第四章
Ⅰ 捜索再開  ガスパロ・フォガッツィが立ち去り、ケンタウルス兵もいなくなった。 「さあ、全員持ち場に戻ってくれ。俺はガスパロの所へ行く」  アッデージは、クルーに指示する。 「分かりました。気を付けてくださいね」  フィオレンツォ・リナルディ副長が応える。  頭領の部屋。  アッデージがガスパロと対面している。 「うん。この椅子もなかなか居心地が良いもんだ」  かねてより頭領の地位を狙っていたガスパロだった。  次席のミケーレ・ナヴァーラを飛び越えて、海賊の最高地位にたどり着いた。  帝国軍の威光を借り手のことだったが、満足していた。 「さてと……」  といいつつ、机の上から煙草を取り口に咥えた。  すかさず、自分のポケットからライターを取り出して、火を点けて上げるアッ デージ。  親分が煙草を咥えたら、身近にいる手下が火を点けるのは常識だ。  煙草をくゆらせてから、 「君は、例のロストシップを捜していたんだよな」 「その通りです」 「うむ。では、引き続き船の捜索を続けてくれたまえ」 「分かりました……それで親父はどうなされますか?」  くどいほどに親父アントニノ・ジョゼフ・アッカルドの処遇を確認するアッ デージ。 「帝国に従えない者の行く末は決まっておろう。すでに帝国本星に連行されて処 刑されることが決まっている」 「そうですか……」  右手拳を強く握りしめて肩を震えているアッデージだった。  ガスパロとの会見を終えて、フォルミダビーレ号の船橋に戻ってきたアッデー ジ。 「お疲れ様です。ガスパロは何と?」  リナルディー副官が尋ねる。 「ああ、これまで通りにロストシップの捜索を続けてくれだとよ」 「つまりはこれまで通りということですか?」 「そういうことだ」 「親父のことは?」 「残念だが……」  項垂れて目を閉じるアーデッジ。 「そう……ですか」  すべてを理解するリナルディー、静かに自分の位置に戻る。  一呼吸おいてから下令するアーデッジ。 「出航準備せよ」 「出航準備!」  復唱するリナルディー。 「目的地は?」  ウルデリコ・ジェネラーリ航海長が尋ねる。 「ピトケアン星域だ。ロストシップ捜索を続ける」 「了解しました。ピトケアン星域の次の恒星系、ピアチェンツァに向かいます」 「うむ。アレックス君は?」 「まだ隠し部屋で待機しています」  フォルミダビーレ号には、万が一に備えての緊急避難部屋がある。  超新星爆発などで膨大な宇宙線の飛来が感知された時などの待避所である。  ケンタウルス帝国兵によって船が捕獲された時に、アレックス達新人を匿った。  以前飛行艇を奪取して脱出したように、帝国兵の目を盗んで船の支配権を奪っ て基地からも脱出することを期待したのだ。 「まあいいだろう、出してやれ。アレックスはドクターの所へ呼び出せ、俺もそ こへ行く」 「了解しました」 「後を頼む」  船橋を出て医務室へと向かうアーデッジだった。
     
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