第八章 トランター解放

VI  惑星トカレフに接近しつつある艦隊がある。  サセックス侯国内のサウサンプトン城主ニコラ・カーペンター伯爵率いる二百五十隻の 艦隊である。 「惑星トカレフが見えてきました」  正面のスクリーンに漆黒の宇宙に浮かぶ青い惑星が映し出されていた。 「ほう、これが新しい領地か」 「しかし殿下の許可を得なくて大丈夫でしょうか?」 「これからの戦いは、殿下のなされている共和国解放の一役を担うものなのだ」  と、侵略行為を後付けで正当化しようとしていた。  バーナード星系連邦の敗退により、首都星は共和国同盟解放軍の手によって陥落したが、 地方の領域には今まだ連邦軍が駐留して支配下に治めていた。  そんな地方に向けて、帝国の貴族達がアレックス殿下の共和国解放の名の下に、侵奪を はじめたのである。 「トカレフより戦艦。その数十五隻」 「さっそくお出迎えですか。しかし十五隻とはね」 「ここは首都星から遠く離れた辺境ですから。そんなに重要視していなかったのでしょう う」 「ふむ、ともかく戦闘配備だ」  連邦旗艦艦橋。 「おいでなすったぞ!」  と指揮官が叫ぶと同時に、 「全艦戦闘態勢!」  副官が応答する。 「十五隻対二百五十隻か……」 「どうしますか?」 「まともに戦ってはひとたまりもない。かといって、トカレフを放棄して撤退しようにも、 帰る場所は既にない」  全滅しかない状況に、艦橋オペレーターは押し黙っていた。 「作戦どうこう言う状況ではないし、この際敵中のど真ん中に突入して暴れるか」 「いいですね。ランドール戦法とやらをやってみますか」 「ランドール戦法か」 「どうせ相手は、まともに戦ったことがないのです」 「よし!存分に暴れてやろう。全艦突撃!」 「全艦突撃!」  指揮官の号令に、副官が復唱して戦闘が開始された。  伯爵の戦艦艦橋ではひと悶着が起きていた。  彼らが普段から軍事訓練してきた戦法は、離れて向かい合って砲撃し合うというものだ った。 「無茶苦茶だ!」 「戦闘というものを知らないのか?」  いわゆるランドール戦法は、手慣れていないと同士討ちになることもある。。  もっとも連邦側にしてみれば、それが狙いなのだ。
     
↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

小説・詩ランキング

11