第一章
Ⅰ 降伏
帝国遠征艦隊旗艦アルミニウスの艦橋。
正面スクリーンにアレクサンダー王の降伏勧告映像が流れている。
『繰り返す、降伏して我らが公国の配下に入ることを望む。それとも最期まで戦って
全滅を選ぶか? 三十分待つ、参謀集めて協議したまえ』
映像が途絶えて通信が終わった。
「降伏して配下に加われだと? ふざけるな!」
司令官ヴァルター・プラール中将が憤慨する。
「それでは、徹底抗戦ですか?」
「まあ、待て……」
しばらく黙って考え込む司令官。
クールダウンしてから、
「そうだな。三十分の時間を与えてくれたんだ。参謀を集めて協議だ」
と冷静な判断を下した。
「かしこまりました」
作戦会議室に集まった参謀達。
「降伏して公国軍に鞍替えしろと言うのですか?」
「艦隊数は二万二千隻対八千隻で三倍差の戦力があります。しかもあちらの方が新造
艦が多く、火力も高い。まともに戦っては勝てません」
「公国軍に入れと言われても、身分や地位が保証されるとは限らない」
「昨日まで味方として戦っていたものが、明日には敵として戦うということが許され
るのでしょうか?」
「私には家族がいる。寝返ったと分かれば何をされるか……」
「自分にも家族はいるが、王様が言うのには『銀河を統一する』と言っていた。統一
されれば家族も解放される」
「そうですよ。仮に本国に戻ることが許されても、公国軍が本国を陥落させればどう
なる?」
口々に意見を述べる参謀達だった。
三十分後。
通信用スクリーンに映る公王に向かってプラール中将が報告する。
「協議の結果、降伏して五千隻が公王陛下の配下に入ります。が、残る三千隻は本国
に戻らせていただきます。彼等には家族がいるのだ。いかがであろうか?」
『ふむ、いいでしょう。承諾します』
「帰国する艦艇の安全を保証していただきたい」
『保証しましょう。ただし、惑星グロベンラーデのワープゲートの破壊行為は認めな
い』
「分かりました。帰国者には重々忠告しておきます」
さらに二時間後。
帝国艦隊の帰国部隊の編成が終わって、三千隻の艦艇が本国への帰還の途についた。
「帰国したとしても、公王が本国まで手を伸ばせば、いずれまた戦うことになるでし
ょうに」
副官のダニエル・ボンホフ中佐が呟くように言った。
「だがな、その時は家族の納得済みの上だろうから、心置きなく戦闘に集中できると
いうものだ」
「そんなものでしょうか?」
「そういうものだよ」
そこへ一人の士官がやってくる。
「ベルトホルト・グミュール少将。ご命令により出頭しました」
「おお、来たか。これより艦隊の指揮を任せる。私は、公王の旗艦デヴォンシャーに
赴く」
「かしこまりました。旗艦アルミニウスの指揮を執ります」
「それって人質ということじゃないでしょうねえ」
ポンホフ中佐が忠告した。
「かもしれないが、拒否することもできまい。さて、行くとするか」
「はい」
プラール中将とボンホフ中佐が、旗艦デヴォンシャーへと向かった。