銀河戦記/波動編 第三章 Ⅲ 君が指揮しろ!


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第三章


Ⅲ 君が指揮しろ!


 ゆっくりと離れてゆくレ・ウンボルト号。
「フォガッツィ殿……。あんなこと言ってますけど、こちらが例の船を見つけたら横取りするつもりでよ」
 フィオレンツォ・リナルディ副長が怒りの声で言った。
「まあ、ありうるだろうな」
「奪われる前に我々の手で運用してしまえばいいでしょう」
「未知の宇宙船だぞ。船の動かし方から兵装の扱い方も分らんだろ? 技術力のある専門家でもいなけりゃ無用の長物になる」
「なるほど」

 数時間後、惑星地表の探査が終了。
「目立った穴、金属反応とも感知できません。地下水脈も見当たらず極普通の岩石惑星ですね」
 地質学者のテオドージオ・バトーニが報告する。
「無駄足だったか」
「次の惑星に向かいますか?」
「どこだ?」
「恒星アブルッツォ第二惑星ペスカーラになります」
「惑星名がついているのか? 調査も済んでいるのではないか?」
「いいえ。ペスカーラは巨大氷惑星。赤色矮星のアプルッツォからも遠く、届く光も弱く地表温度は氷点下二百度ほどですので利用価値なしとして調査放棄されているのです」
「つまり船などを隠すには都合が良いとも言えるな」
「調査しますか?」
「おう。やってくれ」
 氷惑星の調査が開始される。
 しかし、表面はすべて氷で覆われており、軌道上からのレーダー探知の電磁波は反射してしまう。
 惑星表面の至る所に地震発生装置と観測機を降ろして地震波による探査が開始される。
 地表は通常の氷で覆われているが、中心部は数百万気圧にして数千度の高温となる氷(多型氷XⅨ)の層で出来ており、その上層には超イオン氷、さらにその上には導電性のある水の層となっていて磁力線を発生させている。
「どうだ。何か見つかったか?」
「だめです、何も見つかりません」
「仕方あるまい。次に行こうか」
 と、その時だった。
「後方に感あり!」
 ルイーザが叫ぶ。
「なんだ、ガスパロが戻ってきたのか?」
「違います! ケンタウロス帝国辺境艦隊のようです。一直線でこっちに向かっています」
「逃げるぞ。調査機器は放置する」
「やばいです。前方にも艦隊、囲まれています」
 ルイーザが悲鳴を上げる。
「ガスパロの奴が通報しやがったようですね」
「まさか仲間を売るなんて」
「奴ならやりますよ」
 非難囂(ひなんごうごう)々の声が上がる。
「さてと……。この緊急事態をどうやって切り抜けるかだな」
 国家間において軍艦同士が戦い捕虜となった者には、国際捕虜条約に則って生命が保証される。
 しかし海賊行為をなす者には、条約は適用されない。
 宣戦布告なしに攻撃したり、捕らえた海賊を処刑するのも違法ではない。
 考え込むアーデッジ船長。
 そしてアレックスを見つめると、
「アレックス君。君が操艦してみろ」
「自分がですか?」
「そうだ、任せる」
 運命をアレックスに委ねる船長だった。
「逃げるのは得意だが、現状では逃げ切るのは不可能だ。我々は軍艦と戦った経験がないが、君は士官学校進学のために戦術理論などを猛勉強したのだろう? その知恵を貸してくれ」
「分かりました」
 淡々と答えて、正面に向き直り下令するアレックス。
「船長の命により、自分アレックスが指揮を執る。総員戦闘配備!」
 船内に警報音とアレックスの指揮命令の声が鳴り響く。
 各自の受け持ち区域へと駆け回る船員たち。
 甲板ではモレノ・ジョルダーノが戦闘機発進準備を進めている。
 戦闘機に乗り込むエヴァン・ケイン。
「ガキ達の腕前を見せてもらおうか」
 モレノは呟く。



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