態となっているようだ。
 やがて落下速度が低下して停止した。
『到着シマシタ』
 扉が開いて、少年達の目の前に現れたのは、見たこともない計器類が立ち並ぶ宇宙船の船橋のような大部屋だった。
「凄い! ここって宇宙船なのか?」
 機械好きのフレッド・ハミルトンが、目を輝かせて計器類を見つめている。
 乗り物好きのマイケル・オヴェットは、宙返りをしながら操舵席と思われる椅子に着席した。
「これ、僕らが動かすことができるのかな?」
「そうみたいだね」
 と言いながら、アレックスは身近な席に座った。
「これから各自に役割分担を伝えます」
 エダが厳かに伝える。

 船長  アレックス
 操舵手 マイケル・オヴェット
 機関士 フレッド・ハミルトン
 通信士 ジミー・フェネリー 兼 炊飯係
 電探手 ルイーザ・スティヴァレッティ
 魚雷手 ブルーノ・ホーケン 兼 白兵
 砲手  エヴァン・ケイン 兼 戦闘機乗り

 そしてエダは、副官としてアレックスの補佐役となり、ロボットのロビーは少年達のお助け役に回った。



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銀河戦記/波動編 第七章 Ⅱ アーデッジ船長を救え!


第七章


Ⅱ アーデッジ船長を救え!


 アレックス達の傷もほぼ癒えて、施設内を散策していた。
 ここがどこで、ここが何のための施設なのか? まだ説明されていなかった。
 ここにいるのは、一人の女性とロボットだけのようだった。
 生活するうえで不自由なことはなかった。
 食堂に行けば、自動食事給仕機によって、必要なカロリーと栄養が整った食事が食べられるし、TVも観られる。
 折りしも、惑星トランターからの放送が食堂のTVに流されていた。
『……海賊アントニーノ・アーデッジ、共和国にて海賊の限りを尽くして暴れまわった挙句に、帝国内に侵入したところを逮捕されました。軍事裁判にて死刑が決定し、公開処刑されるそうです』
 アーデッジの名前が出たことを驚く少年達。
「トニーが公開処刑!」
 声を出して一番驚いたのはルイーザだった。
 ギャングをして荒らしまわっていた少年時代からの付き合いだったからである。
 公開写真を食い入るように見つめるルイーザ。
 その横顔を見つめながらアレックスがエダに尋ねた。
「ここに船があると言ってましたよね」
「はい。あります」
「その船は動かせるのですか?」
「動かせます」
 動かせると聞いて、他の少年達が乗り出してくる。
「船を、僕達に使わせてください!」
 マイケル・オヴェットが名乗りを上げた。
「どうなさるのですか?」
「船長を助けに行きたいんです!」
 それを聞いて他の者も同調する。
「僕からもお願いします。船長は恩人です。助けたいんです」
 エヴァン・ケインが熱弁する。
 僕も、俺も、少年達がエダに言い寄る。
「ここの責任者はアレックス様です。彼の判断に委ねます」
 とのエダの言葉で、アレックスの方を振り向く一同だった。
「アレックス君、君の意見を聞いてもいいかな」
 ルイーザが代表質問する。
「決まっている。僕が、船の事を切り出したのも、そういうことだよ」
「結論は?」
「もちろん、船長を助けに行く」
「やったあ! いいぞ!」
 小躍りして喜ぶ少年達。
「分かりました。船を出しましょう」
 エダが了承する。
「でも、今まで船を見かけませんでしたが?」
 フレッド・ハミルトンが尋ねる。
「どんな探査電波でも探知できない地下深くに隠してありますから」
「どうりでロストシップとして何世紀にも渡って見つからなかったのですね」
「しかし、錆びたりして動かないということはないのですか?」
「ここの施設が不自由なく使用できているのを見れば理解できると思いますが」
「それはそうですね」
 一同は納得して、一刻も早く船に乗船したいと思っていた。

『コノ小惑星ニ近ヅク艦隊ガアリマス』
 ロビーが警報を鳴らした。
「モニターに映してください」
『モニター、ニ映シマス』
 モニターに投影された艦隊は、ケンタウロス帝国の紋章を艦体に描いたトランター駐留艦隊であった。
「帝国艦隊だ!」



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