第八章 トランター解放 (4)

 サラマンダー艦橋。
 正面スクリーンに投影される戦況。
 まばゆい砲撃の光の数々。
 その中には撃沈された艦艇の残骸や、艦から投げ出された将兵達の遺影も映し出されていた。
 戦争の悲惨さを物語る光景であった。
 すでに戦闘は終結を迎えようとしていた。
 裏切りともいうべき旧共和国同盟軍の反撃によって、連邦軍はほとんど成す術もなく撃沈されていく。
「連邦軍より入電。降伏勧告を受諾する」
 通信オペレーターが静かに報告する。
「よし。全艦戦闘停止」
 オペレーター達が一斉に緊張を解いてリラックスする。
 我らが指揮官の下、負けるはずがないと信じていたとはいえ、やはり勝利の瞬間は何度でも感動する。
 パトリシアが近寄る。
「おめでとうございます」
「時間の問題だっただけだよ」
 と言いながら、指揮パネルの通信端末を取り上げた。
 受話器の向こうから応答がある。
『レイン少将です』
「ご協力ありがとうございました。おかげさまで勝つことができました」
『当然のことをしたまでですよ。将兵達も連邦軍のやり方には腹を据えかねていましたからね』
「早速ですが、降下作戦の指揮を執って頂きたいのです」
『お安い御用ですよ』
「助かります。作戦概要について協議したいので、こちらへご足労願いませんか」
『かしこまりました』

 数時間後。
 サラマンダーの作戦会議室にレイン少将を加えて集まった参謀達。
 ちなみに、この会議場には皇女艦隊の面々は参加していない。
 首都星トランターへの降下作戦は、あくまで解放戦線としての任務である。
 皇女艦隊は、トランター周辺にて哨戒任務あたっていた。
 パネルスクリーンにレイチェル・ウィング大佐が映し出され、メビウス部隊からの報告伝達が行われていた。
『現在、連邦軍守備艦隊との兵力はほぼ互角。旗艦ミネルバを主力とした攻略部隊を組織して、総統府への総攻撃を敢行しておりますが、市民を人質にして抵抗しており苦慮しております』
「人質か……。敵も必死というわけか」
『しかしながら、地下組織の応援を得て少しずつ市民を解放しつつあります』
「ところで、核弾頭ミサイルはまだ確保しているか?」
『はい。それを奪われ使用されてはトランターの破滅。例の秘密の場所に厳重保管してあります』
「それを聞いて安心した。これから降下作戦に入る。もうしばらく辛抱してくれ」
『了解しました』
 レイチェルとの通信が終了した。
 くるりと向き直り参謀達との会議をはじめるアレックス。
「……というわけだ。ミネルバ部隊が反抗作戦を開始して二十四時間が経った。補給物資も底をつきかけており、将兵達の疲労度も増している。すみやかに揚陸部隊を出して救援に向かわねばならない」
 そこへマーガレットから連絡が入った。
「大変です。連合軍に参戦していた一部の帝国自治領主が、トランターに至る惑星を不正占拠し、簒奪を繰り返しています」
「なに、ほんとうか?」