その瞬間だった。
機械が爆発してしまったのだ。
「うわあ!」
身を屈めて飛び散る破片を避ける助手。
しばらくて爆発もおさまり、ゆっくりと起き上がり、そばに倒れている先生に声を掛ける。
「先生! 大丈夫ですか?」
しかし、返事はない。
それどころか……、
「し、死んでる!」
息をしていなかった。
脈を測り、胸に耳をあてて呼吸や心臓の音を聴診するが、明らかに生命反応を消失していた。
「ど、どうしよう。死んじゃったよ」
救急車を呼ぼう。
いや、もう死んでいるから警察だ。
部屋の隅にある電話に手を掛ける。
だが、ふとプリンセスドールが目に止まった。
「彼女のこと、警察になんて言えばいいのかな」
ベッドの上で安からに眠る彼女。
彼女が人造生命体であることを知っているのは、亡くなった先生と自分だけである。
これほどまでに精巧にできていれば、誰が見ても本物の人間としか映らない。
例え最新のNMR(核磁気共鳴断層撮影装置)にかけても区別がつかないだろう。
それどころか開腹手術をして内部を調べても、それが人造臓器であることに気づく研究者すらいない。
仮に正直に話しても信じてはくれないだろう。
それに何よりも、彼女の処遇である。
おそらく引き離されてしまうに決まっている。
どこかの病院か研究室に移されてしまう。
やはりこのまま彼女を警察の目に触れさせるわけにはいかない。
ロッカーから、彼女が目覚めた時のために用意しておいた衣服を取り出す。
素っ裸な彼女にショーツを履かせ、豊かな乳房をブラジャーで覆う。
まさしく着せ替え人形だった。
「これでよしと……」
彼女を慎重に抱えあげて、研究室を出て同じ敷地内にある先生の家に運ぶ。もちろん居候している自分の寝場所でもある。
よくあることなのであるが、先生の家には隠し部屋があるのだ。
借金取りから逃げるときや、重要研究資料を保管するためにある。
先生の書斎の書棚を横にスライドさせるとその部屋に通ずる扉が現れる。
その部屋に彼女を運び込んで、ソファーの上にそっと寝かしつけた。
「こんなところでごめんな。警察が帰ったら、ちゃんとしたベッドに寝かせてあげるから」
そう彼女に言い聞かせるように呟いて、部屋の鍵を閉めて書棚を元に戻して隠す。
「よし、これでいい。警察を呼ぼう」