第五章
Ⅴ ロベスピエール侯爵
「通信が途切れました」
「逃げたか。それでは直接会いに行こう。エダ、一緒に来てくれ」
というと、エダを連れて転送装置に入った。
「それと、長机と椅子を転送する準備をしておいてくれ。署名台とするから停戦協定
用の書類も一緒にな」
「かしこまりました。手配します」
カトリーナが応じる。
「謁見の間へ!」
装置が輝いて二人の姿が消えた。
謁見の間。
その一角が輝いて、二人が現れた。
「何者だ!」
衛兵が二人を取り囲んで、銃を突きつけたが、次の瞬間、倒れてしまう衛兵。
その様子を見てロベスピエール侯爵が唸る。
「何をした?」
「ちょっと眠ってもらっただけですよ。危害は与えておりません」
実は二人の周囲には、目に見えないバリアーが張り巡らされており、触れた途端に
電気ショックを与えるというものだった。腰にぶら下げている携帯転送装置がバリ
アー発生装置でもあった。
カツカツよ侯爵の面前まで歩いてゆくアレックス。
「さてと……侯爵様の艦隊は降伏して、私の艦隊に編入されました。宇宙艦隊には侯
爵様に従う将兵もおりません。改めて停戦協定を結びましょうか」
そう言うと、携帯通信機でアムレス号に、
「例の奴を送ってくれ」
と伝えた。
『わかりました。直ちに送ります』
カトリーナが応答してしばらくすると、長机と椅子と書類二部が転送されてきた。
「さてと手続きを始めましょうか」
書類の一冊を手に取り、侯爵に手渡す。
書類を手渡されて目を通す侯爵だったが、次第に頬を赤らめて興奮しだす。
「なんだこれは!」
侯爵が憤慨するのは当然のことで、特命全権公使が携えてきた書状を読み上げた内
容の真逆のことが掛かれていた。
特に、次の条項は耐え難い内容であろう。
〇転封のこと 侯爵の所領地である惑星アルデラーンを没収して、ウエストランドへ
の領地替え。
ウエストランドは、侯爵家の出自たる恒星系である。
旧公爵家の継承争いのゴタゴタの隙をみて惑星アルデラーンを乗っ取ったのである。
「この惑星アルデラーンは元々は公爵家の所領です。そして公爵の継承権を持つ自分
の所領であります。返してもらうだけです」
冷静に説明を続けるアレックス。
そして大声で、館内にいる貴族達に向かって問いただした。
「ここに『王位継承の証』があります。公爵家を継承する由緒あるもので、これを所
有する自分は公爵家を受け継ぐ権利があります。これに異議を唱えるものはいます
か?」
エメラルドの首飾りを掲げ上げて、貴族達を見渡すアレックス。
静かだった。
誰も異議を唱えるものはいない。
ツカツカと侯爵の目前まで歩き出すアレックス。
「その席を譲っていただきましょうか?」
催促するが侯爵は拒否する。
「い、いやだ。この惑星アルデラーンは私のものだ。絶対に渡さない」
と椅子にしがみ付いた。
仕方がないなといった表情で、
「誰か、侯爵をどかせてくれませんか?」
館内の貴族達に依頼した。
すると、二人の貴族が前に出て、侯爵を排除にかかった。
「や、やめろ!」
しかし二人掛かりでは抵抗のしようがなかった。
引き剥がされるように、椅子から排除される侯爵。
そして扉前に待機していた近衛兵に引き渡した。
「私室に軟禁してください」
アレックスが指示する。
「了解しました」
主のいなくなった玉座。
アレックスが玉座に近づいて、貴族達を見回しながらゆっくりと玉座に着席した。
貴族達の吐息が微かに館内に広がった。
「これをもって、自分は公爵としてこの地を治める。意義あるものは?」
再度確認を求めるアレックス。
「ありません!」
「公爵位着位おめでとうございます」
先ほどの二人の貴族が肯定の言葉を発した。
「そちらの名前を伺ってよろしいか?」
と尋ねると、
「セドリック・エイムズ男爵です。お見知りおきを」
「フランク・フェザーストン子爵です」
名前と爵位を名乗った。
「ありがとうございます」
こうして公爵位を認められ、惑星アルデラーンはアレックスの所領地となった。
また、二人の貴族のうちフェザーストン子爵は、恒星ウォルソール第二惑星ベルフ
ォールをカーライル子爵に代わって領地となった。
エイムズ男爵は、ブランドン・ヘニング男爵に代わって、惑星ボーンマスの領主と
なった。