第八章 トランター解放
Z 「全艦全速前進! 敵の中央に潜り込め!」  艦艇の絶対数で劣っている連邦としては、乱撃戦に持ち込んで同士討ちに誘い込むしか ない。  連邦の作戦行動に驚愕の反応を見せる伯爵。 「馬鹿な、ありえない!」 「多勢に無勢、気がふれましたか?」  戦闘訓練では、向かい合っての撃ち合いが基本の帝国軍には、往来激戦など理解できな かった。  懐に飛び込まれて右往左往する間に同士討ちを始めた。 「思った通りだ。これで少しは長生きできるな」 「いつまで持ちますかね」 「ま、神に祈るだけの時間は稼げるさ」 「祈るのですか?神を信じているなんて意外です」 「俺は信じてはいないが、部下の中には一人ぐらいはいるだろう」 「ですかね」 「さてと、そろそろ反撃が来る頃だな」  冷静さを保っている艦及び冷静さを取り戻した艦を中心に反撃を開始した。  十五対二百五十では、まぐれ当たりでも損害率には大きな開きが出る。  次々と撃沈されていく連邦艦。 「味方艦全滅!この艦のみになりました」 「敵艦にどれくらいの損害を与えたか?」 「およそ八十隻かと」 「まあ、よくやったというべきだろうな」  帰る道を閉ざされている以上、降伏か玉砕しか選択肢はない。 「ようし!全速で敵旗艦へ迎え。ぶち当ててやる!」 「特攻ですか?」 「今更、降伏もないだろうからな」 「了解!機関全速、取り舵十度!」 「真っすぐ向かってきます!」  正面スクリーンに、猛スピードで迫りくる敵艦に、伯爵艦は慌てふためいている。 「回避しろ!」 「取り舵全速!」 「だめです。間に合いません!」  パネルスクリーンに目前に迫る敵艦。 「衝突警報!総員、何かに掴まれ!」  と同時に激しい震動が艦内を襲った。  艦内の至る所で、衝撃を受けて転倒する者が続出した。 「みんな無事か?」 「は、はい」 「艦内の損傷をチェックしろ」 「今調べているところです」 「敵艦はどうしたか?」 「粉々に砕け散ったもようです」 「こちらの装甲がより厚かったというところだな」 「それに敵艦はかなり損傷を受けていましたしね」  被弾した艦艇に残る将兵達の救助が始められた。  ある程度作業が進んだ頃合いを見てから、 「救助艦を残して残った艦艇を再編成してトカレフに向かうぞ」  侵略を開始した。
     
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