難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

皮膚筋炎及び多発性筋炎/診断・治療診断(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■概念・定義
主として四肢近位筋群、頸筋、咽頭筋などの対称性筋力低下をきたす横紋筋のびまん性炎症性筋疾患である。特徴的な皮疹を呈するものは皮膚筋炎という。

■疫学
全国疫学調査の結果、1991年年間推計受療患者数は、皮膚筋炎3,000名、多発性筋炎3,000名であった。年間発病率は100万人当たり2〜5人と推測されている。発症年齢は、5〜15歳に小さな、40〜60歳に大きなピークがある。特に高齢者では悪性腫瘍合併例がみられる。

■病因
皮膚筋炎・多発性筋炎はウイルス感染、日光暴露あるいはある種の薬剤服用後に本症が発症することがあることから、その病因には遺伝子素因に加えて何らかの環境要因が関与していることが推測されている。その結果、横紋筋を中心に過剰な免疫応答が起こり、組織障害が惹起されるものと推測されている。

■症状
(1)全身症状
発熱、全身倦怠感、易疲労感、体重減少などである。

(2)筋症状
当初は筋肉痛がよくみられる。また、四肢近位筋、頸筋などの筋力低下がみられることが多い。そのために、階段昇降、しゃがみ立ち、重いものの持ち上げ、起床時の頭の持ち上げなどが困難となる。咽頭筋が侵されると構口障害、食道横紋筋が侵されると嚥下困難が起こる。進行すると、筋萎縮が著明となる。

(3)皮膚症状
皮膚筋炎では、上眼瞼を中心に出現する浮腫性かつ紫紅色の紅斑をヘリオトロープ疹と呼ぶ。ほとんど痒みを伴わないのが特徴であり、日光暴露で憎悪することがある。手指関節伸側の落屑性紅斑はゴットロン徴候と呼ぶ。これらの発疹はいずれも皮膚筋炎に特徴的にみられる。このほか、爪周囲紅斑、爪床部小梗塞、皮膚の難治性潰瘍なども皮膚筋炎でよくみられる。レイノー現象もみられる。小児の皮膚筋炎では、指尖潰瘍や皮下石灰化などが多くみられる。

(4)肺病変
間質性肺炎は予後を左右する病変である。特に急性発症例の中には、急速に進行して呼吸不全となって死亡する予後不良の病型がある。慢性に経過する間質性肺炎では、自覚症状としては乾性咳嗽と息切れがみられ、理学的所見では両側下肺野に捻髪音を聴取し、胸部X線写真では両側下肺野を中心に粒状・線状・網状影がみられる。肺機能検査では拘束性障害のパターンを呈する。このほか、進行例では誤嚥性肺炎がみられることがある。

(5)心病変
進行例では、心筋炎や線維化による不整脈、心不全などがみられることがある。稀に心膜炎もみられる。

(6)その他
関節痛はよくみられるが、関節炎は稀である。ときにリンパ節腫脹をみる。悪性腫瘍の合併については上述のとおりである。小児の皮膚筋炎では、血管炎に伴う症状として、消化器潰瘍による腹痛、吐血、下血などを伴うことがある。

■治療
基礎療法としては、安静の保持が大切である。ただし、筋萎縮を防止する目的で関節の屈伸運動を行わせることはよい。筋力低下が著しいときには、良肢位の維持、誤嚥の防止などが必要となる。

定型的な皮膚筋炎・多発性筋炎に対しては副腎皮質ホルモンの経口投与が行われる。プレドニゾロン換算で1日40〜60mgが初回投与量として用いられる。2〜4週間にわたって初回投与量を継続したのち、理学的所見、検査所見の改善を確認した後、2週間に10%の割合で漸減する。

検査所見としては、血清中の筋原性酵素(CK、アルドラーゼ、LDH、GOT、GPT)および尿クレアチン/クレアチニン比が活動性の指標判定に有用である。活動期には血清ミオグロビン値も上昇する。筋力萎縮が著しい場合には、筋力の回復は筋原性酵素の回復よりも更に遅れる。

初期投与量に対して反応が悪い場合には、投与量の50%増しのステロイド剤を経口投与するか、あるいはステロイド・パルス療法が行われる。

治療中に筋原酵素が上昇する場合は、急激な減量、急性憎悪の前兆あるいは運動負荷のかけすぎのいずれかである。

ステロイド剤に反応が悪い場合には、免疫抑制剤の併用が試みられる。メソトレキセート ( 週 5〜15mg、経口投与あるいは筋注 )かアザチオプリン(1日50〜100mg経口投与)が用いられることが多い(保険適応ではない)。γ-グロブリン大量静注療法の有効性も指摘されているが、保険適応ではない。進行性の間質性肺炎を合併している症例では、早期よりシクロホスファミド大量静注療法を反復して行うことが試みられている。また、シクロスポリン投与も試験的に行われている。これらもいずれも保険適応外である。

■予後
5年生存率は60〜80%であるが、近年、早期発見・早期治療が可能になったことに加えて新たな治療法の開発により本症の予後は更に改善中である。しかし、一部の症例は治療抵抗性であり、緩徐に筋萎縮が進行してQOLが障害される。

また、血清中のCKなどの筋原性酵素が低値を示し、進行性の間質性肺炎がある皮膚筋炎症例は、治療抵抗性であり呼吸不全となり、不幸な転帰を取ることが多い。本症の主な死因としては、悪性腫瘍、間質性肺炎、誤嚥性肺炎、心不全、日和見感染症などが挙げられる。


自己免疫疾患に関する調査研究班から
多発性筋炎・皮膚筋炎 研究成果(pdf 22KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

情報提供者
研究班名 免疫疾患調査研究班(自己免疫疾患)
情報更新日 平成14年6月1日


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