難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

ウェゲナー肉芽腫症/認定基準(公費負担)

特定疾患情報診断・治療指針

25.ウェゲナー肉芽腫症

1 主要症状

(1) 上気道(E)の症状
 E:鼻(膿性鼻漏,出血,鞍鼻),眼(眼痛,視力低下,眼球突出),耳(中耳炎),口腔・咽頭痛(潰瘍,嗄声,気道閉塞)
(2) 肺(L)の症状
 L:血痰,咳嗽,呼吸困難
(3) 腎(K)の症状
 血尿,蛋白尿,急速に進行する腎不全,浮腫,高血圧
(4) 血管炎による症状
 @ 全身症状:発熱(38℃以上,2 週間以上),体重減少(6 カ月以内に6 s以上)
 A 臓器症状:紫斑,多関節炎(痛),上強膜炎,多発性神経炎,虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞),消化管出血(吐血・下血),胸膜炎

2 主要組織所見
 @ E,L,K の巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎
 A 免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成腎炎
 B 小・細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎

3 主要検査所見
 Proteinase-3(PR-3)ANCA(蛍光抗体法でcytoplasmic pattern,C-ANCA)が高率に陽性を示す。

4 判定
(1) 確実(definite)
 (a) 上気道(E),肺(L),腎(K)のそれぞれ1 臓器症状を含め主要症状の3 項目以上を示す例
 (b) 上気道(E),肺(L),腎(K),血管炎による主要症状の2 項目以上及び,組織所見@,A,Bの1 項目以上を示す例
 (c) 上気道(E),肺(L),腎(K),血管炎による主要症状の1 項目以上と組織所見@,A,Bの1 項目以上及びC(PR-3)ANCA 陽性の例
(2) 疑い(probable)
 (a) 上気道(E),肺(L),腎(K),血管炎による主要症状のうち2 項目以上の症状を示す例
 (b) 上気道(E),肺(L),腎(K),血管炎による主要症状のいずれか1 項目及び,組織所見@,A,Bの1 項目を示す例
 (c) 上気道(E),肺(L),腎(K),血管炎による主要症状のいずれか1 項目とC(PR-3)ANCA 陽性を示す例

5 参考となる検査所見
@ 白血球,CRP の上昇
A BUN,血清クレアチニンの上昇

6 識別診断
@ E,L の他の原因による肉芽腫性疾患(サルコイドーシスなど)
A 他の血管炎症候群(顕微鏡的PN,アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss 症候群)など)

7 参考事項
@ 上気道(E),肺(L),腎(K)のすべてがそろっている例は全身型,上気道(E),下気道(L),のうち単数もしくは2つの臓器にとどまる例を限局型と呼ぶ。
A 全身型はE,L,K の順に症状が発現することが多い。
B 発症後しばらくすると,E,L の病変に黄色ぶどう球菌を主とする感染症を合併しやすい。
C E,L の肉芽腫による占拠性病変の診断にCT,MRI,シンチ検査が有用である。
D PR-3 ANCA の力価は疾患活動性と平行しやすい。稀にP(MPO)ANCA 陽性を認める例もある。

表:ウェゲナー肉芽腫症の重症度分類
1度 上気道(鼻,耳,眼,咽喉頭など)及び下気道(肺)のいずれか1 臓器以上の症状を示すが,免疫抑制療法(ステロイド剤,免疫抑制薬)の維持量あるいは投薬なしに1 年以上活動性の血管炎症状を認めず,寛解状態にあり,血管炎症状による非可逆的な臓器障害を伴わず,日常生活(家庭生活や社会生活)に支障のない患者。
2度 上気道(鼻,耳,眼,咽喉頭など)及び下気道(肺)のいずれか2臓器以上の症状を示し,免疫抑制療法を必要とし定期的外来通院を必要とするが血管炎症状による軽度の非可逆的な臓器障害(鞍鼻,副鼻腔炎など)及び合併症は軽微であり,介助なしで日常生活(家庭生活や社会生活)を過ごせる患者
3度 上気道(鼻,耳,眼,咽喉頭など)及び下気道(肺),腎臓障害あるいはその他の臓器の血管炎症候により,非可逆的な臓器障害※1 ないし合併症を有し,しばしば再燃により入院又は入院に準じた免疫抑制療法を必要とし,日常生活(家庭生活や社会生活)に支障をきたす患者。
4度 上気道(鼻,耳,眼,咽喉頭など)及び下気道(肺),腎臓障害あるいはその他の臓器の血管炎症候により,生命予後に深く関与する非可逆的な臓器障害※2 ないし重篤な合併症(重症感染症など)を有し,強力な免疫抑制療法と臓器障害,合併症に対して,3ヵ月以上の入院治療を必要とし,日常生活(家庭生活や社会生活)に一部介助を必要とする患者。
5度 血管炎症状による生命維持に重要な臓器の非可逆的な臓器障害※3 と重篤な合併症(重症感染症,DIC など)を伴い,原則として常時入院治療による厳重な治療管理と日常生活に絶えざる介助を必要とする患者。これには,人工透析,在宅酸素療法,経管栄養などの治療を必要とする患者も含まれる。

※1:以下のいずれかを認めること
a. 下気道の障害により軽度の呼吸不全(PaO2 60〜70Torr)を認める。
b. 血清クレアチニン値が2.5〜4.9mg/d ・程度の腎不全。
c. NYHA 2 度の心不全徴候を認める。
d. 脳血管障害による軽度の片麻痺(筋力4)。
e. 末梢神経障害による1 肢の機能障害(筋力3)。
f. 両眼の視力の和が0.09〜0.2 の視力障害。

※2:以下のいずれかを認めること
a. 下気道の障害により中軽度の呼吸不全(PaO2 50〜59Torr)を認める。
b. 血清クレアチニン値が5.0〜7.9mg/d ・程度の腎不全。
c. NYHA 3 度の心不全徴候を認める。
d. 脳血管障害による著しい片麻痺(筋力3)。
e. 末梢神経障害による2 肢の機能障害(筋力3)。
f. 両眼の視力の和が0.02〜0.08 の視力障害。

※3:以下のいずれかを認めること
a. 下気道の障害により高度の呼吸不全(PaO2 50Torr 未満)を認める。
b. 血清クレアチニン値が8.0mg/d ・以上の腎不全。
c. NYHA 4 度の心不全徴候を認める。
d. 脳血管障害による完全片麻痺(筋力2 以下)。
e. 末梢神経障害による3 肢以上の機能障害(筋力3),もしくは1 肢以上の筋力全廃(筋力2 以下)。
f. 両眼の視力の和が0.01 以下の視力障害。


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