銀河戦記/波動編 第八章 Ⅰ 海賊ギルド基地へ

第八章


Ⅰ 海賊ギルド基地へ


 宇宙空間に出現するアムレス号と並走するフォルミダビーレ号。
『ワープアウト、完了シマシタ。フォルミダビーレ号モ一緒デス。追跡艦ノ反応ハ、アリマセン』
「フォルミダビーレ号に行く。待機していてくれ」
「かしこまりました」
 エダが答える。
 転送用端末を腰に差して、転送室に入るアレックス。

 数時間後、フォルミダビーレ号の会議室に集まった仲間達。
 ロストシップという手土産を持参したアレックスが議長を任されていた。
 まずはロストシップに関する話題から始まった。
 少年達がアンツーク星にたどり着いてから、銃殺事件を経てエダに救出されるまで。
 続いて、ガスパロの裏切りでフォルミダビーレ号と乗員達が、帝国艦隊によって捕縛され、アンツーク星にも破壊命令を受けて艦隊が派遣された。
 帝国艦隊の破壊攻撃を受けて、脱出用に発進したのがロストシップことアムレス号だった。誰もが探し求めていたロストシップが数百年ぶりに発見されたということだ。
 少年達の解説に聞き耳を立てるアーデッジら船員達。
 その後に続いて、フォルミダビーレ号と乗員に起こった出来事を話すアーデッジ。
「フォルミダビーレ号の乗員を代表して、命を救ってくれたことを感謝するよ」


「それでは、今後の方針について意見のある方はいらっしゃいますか?」
 議事進行させるアレックス。
「いいかな」
 アーデッジ船長が手を挙げる。
「どうぞ」
「個人的な恨みかも知れないが、俺はガスパロの野郎が許せない、一泡吹かせてやりたい」
 アーデッジ船長が言うと、
「俺も復讐したいぜ」
「生かしてはおかない!」
「賛成します」
 などと、口々に賛同する仲間達。
「分かりました。ギルド基地へ向かいましょう。到着までに作戦を考えます」
「いいだろう。みんな配置に着いてくれ! アッカルド頭領も救出するぞ」
「了解!」
 船長の指示で一斉に会議室を飛び出して、各自それぞれの持ち場へと駆け出した。
 一人残されたアレックスだったが、
「エダ、転送してくれ」
『かしこまりました』
 アムレス号へと転送されていった。


 フォルミダビーレ号の船橋。
「やはりこの席は落ち着くな」
 と言いながら、船長席の肘掛けを撫でまわしていた。
 それを見てクスクスと微笑むルイーザ。
「こほん」
 と軽く咳払いしてから、
「これよりギルド基地に向かう。総員、出航準備!」
 下令する。
「出航準備!」
 リナルディ副長が復唱する。
「自動航行システムを、ロストシップに同調してくれ」
「了解しました。ロストシップに同調させます」
 マイケル・オヴェットが応える。

 一方アムレス号では、
『フォルミダビーレ号ノ自動航行システム同調完了シマシタ』
「行き先を、国際中立地帯の海賊ギルド基地に設定」
『海賊ギルド基地ニ設定シマシタ』
「よろしい、発進せよ!」
『発進シマス』
 並んで航行していたアムレス号とフォルミダビーレ号。
 速度を上げたかと思うと同時にワープして消えた。



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銀河戦記/波動編 第七章 Ⅷ 囚人解放

第七章


Ⅷ 囚人解放


 宇宙空間を高速航行するアムレス号と並走するフォルミダビーレ号。
 アムレス号にはアレックスとエダが乗り込み、残り全員はフォルミダビーレ号に乗船している。
 アムレス号には、超高性能のAI光量子コンピュータが搭載されており、行き先を指定すれば完全自動航行もできる。なので、アレックスとエダそしてロボットのロビーだけでも運用できるのだ。
 フォルミダビーレ号の会議室に、アレックスと幹部が集まって協議を行っていた。
「このフォルミダビーレ号の乗員が、収容所星に護送されようとしている。それを助け出したいのだが」
 最初に口を開いたのは、アーデッジ船長だった。
 アムレス号と違ってフォルミダビーレ号は、機関部・砲術部やらの乗員が揃っていないとまともに運用できない。
「いいでしょう。救出作戦を行いましょう」
「そうか、助かるよ」
 アムレス号に連絡して、フォルミダビーレ号の乗員が護送されている船の位置を確認するアレックス。
 折り返し連絡があった。
『護送船ハ、ブザンソン収容所星ニ向カッテイマス。現在地は』
「よし、収容所星に向かってください。その情報をフォルミダビーレ号にも送ってください」
『了解』
 二隻が並んで速度を上げ、亜空間に消えた。


 再び、アムレス号とフォルミダビーレ号が姿を現した宇宙空間。
 並んで航行する二隻だが、その大きさを比較するとアムレス号はフォルミダビーレ号の三倍はあった。
 それは縮退炉を搭載しているので、炉心隔離のための容積を必要としているからだ。
『マモナク護送船団ニ追イツキマス』
「フォルミダビーレ号に連絡を」
 連絡を取り、二隻は共同作戦を発動した。
 数時間後、護送船団の後方三十二光秒の距離に配置した。
「アーデッジ船長を」
 スクリーンにアーデッジが映し出される。
「まもなく戦闘領域に入ります。護衛艦隊は、こちらが殲滅します。船長は、護送船に乗り込む準備をしてください」
『了解した』
 アーデッジ船長は、エルネスト・マルキオンニ白兵部隊隊長とブルーノ・ホーケンに白兵戦の用意をするように下令した。
『敵艦隊トノ距離、二十二光秒マデ接近シマシタ』
「全砲塔発射準備! 目標、護送船周囲の護衛艦隊。護送船には当てるな!」
『了解シマシタ』
 戦術コンピューターの射撃管制装置が動き出し、護衛艦隊を捕捉し目標ロックオンしていく。
『発射準備完了シマシタ』
「よし、発射!」
『発射シマス』
 アムレス号から一斉に発射された砲弾やミサイルが敵艦隊に襲い掛かる。

「突撃だ!」
 アーデッジがフォルミダビーレ号に下令する。
 護送船に向かって突進するフォルミダビーレ号。
 そして護送船の乗船口に横付けする。
「乗り込め!」
 エルネスト・マルキオンニ白兵部隊長が、乗船口を開いて突撃を命令した。
 護送船の乗員は戦闘未経験な者がほとんどだったので、マルキオンニ達は楽々と進撃できた。
 牢にたどり着いた。
 船内に響き渡る騒音に、何事かと鉄格子に顔を擦り付けるように、外の気配を探ろうとしている仲間達。
 そこへ足跡が近づいてくる。
「待たせたな」
 マルキオンニが声を掛けた。
 聞き覚えのある声に歓声を上げる仲間。
「その声は隊長!」
 姿を現すマルキオンニ。
「助かったのですね」
「話は後だ。今出してやる」
 錠前を銃で破壊して牢を開けて仲間を解放した。
「よし、船に戻るぞ!」
「分かりました」
 乗船口へと急ぐ一行。

 数時間後、囚われていた仲間を全員救出してフォルミダビーレ号に戻ってきた。
「増援部隊が向かってきているはずだ。一刻も早くここを離脱する。総員配置に着け!」
「了解!」
 総員、自分の部署へと駆け出した。

 数分後。
「総員。配置に着きました」
 フィオレンツォ・リナルディ副長が報告する。
「よろしい。アムレス号に繋いでくれ」
 スクリーンにアレックスが映し出される。
「こちらはすべて完了した。指示を出してくれ」
「分かりました。こちらから目標座標とコース設定を送ります」
 さらに数分後。
「コース設定完了。発進準備OKです」
 ウルデリコ・ジェネラーリ航海長が伝える。
「こちらは発進準備完了した」
 アレックスに連絡する。
「分かりました。では、行きましょうか」
「分かった」
 ゆっくりと動き出すアムレス号とフォルミダビーレ号。
 やがて亜空間にワープして消え去った。



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銀河戦記/波動編 第七章 Ⅶ 転送



第七章


Ⅶ 転送


 最後の銅鑼が鳴らされた。
 処刑人が、アーデッジに槍先を向けて構える。
 その時だった。
 上空をフォルミダビーレ号が通りかかる。
「あれは!」
 アーデッジの目に、戦闘機に追われているフォルミダビーレ号の雄姿が飛び込んでくる。さらには上空からのレーザー射撃が戦闘機を撃墜していく。
「味方が来ているのか?」
 呟くアーデッジ。
 その騒ぎで、処刑執行の手が止まっていた。
 しかし、
「構え!」
 進行役が処刑を促す。
 慌てて槍を構えなおす処刑人。
 進行役が手を上げる。
 その手を振り下ろすと処刑執行である。
 進行役が手を振り下ろそうとした、その瞬間だった。
 宮殿広場の柱の陰から、一条の光が進行役を襲った。
 バタリと倒れる進行役、そして二人の処刑人も倒れてしまう。
 光の出所に目を向ける場内の人々だったが、そこには誰もいなかった。
 倒れた処刑人を見つめるアーデッジは、一体何事かという表情をしていた。
「助けにきました」
 どこからともなく声がした。
「誰だ?」
 声のした方に振り向くアーデッジ。
「わたしよ」
 と、光学迷彩服のフードを外して顔を見せたのはルイーザともう一人、アレックスだった。
「ルイーザ、大丈夫だったのか!」
「ええ。今、縄を外すわ」
 ルイーザが縛り上げている縄を解いている間に、アレックスが近づく兵士を倒しまくっていた。レーザー射撃がアレックスを狙ってくるが、光学迷彩服はレーザーを弾いていた。
「外れた!」
 アーデッジを縛り上げていた縄が解けて自由になった。
「これからどうする?」
 アーデッジが質問する。
「任せてください」
 アレックスはそう言ってから、端末に向かって、
「ロビー、転送してくれ」
『了解シマシタ。転送ビーム照射シマス』
 上空から一条の光が、船長ら三人を照らした。
 次の瞬間、三人の姿が薄れてゆき消え去った。


 アムレス号の転送室。
 室内が輝いて三つの影が現れ、それはアレックスら三人の姿となった。
 唖然としているアーデッジ船長。
「転送……されたのか?」
 一歩足を踏み出すと、そこはアムレス号の船橋だ。
 見たこともない計器類が並んでいた。
「ここは?」
 船長が尋ねると、
「ロストシップの船橋です」
 アレックスが平然と答える。
「ロストシップ? 見つけたのか?」
 キョロキョロと周囲を見回すアーデッジ船長。
「見つけたというよりも、向こうから僕らを発見してくれたんです」
 アレックスは、アンツーク星にたどり着いてからの詳細を説明した。
「そういうことか……一応でかした、というべきかな」
 当初の目的である、『ロストシップの捜索』は完遂したことになる。
「それで、そちらの女性は?」
 目の前の美しい女性のことを尋ねる。
「この船の管理者(administrator)のエダさんです」
 軽く会釈するエダ。
「自分は、アントニーノ・アッデージ。フォルミダビーレ号の船長です。助けていただき感謝します」
 握手を求めるために手を差し出すアーデッジ船長。
 それに応えてアーデッジの手を握るエダ。
「フォルミダビーレ号は?」
「この船の隣にいます」
 パネルスクリーンに併進するフォルミダビーレ号が映し出される。
「仲間も乗っているのか?」
「トランターに囚われていた仲間は全員救い出して乗船しています」
「そうか……」
 その時、警報が鳴った。
『前方ニ艦影アリ!』
 ロビーが緊急報告する。
「戦闘態勢に入れ!」
 すかさず指令を下すアレックス。
『戦闘態勢ニ入リマス』
「俺の船に行かせてくれないか」
「いいでしょう。この端末を持って転送室へ」
「分かった」
 飛び込むように転送室に入るアーデッジ。
 受け取った端末は、携帯型受信転送システムで五万キロの範囲内ならどこでも転送できるようにする。

 フォルミダビーレ号の船橋に転送されてきたアーデッジ船長。
 それを見た仲間達が、
「船長! お帰りなさい」
 口々に叫びながら駆け寄ってくる。
「挨拶は後にして戦闘配備だ!」
「了解!」
 そう言って自分の部署に戻っていった。
「機関部のシステムを遠隔操作にセットしろ」
「了解。機関部システムを遠隔にセットします」
 フォルミダビーレ号には、船橋要員の幹部だけしかおらず、機関部などの下々の船員は乗船していないからである。
「敵艦隊の勢力分析は!」
「戦艦二隻、巡航艦七隻、駆逐艦十三隻です」
 すでに調べていたのであろう、即座に答える電探手のルイーザ。
 その後、アンツーク星から態勢を整えて追撃してきた艦隊が後方に迫っていた。前門の虎後門の狼、挟み撃ち状態であった。
「分かった。ロストシップに繋いでくれ」
「繋ぎます」
 と、レンツォ・ブランド通信士。
 スクリーンにアレックスが映し出される。
「ここはどうするかね?」
 ロストシップにいるアレックスに、徹底抗戦するか、速力差でとんずらするかを尋ねる。
 というよりも、ロストシップの戦闘性能を知りたいという欲求もあった。
「正面突破しましょう」
 徹底抗戦でもなく、敵艦隊の正面に穴を開けての突破作戦である。
「分かった」
「こちらの攻撃で敵艦隊に穴を開けます。全速力で抜け出しましょう」
「了解した」
「ロストシップから敵艦に向けて通信が行われています」
「通信内容は?」
「はい。『道を開けよ。さもなくば殲滅する』です」
「敵の反応は?」
「『ふざけるな!』です。そしてロストシップからは『それでは強引に開かせていただきます』と答えていました」
「なるほどな」
 数分後、ロストシップからミサイルが発射される。
 敵艦から迎撃ミサイルが発射されるが、ことごとく回避してゆき目標戦艦に襲い掛かった。クラスター爆弾だったらしく、接近直前に子弾頭が四方に散って周囲の艦船をも巻き込んだ。
「前方に空域発生しました」
「よし! 全速前進で開いた穴に飛び込め!」
 速度を上げたフォルミダビーレ号に続いて、ロストシップも加速して追従する。



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