女性変身! ボディースーツ!!

part.3  そうか……。  作ってしまったものはしようがないとしても、さてどうしたものか?  捨てるわけにはいかないだろう。  何せ人工乳房だけでも販売価格にすれば数百万円はするだろうという代物である。  せめて宣伝広告用にでも、何かの機会に参考出品しなければ元が取れない。 「それにしても……。このマスクはおまえの趣味か?」 「ええ……。その通りです」  どこかのアイドル女優を型取りしたような感じであった。 「まあ、確かに美人ではあるがな」 「ですよね。どうせなら、美人の方がいいと思いまして」 「で、ちなみに……これは、どういう具合に着用するのだ」  まあ、何にせよ。  実際に着て見てみないと、この着ぐるみの評価ができない。  そこで、自分で着てみることにしたのだ。 「判りました。まずは裸になってください」 「裸になるのか?」 「そうしないと服のラインが出てしまいます」 「なるほどな」 「はい。全部脱いでください」  結局、パンツまで脱がされて素っ裸にされてしまった。 「それではまず、足先から入れてみてください」  それは、背中がファスナーで開くようになっていて、ジャンプスーツのように足先 からまず差し入れていく。が、ラインが出ると心配した通りに、肌にぴったりと密着 するようにできている。そうだな……サポートタイプのパンティーストッキングを履 くときのことを想像してくれ。あの感じだ。  え?  男はパンストを履くことはないし、なんでその事を知っているのか?  だって……?  簡単だよ。  例の研究員のせいで、何度女性に変身させられたか……。  だからだよ!  今は元の男性に戻っているがな。 「き、きついな……」 「はい。多少きつくないと弛みができてしまいますから。でも、十分に伸びる人工皮 膚ですから大丈夫です。もちろん空気も通すので、皮膚呼吸を阻害することはありま せん」 「そうか……」 「このファスナーも生体培養素材でできていまして……」  ファイルを整理して入れるクリアケースを想像して欲しい。  それに使われるジョイロン(レールファスナー)と呼ばれるファスナーがあるが、 それを人工皮膚の素材で製作されたものである。臓器移植を行った場合には、拒絶反 応を起こして再手術の必要を生じることとなるが、この生体ファスナーを使用すれば、 再手術にもファスナーを開けばいいだけである。手術の際に針と糸とで縫合する場合 にはどうしても手術痕が醜くできてしまう。人工皮膚によるファスナー縫合ならば、 見た目にも手術をしたとも判らないほどの成果があるし、長期に放置しておくとやが て皮膚組織が再生して完全に癒着してしまう。 「しかしこいつは一人では着れないな」  何とか足が通った。  次は頭である。  ファスナーの付いているのは背中だけである。  だから先ず足を通し、次に頭を入れる順番でないと着れないのだ。  とにかく……。  この女性変身スーツは、頭の先から足先まで完全一体成型である。  頭の部分は、いわゆるどこにでもあるマスクの通りに目と鼻そして耳の部分に穴が 明いていて、そこから外界に通じている。  頭を入れれば、もはや着ている人間が誰か……。まったく判らなくなる。
     
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