プリンセスドール (4)

 頭脳を働かせる生体プログラムは、すなわち彼女の人間としての個性を表現する重要なことなのだ。
 私には、女性に対する理想像というものが確固としてある。
 彼女の持つプロポーションとて、私が最高の美人として感じ、理想の女性としての身体的サイズに作り上げたのだ。その精神も私の理想でなければならないのだ。

 彼女が個性を持ち動き出せば、その意思に逆らうことはできなくなる。

 たとえば悪意を持って生体プログラムを開発インプットする協力者だったら、彼女の意識を操作して、自分に恋焦がれる乙女に仕立て上げ、挙句の果てはその協力者の下へと遁走してしまうことだってありうるのだ。
 それだけは絶対に避けなければならない。だからこそ協力者には、彼女の頭脳をいじらせたくない。

 身も心も私の理想の女性でなければならないのだ。

 ではどうすればいいか。
 生体プログラムを開発できなければ、今あるものを移植すればいいじゃないか。
 そうつまり、この私自身の頭脳のイメージを彼女に送り込めばいいのだ。
 そのための装置も実験段階のものがある。
「それしかないじゃないか」
 私は、以前に開発を中断したままのイメージスキャナー装置を運び出した。
 被験者の頭脳のイメージをスキャナーして映像化する装置だ。
「これを使って、私のイメージデータを彼女に送り込んでみよう」
 果たしてどうなるか判らないが、やってみる価値はあるだろう。
 彼女の頭に繋がった端子のコードをイメージスキャナーに接続していく。
 スキャナーはこのままでは一人では操作できなので、新たに自動プログラムを組んでインストールした。プログラムを間違えてはとんでもない事になるので、じっくりと腰を据えて慎重に行った。
 結局準備に八時間も掛かり、窓の外はうっすらと明るくなっていた。
 夜が明けてしまったようだ。
「よし、これでいい! 後は私の頭脳をスキャナーして彼女に送り込むだけだ」
 私は、一見マッサージ椅子のようなイメージスキャナーに腰を降ろした。
 そして自動プログラムの起動スイッチを押した。
 後は自動プログラムがすべてやってくれる。
 私の頭脳をスキャナーして、彼女のバイオ人工頭脳へ送り込む。
 人間の頭脳にあるデータは膨大だ。何時間かかるか判らない。
 私は、目を閉じてすべてが終わるのを待った。