第四章
Ⅴ 謀反
アムレス号の後方に待機している駆逐艦グラスゴー以下の三隻の艦艇。
指揮官ボールドウィン・バートルズ中佐は焦っていた。
カーライル子爵から、伯爵艦隊の応援として差し向けられたものの、その実「隙を
ついて裏切り、その寝首を掻くのだ」と騙し討ちを命令されたのだ。
伯爵艦隊にやってきて、旗艦であるアムレス号の雄姿に出鼻を挫(くじ)かれた。
「まさか、こんな巨大な艦とは聞いてないぞ!」
度肝を抜いて、自分達の艦で相手にできるのだろうかと自問自答していた。
これまでチャンスを伺いながらも、中々隙を見つけることができないまま決戦の場
までやってきてしまったのだ。
「今頃、子爵さまは吉報を待っているはずなんだ」
「我々だけロストシップの後方に布陣させられたせいで、目立ちすぎますから下手な
動きができないせいです」
「しかし、いつまでもジッとしていられまい。何か動きを見せた時がチャンスだ」
あくまでも子爵の命令に従おうとする中佐だった。
その頃、アレックスは味方艦隊の奮戦を見届けていた。
アムレス号の強力な荷電粒子砲を使用すれば一撃必殺なのであるが、それでは参戦
する配下の武将達の手柄を奪うことになる。
「味方は善戦していますが、数で押されているようです」
カトリーナが戦力分析を報告した。
「まあ、しようがないな。少し加勢するか。荷電粒子砲用意だ。陽子電子対消滅でい
こう」
「陽子電子粒子加速器準備! 艦隊へ作戦Bプラン発令!」
カトリーナが復唱する。
粒子加速器発射制御室では、実戦配備に張り切っていた。
「さあ、実戦だ! みんな閣下の期待を裏切るなよ」
指導教官が発破を掛けていた。
「了解!」
「任せてください!」
乗員達も威勢よく答える。
駆逐艦グラスゴーにも作戦司令の報が届いていた。
「アムレス号が動くようです。作戦Bプラン発動です」
副官が伝える。
「よし。やっとチャンス到来だ! 戦闘配備だ。寮監に暗号電文送れ!」
「了解!」
艦内を駆け回る乗員達。
各種砲台に着席して発射準備をしてゆき、魚雷発射管では光子魚雷が装填されてゆ
く。
「戦闘準備完了しました」
「よし。アムレス号が荷電粒子砲を発射した直後が最大の攻撃チャンスだ。アレは莫
大な電力を消費するからな。一時電力喪失して防御力もかなり減少するはずだ」
千歳一隅のチャンスを逃すことはできなかった。
成功すれば昇進できるし、平民ながらも準男爵という世襲できる爵位を与えてくれ
るという約束も取り付けていた。
アムレス号艦橋。
「後方のグラスゴーに動きが見られます」
カトリーナが報告する。
「そうか。例のディスクをインストールしたか?」
「はい。インストール完了の信号が届いています」
「なら、心配ない。前方の敵艦隊に集中しよう」
後方の艦隊が反乱の動向を見せているのに、平然としているアレックスだった。
「荷電粒子砲、発射準備完了しました」
「うむ」
と呟いて、パネルスクリーンを見つめるアレックス。
恒星ヴォルソール第二惑星を背景に戦闘を続けている双方の艦隊。
「目標、第二惑星表面に設定せよ」
指示を出すアレックス。
「目標、第二惑星表面に設定します」
一瞬なんでそこなの? という表情を見せたが、指示通りにするジャレッド・モー
ルディング操舵手。
荷電粒子砲は艦首固定なので、目標設定は艦体の方を動かして艦首を目標に向けな
ければならない。
「目標設定完了。発射準備完了!」
「よし、撃て!」
アムレス号から発射される中性粒子ビーム。