難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

混合性結合組織病/診断・治療指針(公費負担)

認定基準特定疾患情報

■概念・定義
混合性結合組織病 (mixed connective tissue disease:MCTD) は膠原病重複症候群の中の一病型に分類され、以下の二つの特徴を持つ全身性疾患である。

第一は全身性エリテマトーデス(SLE)を思わせる臨床所見、全身性硬化症を思わせる臨床所見および多発性筋炎/皮膚筋炎を思わせる臨床所見が、同一患者に同時にあるいは経過とともに認められる。第二は血清中に抗U1-RNP(ribonucleoprotein)抗体が、高い抗体価で検出される。

■疫学
全国推定患者数は6,840 (95%信頼区間5,700〜8,000) で、年間に約900人程度の新患者の発生があると推定されている。平成9年の個人調査票を基準とした調査では全国で約4000人の登録が確認されている。

患者分布に地域差はない。女/男比は13.4/1と、女性が多い。発病年齢の分布は30歳代の頻度が高く35歳前後が最も多いが、どの年齢でも発病する。家族・同居人からの膠原病発病者は8.5%にみられる。罹病期間の平均は10年で、受療状況としては、主に通院している患者の比率が約70%を占める。

■病因
明確な病因は特定されていない。MCTDは全身性自己免疫疾患の一つであり、免疫異常の原因の追求が病因解明への道と考えられている。疾患に特徴的な免疫異常は抗U1-RNP抗体であるが、同抗体産生は抗原刺激によることが明らかとされてきた。これより環境要因の関与が推測されている。

■症状
(1)共通症状
レイノー現象が必発である。だが同現象は寒冷時に頻発し夏は起こりにくいので、丁寧な問診が必要となる。しかし手指および手の浮腫傾向は夏でも持続する。
この結果、MCTDでは「ソーセージ様手指」あるいは「手背の腫脹」が高頻度に認められる。手背と指の付け根に腫脹があるが指先は細いままのため、「先細り指」を示す患者もある。MCTDではレイノー現象と「指または手背の腫脹」が、いつ迄も永く持続することが特徴的である。このためこれらの症状は、MCTDに特徴的な共通症状として重視され、多くの例での初発症状となっている。

(2)混合所見
SLE、全身性強皮症および多発性筋炎/皮膚筋炎の3疾患にみられる臨床症状あるいは検査所見が混在して認められる。これらは一括して混合所見と呼ばれる。

しかし、これらの混合所見は、各疾患に特異性の高いものばかりではない。SLE様所見の中には、腎炎や中枢神経障害症状は含まれていない。また強皮症様所見には、びまん性皮膚硬化は含まれていない。
この混合所見の特徴は、3疾患の完全型の重複所見とは言えない点にある。むしろ不完全型の重複所見であることが特徴である。このため「…様所見」という表現が用いられている。

この特異な混合所見は、血中の抗U1-RNP抗体陽性例に高率に認められる臨床所見と考えると、よりよく理解される。混合所見の中で頻度の高いものは、1) 多発関節痛、2) 白血球減少、3) 手指に限局した皮膚硬化、4) 筋力低下、5) 筋電図における筋原性異常所見、6) 肺機能障害、などである。

(3)肺高血圧症
MCTDの臨床症状は、早くから3疾患の混合症状として捉えられてきた。しかし、本症の実態がよく知られてくると、単に3疾患の重複あるいは混合の観点のみからは把握できない特異症状のあることが明らかとなった。すなわち肺高血圧症である。

疫学調査で症例の5%に肺高血圧症があり、10%にその疑いが持たれている事実が明らかとなっている。

肺高血圧症は重篤な病態であり、早期に発見して適切な生活指導をすることが必要となる。研究班では非侵襲的な検査法を主とした「MCTD肺高血圧の診断の手引き」を設定して、早期診断につとめている。

(4)その他の特徴的症状
肺高血圧症以外にも、MCTDに比較的特徴的にみられる症状がある。顔面の三叉神経U枝またはV枝のしびれ感を主体とした症状で、MCTDの約10%にみられる。また、ibprofen等のNSAIDs服用後に起きる無菌性髄膜炎も本症では約10%にみられる。これらの症状出現時は、MCTD も考慮する必要がある。

(5)免疫学的所見
抗U1-RNP抗体が陽性となる。これは蛍光抗体法による抗核抗体検査法で斑紋型の染色パターンを示す抗核抗体である。寒天ゲル内の二重免疫拡散法では沈降線を示し、標準血清の沈降線と一致する。

最近はリコンビナント蛋白を抗原とした酵素免疫測定法(ELISA)が、広く用いられるようになった。

(6)合併症
シェーグレン症候群 (25%)、慢性甲状腺炎 (10%) などである。

■治療
本症は免疫異常に基づく全身炎症疾患であるため、抗炎症療法と免疫抑制療法とが治療の基本となる。副腎皮質ステロイド薬が基本的な治療薬である。この他に末梢循環不全の改善薬が併用される。肺高血圧に対して特異的な治療法は、まだ未確定であるが、プロスタサイクリンの持続点滴療法やエンドセリン受容体拮抗薬が米国ではSSc を含む膠原病に合併した肺高血圧症に有効であることが報告され承認されており、本邦でも治験が進行中である。

病初期の多関節炎、筋痛に対してまず非ステロイド性抗炎症薬が用いられる。しかし、発熱、紅斑、漿膜炎、血小板減少症などのSLE様所見、あるいは炎症性ミオパチーの所見が認められた場合は、副腎皮質ステロイド療法の適応となる。

■予後
発病からの5年生存率は96.9%で、初診時からの5年生存率は94.2%である。主死因は肺高血圧、呼吸不全、心不全、心肺系の死因が全体の60%を占めている。


混合性結合組織病に関する調査研究班から
混合性結合組織病(MCTD) 研究成果(pdf 26KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

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