銀河戦記/波動編(銀河帝国盛衰記)黎明期 プロローグ

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図=Wikipedia 銀河系より

銀河帝国盛衰記(仮題)黎明期


プロローグ

 我々の太陽系が所属する天の川銀河は、数本の渦巻きの形状をしていることが知られている。

 銀河系は、肉眼でも観察されるように恒星や惑星や星雲などのように星間物質が重力収縮によって濃密に密集し形成された無数の星々によって構成されている。それらの星々の間の一見何もないかのような空間にも僅かながらも重力収縮で残された希薄な星間ガスが存在する。星間ガスは収束や拡散を繰り返しながら銀河面方向に流れている。ところが、銀河の中心には巨大な銀河ブラックホールの存在があり、それが及ぼす重力と銀河の回転により星間ガスの流れに波動が生じる。その波動によって、銀河には星の密集した空間と星のない空間が渦巻状に並んで、腕とよばれる構造をなしている。
 この腕の発生は、地球上において重力・自転・温度差などの影響によって、大気が循環しジェット気流が蛇行して低気圧や高気圧の発生が促されたり、熱帯雨林帯・中緯度乾燥地帯などが発生したりすることを考えると理解しやすい。上昇気流の生ずる低気圧下では雲が発生し、下降気流の生ずる高気圧下では雲が消失する。
 これと同様なことが宇宙規模で恒星の発生と消失が繰り返されて、あの銀河の腕として観察されるのである。波動によって生じた衝撃波が恒星を消滅させる結果として、星のない空間が渦巻状にできるというわけである。地球のような球体表面上での大気循環では、緯度の変化によって雲の発生に違いがでるが、偏平銀河面ではそれが渦巻状に引き起こされる。

 渦状腕は、大きく五つの腕を構成している。
 ペルセウス腕、いて・りゅうこつ腕、たて・ケンタウルス腕、じょうぎ腕、そして我々の所属するオリオン腕がある。
 我々地球人類は、最も小さいオリオン腕の中の太陽系第三惑星で生まれ発展してきた。

 太陽系を脱出した人類が生息域を広げてゆき、銀河系渦状腕「オリオン腕」全域に行き渡った。
 軍事国家ケンタウルス帝国は、周辺国家への侵略を開始して次々と属国として治めていった。
 一部反抗勢力の努力の甲斐もなく、全オリオン腕がケンタウルス帝国の支配下に入った。

 そんなケンタウルスから逃れるように、一人の若者を中心として移民開拓船が、渦状腕間隙に掛る「タルシエンの橋」を伝って、いて・りゅうこつ腕へと渡った。
 いて・りゅうこつ腕の開拓は順調に進み、工業都市国家トリスタニア共和国の成立となった。

 一通りの発展を見届けた若者の子孫は、いて腕からさらに銀河の内側に広がる渦状腕である『たて・ケンタウルス腕』へと渡る新航路『ルビコンの橋』を発見して移民を開始した。
 後の専制君主国家アルデラーン公国の首都星となる惑星『アルデラン』に到達し発展していった。
 数百年後、たて・ケンタウルス腕全域に人々は生き渡り、アルデラーン公国を建国した。

 一方、ケンタウルス帝国も外側に広がるペルセウス腕へと渡る新航路『レマゲンの橋』を開発して移民を開始した。

 こうして、三つの国家が覇権を争う時代が到来したのである。



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