銀河戦記/波動編 第二章 Ⅵ 親父

第二章



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Ⅵ 親父


 海賊達から親分とかボスとか呼称される、基地の総元締めに会いに行くアントニーノ・アーデッジ船長。
 大きな扉の前で立ち止まる船長。
「アーデッジ、参上しました」
 扉に向かって話すと、
『入っていいぞ』
 返答があって、扉が自動的に開いた。
 ゆっくりと中へ入ってゆく船長。
「失礼します」
 その人は、多くの荒くれ者をまとめ上げて海賊ギルドを組織し、国際中立地帯の秘密の場所に要塞のような巨大な基地を建造した。
 大幹部・幹部以下の有力者を従えて、下部組織を含めて数十万人にも及ぶ組織の頂点にあった。
 海賊達のボスなのだが、上納金さえ払えばそれを得る方法には一切関知しない。略奪もあれば、麻薬・覚せい剤密売、人身・奴隷売買など各自の自由だ。
 彼の名前は、アントニノ・ジョゼフ・アッカルド。
 豪勢な食事を前にして優雅に座っている。
「おお、来たか。まあ座れや、トニー」
 船長の愛称で呼びながら着席を勧める。
 勧められるままに、対面して着席する船長。
「食うか?」
「頂きましょう」
 遠慮なく食事に手を付ける船長。
「上納金は確保できたか?」
「無事に納められました」
「それは上々」


 二人が出会ったのは、アーデッジが仲間と共に宇宙商船に密航した当時のことだった。

 海賊船フォルミダビーレ号(for·mi·dà·bi·le)が商船に横付けされている。
 商船内の通路には、乗員が大勢倒れている。
 その中をゆうゆうと闊歩するアッカルド船長。
 携帯端末が鳴り、部下からの報告が入る。
『ブリッジを制圧しました』
「よし、いつも通りだ。俺は荷物室に向かう」
『了解』
 端末をしまって荷物室へと向かう。
 そこではすでに、荷物の略奪が行われていた。
 片っ端らから荷物を引き出して運び出していく。
「船長。あまり期待できるような獲物はありませんぜ」
 賊の一人が嘆く。
「そうか。まあ、今回は食料さえあれば問題ない」
 どうやら食料不足からの略奪行為だったようだ。
 と、一人の賊が叫ぶ。
「船長! こちらへ来てください」
「どうした」
 船長が声を出した方へ歩み寄ると、
「密航者がいました」
 そこには四人の少年が蹲(うずくま)っていた。
「ほう……。密航か」
「どうしますか?」
「ここに残しておいてもしょうがねえだろ。奴隷商人に売れるだろうから、連れていけ!」
「分かりました」

 数時間後、賊達は海賊船に戻った。
 少年達の身元調査が行われ、船長の元に報告される。
「ガキのくせにこんな物を持っていましたよ」
 と宝石を手渡す部下。
「こいつは、数億の価値があるな。どうやら訳ありのようだな」
「はい。とんだ食わせ物でしたよ」
 宝石を鑑定しながらもう一度報告書に目をやる船長。

 アントニーノ・アーデッジ
 フィロメーノ・ルッソロ
 エルネスト・マルキオンニ
 ルイーザ・スティヴァレッティ

「アントニーノ・アーデッジか……。俺と似通った名前だな。もしかしたら血が繋がっているのかもだ」
 誰に言うともなく呟くアッカルド。
「こいつら国際指名手配されてますぜ」
「指名手配だと? 一体何をやったんだ」
「つい先日、現金輸送車を襲って十三億を強奪したようです」
「強盗か……やるな。つまり高跳びするために密航したということか……。こいつらなら仲間にするのも有りだな」

 こうして海賊の仲間となったアーデッジ達だった。
 アッガルドを親父と呼び、海賊船フォルミダビーレ号の乗組員として、活躍する日々が続く。
 十数年経ち、アッカルドが建設中だった海賊基地が完成して、総元締めとして多々ある海賊のまとめ役に就任した。
 そして、フォルミダビーレ号をアーデッジに譲ったのである。

 再び時間は舞い戻る。
「ところで、ロストシップについて何か分かったかね?」
 唐突に話題を変えるアッカルド。
 実は、ロストシップのことをアーデッジに話したのがアッカルドなのだ。
「残念ながら……」
「そうか」
「それはともかく、有望な新人を仲間にしましたよ」
「仲間?」
「親父が、ストリートギャングだった俺達を仲間にしてくれた状況に良く似ています」
「ほほう」
「奴隷商人に売り飛ばそうと捕まえたのですが、なんと飛空艇を奪取して脱走してしまうという肝っ玉のある少年達です」
「飛空艇を奪っただと?」
「すぐに捕まえたのですが、とにかく行動力のある少年です」
「なるほど、会ってみたいな」
「いずれ会わせますよ」



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