第十二章 海賊討伐
Ⅲ  中立地帯を越えて、踏み込んではならない宙域へと立ち入るウィンディーネ艦隊。 「PーVX300より海賊基地の座標入電しました」 「よし。座標を設定しろ」 「了解。座標設定します」 「索敵機を下がらせてくれ」 「Pー300VXに連絡、後方に撤退を指示します」  指示を受けて、ゆっくりと後方に下がる索敵機。 「そろそろ敵の索敵範囲に引っかかると思われます」 「よし、戦闘配備だ。ウィンディーネ艦隊の底力を見せつけてやれ!」  声高らかに指令を出すゴードンの言葉に、副長も張り切って復唱する。 「了解! 全艦戦闘配備!」 「第六突撃強襲艦部隊に白兵戦を準備させろ!」  任務は海賊を殲滅するだけでなく、候女の救出作戦をも担っている。  ただ海賊基地を殲滅するだけではいけないのである。  海賊基地中央コントロールルーム。 「レーダーに感あり! 接近するものがあります」 「接近だと!? まさか跡をつけられたのか?」 「艦数増大中! 二千、三千、さらに増大」 「この基地の位置がバレたというわけか?」 「迎撃を出しますか?」 「無論だ!」  基地から迎撃の艦隊が出てくる。 「艦数五万隻を超えました!」 「こりゃ正規の艦隊のようだな。どこの艦隊は分かるか?」 「どうやら帝国の艦隊ではなさそうです」 「帝国じゃない? じゃあ、どこだ?」 「識別信号は……共和国同盟のものです!」 「ランドールか!」  やがて前方で交戦が始まる。 「艦数七万隻!」 「交戦部隊より報告! 敵艦の中にハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式を視認とのこ とです」 「ハイドライド型だと!」 「旗艦と思しき艦体に、水の精霊ウィンディーネ! ウィンディーネ艦隊です!」 「馬鹿な! 情報ではオニール提督の反乱の際に、ランドールによって撃沈された はずじゃないのか?」 「間違いありません。攻撃を仕掛けているのは、ウィンディーネ艦隊です」 「まさか修理して、出直してきたというわけじゃないだろうな」  海賊基地には、ハイドライド型の六番艦が存在したことと、新生ウィンディーネ 艦として配属された事は知れ渡っていなかったようだ。 「人質の候女がいるのを知らせて停戦させますか?」 「皆殺しのウィンディーネ艦隊だぞ! そんなもん通用するか!」  皆殺しのウィンディーネ艦隊とは、アレックスが帝国宇宙艦隊司令長官と元帥号 を授与され、アルサフリエニ方面で活躍していた時に名付けられた称号である。連 邦によって暴行されて身ごもり自殺した実の妹、その復讐に煮えたぎっていた。  しかし今は、改心して冷静さを取り戻したゴードンには、その名は似つかわしく ないだろう。  そこまでの新情報も伝わっていなかったらしい。 「とにかく相手がウィンディーネ艦隊、しかも七万隻となると勝ち目はない。逃げ る準備をしろ。候女も連れてゆくのだ」 「ここは中立地帯です。何とかなりませんかね」 「それはこっちも同じだ。海賊だからな」
     
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