第三章
Ⅸ 決着  帝国遠征艦隊の右翼に位置していた旗艦アルミニウス。 「左翼の艦隊はどうなっているか?」  司令官ヴァルター・プラール中将が怒鳴った。 「無線が交錯して、はっきりしません」 「馬鹿野郎! 損害の艦艇数は? 生き残っている艦は?」  中将自身も支離滅裂であった。  副官のダニエル・ボンホフ中佐が意見具申した。 「司令、このままではこちら側もやられてしまいます。手を打ちませんと」 「手を打つ? どうすれば」 「我々も左舷艦隊を迂回するように、左回りで敵艦隊の正面に出て戦うのです」 「分かった。そうしよう」 「かしこまりました」  アルミニウス艦隊が動き出した。  右舷艦隊は、既にほぼ壊滅状態であり、戦闘能力は消えうせていた。  味方の右舷艦隊を左に見ながら敵公国艦隊の正面に出ていく。  だが、艦隊数は二万三千隻対一万四千隻と、圧倒的に相手側の方が多い。  双方が近づくように進行しているので、遭遇は早かった。 「敵艦隊です」  公国艦隊は左翼艦隊への攻撃のためにそちらの方を向いていて、こちらは側面攻撃 を仕掛けられる? はずだった。がしかし、公国艦隊は回頭してこちら側を向いてい た。こちらの動きを察知していたようだ。 「攻撃開始!」  撃ち合いが始まった。  戦力差において公国艦隊の方が有利であった。  次第に艦艇数を削り取られる状況が続く。 「敵艦隊の後方に動きが!」  レーダー手のオットマー・ゲーベルス中尉が報告する。 「動きだと?」 「どうやら、敵艦隊後方の部隊が惑星ケムニッツに向かったようです」 「まずいな。ケムニッツは無防備だ」 「しかし今の状況では、こちらが分艦隊を差し向ける余裕がありません」 「惑星には連絡だけを入れておけ」  惑星ケムニッツ。  アルミニウス艦隊からの通信で、非常警戒態勢に入っていた。 「敵艦隊がくるぞ!」 「まさか三万隻の艦艇が全滅寸前とは」 「対空ミサイルを解放しろ!」 「海上艦にも迎撃命令を出そう」 「空軍もだ!」  大慌てで迎撃の準備をする惑星の地上基地であった。
   
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