第十二章 海賊討伐
V  海賊基地コントロールルーム。  攻撃を受けて、そこら中から火を噴いていた。  多くの族が倒れている。 「どうやら候女は救助されたようです」 「候女を浚ったのが運の尽きだったのかな」 「跡を付けられていたようですね」 「しかも出てきた奴がウィンディーネ艦隊とはついてない」  頭領の腹には、大きな金属の破片が突き刺さって、多量の血液を流していた。  致命傷と思われ、手当てをする甲斐がないのは一目でわかる。  副長の方も負傷はしているが、立つだけの体力はあった。  誘爆は続いている。  やがて声を発しなくなった頭領と立ちすくむ副長を炎が包む。  海賊の最期だった。  その直後にやってくる突撃隊。  惨状を確認しながら、生きている者はいないか確認する。 「こいつが頭領か?」  椅子に腰かけて死んでいる海賊。 「後で役に立つかもしれんな。運び出せ!」  DNAによる人物特定から、海賊頭領としての証拠となるだろう。  そのすぐ傍に倒れている人物に調べている隊員が叫ぶ。 「この人、生きています!」  声の主が見つけたのは、副長だった。  大火傷を負ってはいるが、何とか生きていた。 「よし、運び出せ! 他には生存者はいないか?」 「いません!」  誘爆はさらに激しくなっている。  装甲服を着ているとはいえ、生命の危険が迫っていた。 「危険です。早く脱出しましょう!」 「わかった。総員退却だ!」  爆音の続く中、艦へと急いで戻る兵士たち。  途中、他の班が投降して海賊達を連行していた。  海賊など即刻処刑しても構わないのだが、有用な証拠証言を提供することで処刑 を免れて懲役刑で済まされることもある。  ウィンディーネの艦橋に報告が届く。 「総員退却完了しました!」 「全艦攻撃用意! 跡形もなく基地を消し去る。基地の近くにいる艦は直ちに回避 せよ!」  突撃強襲艦が基地から離艦してゆく。  発射体勢に入る艦隊。 「発射準備完了しました!」 「よし! 撃て!」  ゴードンが右手を差し出す動作と同時に全艦攻撃が開始される。  一斉攻撃を受けて炎上、やがて大爆発を起こして粉々に砕け散った。 「海賊基地消滅しました」 「うむ。これで治安も少しは良くなるだろう。  そこへ突撃部隊の隊長が報告に来た。 「閣下! 候女を貴賓室にお通ししました」 「そうか、ご苦労だった。下がって休んでいいぞ」 「はっ! ありがとうございます」  そういうと、敬礼し踵を返して退室していく。 「さてと、候女さまにお会いするか」  隊長の跡を追うように貴賓室へと向かうゴードン。  エルバート侯爵邸。 「それはまことか?」  候女救出の報を受けて、歓喜に沸く公邸。  執事が落ち着いた表情で伝えていた。 「アレクサンダー殿下の命を受けた配下の者が海賊基地を急襲して救い出されたそ うです」 「殿下のご命令なのか?」 「そのようでございます」 「そうか……」
     
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