第十二章 海賊討伐
Ⅳ  海賊基地近くまでたどり着いたウィンディーネ艦隊。  海賊を一隻でも取り逃がさないように、ぐるりと基地を包囲しようとしていた。  第六強襲艦の突入用待機室に集合した兵士。  装甲服を着こみ、それぞれにお気に入りの白兵用の武器を携えている。 「第六突撃強襲部隊の準備完了! 白兵戦、いつでも行けます!」  隊長らしき人物が、艦橋に連絡を入れている。 『了解! そのまま待機せよ』  シェリー・バウマン大尉がゴードンに、そのまま伝える。  そして全艦隊も包囲陣を完成させた。 「閣下! 総員突撃準備完了しました!」 「よし、速攻で行くぞ! 候女が人質として担ぎ出される前に救出する。 「全艦突撃開始!」 「強襲艦は直ちに基地に強行突入せよ! 他の艦は基地から出てくる艦を片っ端か ら撃沈させよ!」  迎撃に出した艦隊が次々と撃ち落されるのを見つめながら消沈する海賊達。 「完全に包囲されました」 「普通ならば、投降を呼びかけるのだがな」 「こっちは海賊ですからね。国際条約とか通用しませんから……」 「全員皆殺しにしても、どこからも批判はこないってことだ」 「敵艦が突っ込んできます!」 「近づけるな! 弾幕を張れ!」  だが、戦闘機の大編隊が襲い掛かり次々と砲台を叩いていた。 「多勢に無勢か……」  やがて次々と強襲艦が取りつき始めた。  戦闘機が砲塔を破壊し続けてゆく。 「よおし、砲台は全部撃ち壊したぞ!」 「アンカーを打ち込め!」  基地に艦を固定させて、突入の足掛かりを作る。  外壁を溶断機で切り崩して突入口を作る。 「突入せよ!」  隊長の一声で、一斉になだれ込む。  基地内に突入した白兵部隊。 「どっちへ行けばいいんだ?」 「情報部の奴らも、ここの見取り図は入手できなかったみたいだ」 「当たってくだけろだ!」  密かに建設された海賊基地だけに、規模はそれほど大きくなく、行き当たりばっ たりでも探し当てられそうである。  分岐路に当たれば、とにかく人の気配のする方へと向かう。  海賊の掃討でもあるが、人質を人気のない所に監禁するはずがないからである。  やがて歩哨の立っているところに出くわした。  こちらに気が付いて武器を構えるが、こちらの動作の方が早かった。  その場に崩れる歩哨。  慎重に近づいて、のぞき窓を見ると、一人の少女が消沈した様子で、ベッドの縁 に腰かけていた。 「候女だ!」  歩哨の腰ベルトに下げられていた鍵を取って、ドアを開ける。  怯えたような表示を浮かべる少女。 「セシル候女さまですか?」  できるだけ優しい声で尋ねる兵士。  少女が静かに頷くのを見て、 「エルバート侯爵さまの命を受けて、お助けに参りました」  と傅いて、救出にきたことを告げる。 「父上の?」 「さようにございます」  侯爵の命というのは嘘であるが、誘拐されて怯え切っている候女を慰め落ち着か せるためだった。 「さあ、参りましょう」  候女の手を取って促す兵士。 「わかりました」  立ち上がって兵士に着いていく候女。  候女を前後に挟むようにして、立ちはだかる海賊を薙ぎ払いながら、元来た道を 戻る兵士たち。  その間にも、味方の砲撃による破壊は進み、至る所で火を噴いていた。 「急いでください」  足の遅い候女を急かしながらも、何とか強襲艦に舞い戻ることができた。 「こちら第一班、候女を救出しました!」 『よし! 直ちに帰還せよ』 「了解!」 『第二班は、引き続き海賊の頭領を探して捕らえよ!』 「こちら第二班、頭領を探して捕らえます」
     
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