銀河戦記/波動編 第二部 第三章 XI 発射!
第三章
XI 発射!
陽イオン粒子砲発射制御室でも訓練は続いていた。
こちらでは、ブラスの電荷を持つ核子(バリオン)、主として陽子を扱う施設である。電子に比べて桁違いに重い粒子を扱うため、何段にも分けて加速させる必要がある。前段直線加速装置である程度加速させてから、円形加速器でさらに加速しさらに終段加速に直線加速を使用する。
そのまま単独で発射させても、陽子砲として破壊力は甚大であるが、磁場のある場所では使用は制限される。
また、陽電子も扱うことができるという優れものである。電子・陽電子対消滅による光子砲(γ線)として使用できる。
この二つの荷電粒子砲において、二基による対消滅砲とするか、単基で陽電子砲などとして戦うかを多種選択できる。
アムレス号艦橋。
「粒子砲発射準備完了しました!」
カトリーナが報告する。
「小惑星帯に向かってくれ。どこでも良い」
「了解。取り舵十五度、小惑星帯に向かう」
「取り舵十五度」
ジャレッド・モールディング操舵手が復唱する。
ゆっくり移動して小惑星帯へと向かうアムレス号。
「小惑星帯が見えてきました」
「停船せよ。中性粒子砲を撃つ! 陽子・電子粒子加速器を開け! 目標前方の小惑星帯!」
「停船します」
「粒子加速器に陽子及び電子を投入!」
荷電粒子砲発射制御室では、本番の発射体制に入った。
「陽子加速器準備完了!」
「電子加速器準備完了!」
すぐに双方から準備完了が伝達される。
「秒読み! 十秒から」
アレックスの指示の下、カトリーナが秒読みを開始する。
「発射十秒前。九、八……二、一」
「発射!」
アムレス号艦首から一筋の眩い光が放たれ小惑星帯へと突き進む。
小惑星の一つを直撃して、その表面を木っ端みじんに破壊した。
「命中しました!」
結果報告するカトリーナ。
「続いて、反陽子・陽電子衝撃砲を試してみる。ロビー頼む」
『了解シマシタ』
反陽子も陽電子も反物質である。
取り扱いには厳重な管理が必要であるから、人的ミスを防ぐために原則コンピューター制御される。
『反陽子・陽電子衝撃砲、発射準備完了シマシタ』
ロビーが手っ取り早く手配する。
「よし、撃て!」
『発射シマス』
再び、眩い光の筋が突き進むが、今回は反物質なので宇宙空間に微かに存在する物質と反応している。
やがて小惑星に到達した途端、丸ごと完全に蒸発させた。
砲撃の瞬間は、艦内の至る所のモニターに映し出されていた。
「すごい! 一撃だ!」
感嘆の声を上げる乗員達。
また惑星ベルファストでも、その映像は受信されていた。
カーライル子爵のいる宮廷でもたちまち話題騒然となった。
「我が艦でも、あれくらいの小惑星を破壊できるか?」
軍部大臣に尋ねる子爵。
「いえ。あれほどの破壊力のある兵器は搭載されていません」
「そうか。で、あの武器の詳細は分かるか?」
「おそらくは、荷電粒子砲でしょう」
「イオン粒子を電磁気で加速してぶっ放すという奴だな」
「その通りです」
「しかし、なんでこんな映像を流すんだ。軍事機密だろ?」
「自国の軍事力を見せつけたかったのでしょう」
「なるほど。逆らえば我が星もあの小惑星のようになるぞ、と脅迫か」
「御意にございます」
深いため息をつく子爵だった。
思いは一つ。
選択を間違えたかな……
ということだった。
今からでも伯爵陣営に鞍替えした方がいいかも知れないと心変わりしているようだった。
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豆知識
荷電粒子砲は、イオン粒子などを電磁気力などによって加速射出してそのエネルギーで対象物を破壊する。
兵器としてではなく、エネルギーを推進力に変えて利用したのがイオンエンジン。小惑星イトカワ&リュウグウへのサンブルリターンを成功させた人工衛星「はやぶさ」「はやぶさ2」に搭載された。
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