第五章
Ⅳ 大気圏戦闘 「地上基地よりミサイルが発射されました」  ライオネル・エムズリー電探手が報告する。 「迎撃ミサイル発射!」  カトリーヌが下令する。  副官でも、ある程度の指令を出すことが許されていた。  もし間違っていれば、訂正命令を下せばよい。  部下に判断させ実行させることも大切である。  司令官が命令しなければ何もできないようなら、副官などは必要なくなる。  采配を任せることで、経験を積み重ねて有能な士官へと成長できる。 「迎撃ミサイル、発射します」  ボブ・ゴドウィン魚雷手が応じる。  艦首から放たれる迎撃ミサイル。  地上ミサイルに確実に命中して粉砕してゆく。  それでも交わして向かってくるミサイルは、レーザーカノン砲が撃ち落としていた。 「艦載機を発進させて、地上基地を黙らせろ」  発着場では、すでにスクランブル待機中だったので、いつでも発進できる状態だっ た。  ゆっくりと開いてゆく発進口。 『全機発進せよ!』  管制官の声が艦内に響く。 「了解。発進する!」  編隊リーダーが先陣切って飛び出し、それに続いて続々と発進する戦闘機。敵の戦 闘機はほぼ壊滅させており、抵抗なく発進できていた。  迫りくるミサイル群を潜り抜けて地上基地を急襲する。  ものの十数分で、地上基地は炎上して使い物にならなくなっていた。  アムレス号艦橋。 「地上基地、破壊完了しました」  カトリーナが伝える。 「よし、全機帰投させてくれ」 「了解、帰投させます」  帰投を始める戦闘機群が、アムレス号の発着口から着艦を始める。 「全機、帰投しました!」 「着艦口を閉じろ!」  地上基地を無事に通り越して、アルタミラ宮殿へと向かうアムレス号。 「宮殿の真上で止めてくれ」  宮殿の周囲には、たくさんの高射砲が取り囲んでいる。  一つ一つ相手にするのは面倒だ。  宮殿上空に停止していれば、攻撃が至難となることを見込んだのである。万が一に も宮殿に砲弾が当たったり、アムレス号が機関停止で下降してしまうと宮殿を押しつ ぶしてしまう。  目の前にいるのに手が出せない状況であった。 「宮殿上空です」 「よし、停船しろ」 「了解。メインエンジン停止!」  宮殿上空で停止するアムレス号。  通常の翼を持った航空機は、前進することで揚力を得て空を飛ぶことができるが、 エンジンを止めると墜落してしまう。が、アムレス号はリニアモーターでおなじみの 超伝導磁気浮上システムを利用して浮上状態を維持している。  物質を絶対零度近くまで冷却すると、完全反磁性である「マイスナー効果」を発生 して磁力に反発するようになる。惑星アルデラーンには地磁気があり、地磁気に反発 して浮上できるというわけだ。 「停止しました」 「一応、侯爵に挨拶するか。繋いでくれ」 「繋ぎます」  ボビー・ハイアットが、謁見の間にある通信モニターに接続を試みる。 「繋がりました。相手が出ます」  驚いた表情のロベスピエール侯爵が映りだされた。 『な、なんだ?』 「惑星サンジェルマンでは、お会いできなくて残念です」 『何が残念だ、無作法にも伯爵位を強奪しやがって。私の侯爵位も奪うつもりだろ』 「まあまあ、通信で話しても仕方ないので、そちらへ伺いますよ」 『勝手にしろ!』  通信が途切れた。
     
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