第三章
Ⅲ 分艦隊  惑星ケムニッツの軌道上で分艦隊の編成を行っている。  分艦隊旗艦クローンプリンツ艦橋。 「中佐、編成が終わりました」  副官のアルフォンス・エーベルヴァイン少尉が報告する。 「分かった。ドゥーゼ中将を呼び出してくれ」  通信士が旗艦ヴェルテンベルクの司令官に繋ぐ。 『おお、準備は済んだのか?』 「はい。いつでも出発できます」 『では、すぐさま出発してくれ』 「かしこまりました。中将には作戦通り……」 『分かっておるわ』 「それではよろしくお願いいたします」  通信が途切れた。 「よし行くぞ! 微速前進!」 「全艦、微速前進!」  エーベルヴァイン少尉が復唱する。  ゆっくりと動き出す分艦隊。  それと同時に、本隊も前進を始めた。  艦隊旗艦ヴェルテンベルク艦橋内。  正面スクリーンには、別れてゆく分艦隊が映し出されていた。 「よおし、俺達も行くぞ! X地点に予定時間通り遅れるな」  艦隊司令官ヘンドリック・ドゥーゼ中将が指示する。 「了解。全艦、微速前進! 目標X地点へ」  副官ヴィクトール・ラング少佐が復唱する。  本隊も動き出した。 「よかったんですかね」  副官が呟く。 「何がだ?」 「ただでさえ、艦隊数が少ないのに分艦隊を作るなんて」 「だったら作戦会議の時に、誰も意見具申しなかったんだ?」 「そ、それは……」 「約三倍強の艦隊数に怯えてるだけで、口をつむぐだけとは情けない。中佐は熟慮し て意見した、それだけでも信用に足ると思わんか?」 「はあ……」 「せっかく意見具申してくれた中佐のためにも、作戦通りに行動する。いけないか?」 「いえ。ごもっともな作戦でした」  中性子星マクデブルク、惑星フェッデリンゲンに到着した分艦隊。 「到着しました。全艦異常なし」  副官のアルフォンス・エーベルヴァイン少尉が報告する。  千隻の艦艇が、中性子星からのγ線を浴びないように、惑星の影の部分に隠れてい た。 「機関停止! 但しいつでも始動できるように予熱はしておけ」 「了解!」  エンジンを停止したのは、敵に察知されることを懸念したのである。 「お聞きしてもよろしいですか?」  副官が尋ねる。 「なんだ」 「敵の進撃ルートをどうやって割り出したのですか?」 「簡単だよ。最短ルートだからだよ」 「それだけですか?」 「情報によると、奴らは補給艦を同行させていない。寄り道している余裕はない。進 撃を阻止されて撤退ということになれば、少なくとも帰り道の燃料は残しておく必要 があるからな」 「なるほど」  頷く副官。 「それにしても本隊は予定通りにX地点に付きましたかね」 「分からんが、信じて行動するしかない」 「無線封鎖は痛いですね。味方の行動が分かりませんから」  本隊はともかく、分艦隊がいることを知られないように隠密行動をする以上、位置 を知られないよう無線封鎖するのは当然だ。 「敵艦隊がX地点到達まで約三十二分」  航海長のルーペルト・シュリューター大尉が伝える。 「総員、戦闘配備につけ!」
   
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