プリンセスドール(2)

「どうだ……?」
 私はベッドの上の彼女に注目する。
 彼女の頭のあちらこちらから出ている端子は、先ほど助手が操作した端末に繋がっている。彼女に電気刺激を与えて反応を促進したり、逆に彼女からの反応を探知するためである。
「まだ、動きませんね」
 しばらく見守っていたが、一向に動く気配を見せなかった。
 助手はため息をつきながら尋ねた。
「やはり生きた人間を作り出すのは、無理なのでしょうか?」
「そんなはずはない! これだけ完璧に作り上げたプリンセスドールなのだ。目覚めないはずはないじゃないか」
「確かに人造の皮膚や臓器をはじめとして、生命体として完璧かもしれません。しかし外見だけなんじゃないですか? 先生の考えておられる、考え話すという意識を持った生命なんて……」
「このバイオ人工頭脳がニセモノだというのか? 君は」
「そうは言っておりません。バイオ人工頭脳にインプットする、人間として活動するプログラムが問題なんですよ。どんなに素晴らしいコンピューターがあっても、それに見合うだけの完璧なプログラムがなければ、ただの箱になってしまうということですよ」
「当然だ」
「しかし、先生も私もプログラムなんかできない。コンピューター本体を作り出すことはできても、インプットするソフトウェアのことは素人なのです。しかもこの人工頭脳にどんなソフトウェアをどのようにしてインプットするかが問題なのです。先生のやっておられることは、事故で植物人間になった患者を無理やり起こそうとしている行為なのです」

 助手の言っていることはもっともだった。
 植物人間……。
 そう、確かに現状においては、彼女は植物人間という方が正しい。