第六章
Ⅰ ローリング・テイクオフ  コクピットに入った少年達。  操縦席にマイケル・オヴェット、副操縦席にはエヴァン・ケイン、そして機関 操作席にはフレッド・ハミルトンが座った。  起動キーを機器に差し込んで、船を始動させるマイケル。  前面の機器や照明に電源が入った。 「エンジンを始動させるよ」  機関士のフレッドがエンジンを始動させると、船内全体が微かに震動して低い 唸り音を上げた。 「エンジン始動確認!」 「分かった」  副操縦士のエヴァンが空港管制塔に連絡をとる。  すでに滑走路の使用許可は事前に受けていた。 「こちらUF3012、発進の許可願います」 『こちら管制塔、UF3012へ。第四滑走路への侵入を許可する』 「了解。第四滑走路に入ります」  通信を終えて、滑走路へと機体を移動させる。 「こちらUF3012、第四滑走路に到着。発進準備完了しました」 『こちら管制塔、UF3012へ。発進を許可する。前方オールグリーンだ』 「了解。発進します!」  振り返り、後方の少年達に合図をするマイケル。  皆が頷くのを確認してから前に向き直り、操縦桿を握りしめた。 「出発進行!」  ゆっくりと前進を始める機体。 「エンジン出力50%」  フレッドが伝える。  傍らのスロットルレバーを引いて、エンジン回転数を上げてゆく。  エンジン音と震動がコクピットに伝わってくる。  窓の外の景色が流れてゆく速度が速くなってゆく。 「離陸推力に到達!」 「フラップ角度5度、機首を上げる」  機体前部が持ち上がってゆく。 「エンジン出力65%」 「よし! テイクオフ!」  少し操縦桿を手前に引くと機体が浮き上がって離陸してゆく。 「離陸した! このまま上昇!」  地上から大気圏、そして宇宙空間へと上がってゆく。 「大気圏突破!」  と言いつつ、大きなため息をつくマイケルだった。 「ご苦労様でした。休憩室でしばらく休んでていいわよ」  その肩に手を置いて労うルイーザだった。 「後は僕が引き継ぐよ」  そう言って副操縦士のエヴァンが、操縦システムを自分の方に切り替えた。 「分かりました」  立ち上がって、後部にある睡眠ルームへと移動した。 「自動航行装置に、アンツーク星の位置情報を入力します」 「これで眠っていても目的地に着けるのね」 「そうはいきませんよ。航行途中で何が起こるか分かりませんからね」  アレックスが注意した。 「あら、そうなの?」 「アンツーク星到着予定は、八時間後になります」  エヴァンの言葉に、アレックスが伝える。 「ここは僕とエヴァンで見守っているから、他の皆は休憩していいよ。僕らはマ イケルが戻り次第休むから」 「分かった。居眠りはしないでね」  ブルーノ・ホーケンが念押しして、少年達は休憩室へと向かった。  アレックスは、正操縦席に着席する。
     
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