銀河戦記/波動編 第二章 Ⅶ ガスパロ・フォガッツィー
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第二章
Ⅶ ガスパロ・フォガッツィ
親父と別れて船に戻る途中、展望台デッキを歩いているアーデッジ船長。
ふと外を見ると、大型の海賊船が基地に入港するところだった。
「奴が戻ってきたか……」
嫌な予感を抱きながら、船着き場に戻る船長。
「お帰りなさいませ」
アレックスが乗船口に立っていた。
「出迎えごくろうさん」
その時、背後から声が聞こえた。
振り返ると、ガラの悪い海賊が近寄ってくる。
「よお、アッデージじゃないか」
声を掛けてきたのは、ガスパロ・フォガッツィという荒くれ者で、商船襲撃略奪から人身・奴隷売買や麻薬・覚せい剤取引などありとあらゆる悪行、そして目的のためなら人殺しも容赦なかった。
彼は、カポ・レジーム(capo régime)と呼ばれる幹部でもあった。
現在アンダー・ボス(若頭に相当)であるミケーレ・ナヴァーラの直属配下であるが、その地位を虎視眈々と狙っているという噂がある。
一級下のソルジャー(soldato)であるアッデージは、腰を軽く折り一歩下がって挨拶をする。
「これはこれは、フォガッツィ殿。ご機嫌宜しゅう」
「うむ……。そこの若い奴は新入りか?」
「そうです」
「にしては、いやに若いな」
「逸材ですよ」
「そうか、まあ頑張りたまえ」
「ありがとうございます」
アレックスが返答すると、一瞥して立ち去ってゆく。
船橋に戻ってきた船長。
「変わったことはなかったか?」
フィオレンツォ・リナルディ副長に尋ねる。
「これといってはありませんが、まあガスパロの奴が帰ってきたってくらいですかね」
「ああ、奴と出会ったよ」
「何もなければいいんですが」
「そうだな……。ともかく君は休息に入ってくれ。ご苦労だった」
「はい。休ませていただきます」
半舷上陸を与えられて退室するリナルディ副長。
「船の点検・整備完了しました」
見習い副長のアレックスが報告する。
「うむ。六時間後に再び出航する。各員に伝達してくれ」
「了解。六時間後の出航、各員に伝達します」
船内放送などで、各部署へ出航予定時間を伝達するアレックスだった。
その様子を見て感心する船長。
「だいぶ慣れてきたようだな」
「その調子だよ。そのうちに正式の副長に据えるつもりだ」
「ありがとうございます。ご期待に沿えるように努力します」
「まあ、頑張ってくれ」
六時間後。
船橋にオペレーターの全員が揃って出航準備可能となっていた。
「出航の時間になりました」
アレックスが伝える。
「よし、出航する」
アッデージ船長が下令すると、
「船台ロック解除します」
「エンジン始動」
「機関エネルギーゲージ三十パーセント」
オペレーターの報告を受けてアレックスが指示を出す。
「微速前進せよ!」
「了解。微速前進します」
マイケル・オヴェットが応答する。
船台を離れゆっくりと前進するフォルミダビーレ号。
『こちら管制、フォルミダビーレ号へ。ゲート28番から出航せよ』
「了解。ゲート28番から出航します」
レンツォ・ブランド通信士が応答する。
「28番ゲートより出航!」
マイケルが復唱して、船を旋回させて28番ゲートへと向かう。
「28番ゲート通過!」
やがて宇宙空間へと飛び出すフォルミダビーレ号。
「どちらへ向かいますか?」
アレックスが尋ねると、
「ロストシップの姿が最後に確認されたピトケアン星域へ向かう」
アッデージが答える。
「ピトケアン星域に進路を取れ!」
「進路、ピトケアン星域!」
アレックスとマイケルが復唱して、ピトケアン星域へと進路を取った。
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